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ブガッティは4ドアサルーンを諦めていない?1993年発表、ジウジアーロのもっとも奇妙な作品「EB112」からインスピレーションを得る可能性に言及

2023/08/10

ブガッティは4ドアサルーンを諦めていない?1993年発表、ジウジアーロのもっとも奇妙な作品「EB112」からインスピレーションを得る可能性に言及

| ケーニグセグ・ジェメラへの反響でもわかるとおり、4人乗りハイパーカーの需要は「無視できない」 |

ブガッティの価格帯になると「絶対に外すことはできず」発売に際しては慎重にならざるをえない

さて、現在ブガッティは「シロン」はじめW16エンジン搭載モデルの販売を終了し、その後継モデルの発表準備を行っているという段階かと思われます。

さらにブガッティは現在リマックとの合弁会社「ブガッティ・リマック」を設立しており、そこでは従来のハイパーカー以外の新しい展開が見られる可能性が考えられ、「もしかすると(何度か話が出ては計画が潰えている)4ドアモデルの発売があるのでは」とも見られているもよう。

そこで今回、8月7日に85歳を迎えたジョルジエット・ジウジアーロ氏がデザインし、30年前のジュネーブ・モーターショーにて発表された「EB112」を振り返ってみたいと思いますが、このブガッティEB112は現在のブガッティではなく、その前の組織である「アウトモビリ・ブガッティ」によって製作されたクルマです。

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ブガッティはこんな歴史を持っている

ここで簡単にブガッティの歴史を紐解いてみると、1909年にエットーレ・ブガッティによってフランスに設立され、1940年代まで自動車の製造販売を行うものの、その後サフラングループに買収されて休眠状態に。

しかしその後、イタリアの実業家であるロマーノ・アルティオリ氏がブガッティの商標使用権を取得して1987年にイタリアへと「アウトモビリ・ブガッティを設立してEB110を発売するも、1995年には経営破綻してしまいます。

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さらにその後の1998年にはフォルクスワーゲングループがブガッティの商標権を取得してフランスに「ブガッティ・オトモビル」を設立してヴェイロン、そしてシロン、さらにそのバリエーションを発売しますが、2021年にはリマックとの合弁会社「ブガッティ・リマック」を設立して現在に至ります。

ちなみに現状では「ブガッティ・リマック」と「ブガッティ・オトモビル」両方が存在していて、さらに両社とも別々のCEOが存在しており、今後どういった棲み分けや役割分担を行うのかは定かではありません。

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ブガッティEB112はこんなクルマだった

そして今回のブガッティEB112について、これはイタリアの「アウトモビリ・ブガッティ時代に企画されたということがわかるかと思いますが、この「EB112」というネーミングは「ブガッティ創業者、エットーレ・ブガッティの生誕112周年」を表しています。

もちろんEB110は「エットーレ・ブガッティの生誕110周年」を意味しており、アウトモビリ・ブガッティがいかに当初のブガッティ創業者をリスペクトしていたかがわかりますね。

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ちなみにEB110の基本デザインを行ったのは(ランボルギーニ・カウンタックやミウラのデザインで知られる)マルチェロ・ガンディーニですが、同氏はアウトモビリ・ブガッティの経営者であったロマーノ・アルティオリ氏と意見が合わずに途中で降板してしまいます。

そして宙ぶらりんになったEB110のデザインを引き継いだのがロマーノ・アルティオリ氏の親族であった建築家のジャンパオロ・ベネディーニ氏。

ただし同氏は自動車デザインについては門外漢であり(おそらくはロマーノ・アルティオリ氏に請われ、仕方なくデザインを引き受けたのだと思われる)、よってアウトモビリ・ブガッティはEB110に次ぐプロジェクトであるEB112のデザイナーとして”定評のある”ジョルジエット・ジウジアーロ氏を起用したのかもしれません。

Bugatti-EB112 (3)

このEB112につき、「1930年代後半のブガッティを参考にしながらも、革新的なメカニズムを搭載したクルマとしてノスタルジックなスタイリングを誇った」「多くの点でドリームカーだと言ってよく、今日の高性能ファストバック・モデルの先駆けであった」「当時を大きく先取りした技術的・工学的特徴を完璧に融合させたデザインを持っていた」と評されています。

ただ、このEB112は量産に至っておらず、生産されたのはわずか3台のみ(おそらくはプロトタイプやパイロット生産でストップしたのだと考えられる)であり、そこで湧き上がる疑問が「なぜブガッティはこの車を生産しなかったのか」ということ。

Bugatti-EB112 (5)

その理由については明かされていないものの、囁かれる理由のひとつは「あまりにコストが高かったから」。

EB110はカーボンファイバーモノコックにアルミボディという、現代のハイパーカーの先駆けとも言える構造を持っていましたが、その分価格もハイパーになっており、これを流用してセダンを作ったとして、「その価格のセダンを一体誰が購入するのか」という問題があったもよう。

Bugatti-EB112 (6)

搭載されるエンジンは460馬力を発生させる自然吸気6.0リッターV型12気筒で、1気筒あたり5バルブ(合計60バルブ)を備え、6速マニュアルトランスミッションを介して4輪にパワーを送るというレイアウトを持っており、最高速は300km/h、0-100km/h加速を誇るというハイパーサルーン。

現代であればいざしらず、当時はこういったハイパーセダンの需要が「見えなかった」のかもしれません。

Bugatti-EB112 (4)

そしてもうひとつの(そして、おそらくは本質的な)問題がそのスタイリング。

Bugatti-EB112 (2)

つまりこのデザインが万人受けせず、、ある人は「世界一美しいクルマ」だといい、またある人は「見るに堪えない」とも。

https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/53101665121/in/dateposted-public/

ただ、このデザインはブガッティの初期のクルマをイメージしたものであり、こういったリアセクションや・・・。

07 BUGATTI_Jean_Type50

スプリットウィンドウを再現したもの。

10 BUGATTI_Jean_centerline

しかしながら「発売に至らなかった最大の理由」は資金難にあったと考えてよく、というのも上述の通りアウトモビリ・ブガッティは1995年に経営破綻しているからで、1993年当時でも十分にその兆候が見られたのだと思われます。

Bugatti-EB112 (7)

現代のブガッティも「セダンの発売」を検討したことがある

なお、現代のブガッティ、つまりフランスのブガッティ・オトモビルも「4ドアのブガッティ」の市場投入を検討したことがあり、実際に(ヴェイロンを発売した後の)2009年には16Cガリビエールなるコンセプトカーをリリースしたことも。

Bugatti 16C Galibier Concept

ただしこちらは発表直前に発生してしまったリーマンショックによって発売の道を断たれてしまい、今日に至るまで実現していないといった状況です。

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しかしながら現在においてもブガッティは4ドアハイパーカーを発売するという希望を捨てていないとされ、というのも1998年にブガッティ・オトモビルを発足させるためにジウジアーロにデザインを依頼したことがあり(つまりEB112のデザインを評価したのだと考えられる)、その際に出てきたEB118そしてサルーン版のEB218を高く称賛しているうえ、直近において「ジウジアーロがデザインしたブガッティからインスピレーションを受けたモデルが登場するだろう」とコメントしています。

シロン後継モデルについてはすでにプロジェクトが最終段階までに進んでおり、よってブガッティが語るのは「これ以外のプロジェクト」ということになりそうですが、そこでEB112やEB218にインスピレーションを受けた(もしくはジョルジエット・ジウジアーロ本人によるデザインの)モデルが発売されることになるのかもしれません。

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参照:Bugatti

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