>BMW(ビー・エム・ダブリュー)

BMWがEVにも「ガソリン車風のシフトチェンジ、サウンド、振動」を持たせることを検討中。「そうしないとEVは静かすぎてサーキットではクルマの状態を把握できない」

2023/07/23

BMWがEVにも「ガソリン車風のシフトチェンジ、サウンド、振動」を持たせることを検討中。「そうしないとEVは静かすぎてサーキットではクルマの状態を把握できない」

| フィードバックがないクルマを走らせるということは、いうなればゲームの中でクルマを運転しているような感じになってしまうのかも |

一般道では問題ないかもしれないが、サーキットでは「クルマからのフィードバック」は非常に重要である

さて、EVは「とんでもなく馬力を上げたり、気分が悪くなるほどの凄まじい加速」を実現でき、一見するとハイパフォーマンスカーと相性が良いように見えるものの、いくつかは(現時点での技術レベルにおいて)相容れない部分があり、一つはその「重量」、そしてもうひとつは「(クルマからの)インフォーメーション」。

今回BMW M社のCEO、フランク・ファン・ミール氏が後者について意見を述べ、「MモデルのEVがドライバーとコミュニケーションを取る方法として、ギアのシミュレーション、音響的な合図、振動フィードバックを検討している」とコメントしています。※ただ、実現するとしてもずっと先になるようだ

BMW Mの場合はあくまでも「より早く走るための手段」として

なお、そういった話を聞くと「またガソリンやマニュアル・トランスミッションへのノスタルジーか・・・」と思ってしまうのですが、BMW Mの場合はけしてそうではなく、真剣に、そして速く走ろうとするとそれらがどうしても必要だと考えているもよう。

フランク・ファン・ミールCEOによると、サーキットを走行しているとき、「ガソリン車では、エンジンの音や感触、ギアシフトの配置、レブインジケーターによって、クルマの計器に集中しなくても、ドライバーが、限界域でクルマが何をしているかを知ることができるが、EVはそうではない」。

L1310857

現時点でEVだと「速度計」くらいしかクルマの状態を知らせる指標はなく、しかし「回転数」を示すことが出来るものの、エレクトリックモーターの示す回転数は「ガソリンエンジンにおいて、ピークパワーを引き出すための重要な指標としての回転数」とは異なる”単なる数字”にとどまっていて、その回転数を維持するためにシフトチェンジを行うといったこともなく(多くの場合、EVはギアを備えない1速仕様である)、さらに回転数にもとらわれず(エレクトリックモーターは)ピークトルクを放出することが可能です。

そういったエレクトリックパワートレーンを搭載した場合、どうやってドライバーへと「限界域においてクルマが何をしているのか、どういった状態にあるのか」を知らせるために”ギアのシミュレーション、音響的な合図、振動フィードバック”を検討している”というのがBMWの真意であり、そうやって聞くと「なるほどな」と思ったり。

いうなれば「とんでもなく速いエレクトリックスポーツカー」を運転したとしても、フィードバックが少ないために「それはゲームの中でクルマをドライブしているような感じ」であり、限界域での挙動を感じにくかったり、クルマとの対話によって次の動作に移るということが難しいのかもしれません。

いくつか「EVにガソリン車のロジック」をもたせる例も

参考までに、先日発表されたヒョンデ・アイオニック Nにも「ガソリン車の挙動を再現した」デバイスが搭載されていて、(EVなので)トランスミッションを持たない1速仕様ではあるものの、ソフトウエアの制御にて8速デュアルクラッチ・トランスミッションと同じフィーリングを再現し、さらにはNアクティブサウンド+と連動してドライバーへとフィードバックを与えるという仕組みを持っています。

hyundai-ioniq5-n (8)

ヒョンデがサーキット走行に対応したEV、アイオニック5 Nを発表。ガソリン車の8速トランスミッションの動きを再現しドリフトも自在、「戦闘機」からサンプリングしたサウンドも【動画】
ヒョンデがサーキット走行に対応したEV、アイオニック5 Nを発表。ガソリン車の8速トランスミッションの動きを再現しドリフトも自在、「戦闘機」からサンプリングしたサウンドも【動画】

| ヒョンデは現在世界中でその存在感を強めており、「あなどれない」ブランドにまで成長している | キャッチコピーは「Never just Drive(単に運転するだけではない)」 さて、韓国ヒョンデが ...

続きを見る

意外なことではありますが、人間というのはけっこう様々なフィードバックに「騙される」こともあり、たとえばアクセルを踏んでから加速し、一定の速度に達するまでの時間(つまり数値)が同じ2台のクルマがあるとして(仮にAとBとする)、Aではアクセルを踏んだ瞬間に爆音が出て、Bでは速度が上がるにつてエキゾーストサウンドが大きくなるといった制御がなされた場合、Aとのほうが「圧倒的に速い」と感じることも。

3K4A3031

つまりそれくらいフィードバックというのは重要であり、とくにサーキットにおいて限界走行をしている場合など、EVのインフォテイメントスクリーンを見ている暇などはなく、よってBMWは「感覚に訴えかけ、直感的に判断できる」フィードバックを検討しているのかもしれません。

ちなみにですが、少し意図は違うかもしれないものの、フェラーリも(おそらくEV向けとして)インタラクティブなインフォーメーションの表示方法を特許として申請していて、ハイパフォーマンスカーの領域においては「どうやって(ガソリン車にあってEVにない)情報を補完してゆくか」という課題に頭を悩ませているのだと考えることも可能です。※そしてこれらは、SUVやサルーンには無関係の問題であり、あくまでもハイパフォーマンスカーに限られる問題だと思われる

フェラーリが車両を「ゲーミング」化?インテリアにLEDを大量に仕込み、それらの色や光り方で「最適なライン」「最適なアクセル/ブレーキ操作」を示す特許を出願
フェラーリが車両を「ゲーミング」化?インテリアにLEDを大量に仕込み、それらの色や光り方で「最適なライン」「最適なアクセル/ブレーキ操作」を示す特許を出願

| テクノロジーの進歩によって「今までできなかったこと」が車両、そしてドライバーとも可能に | そしてリアルとバーチャルとの境界が限りなく近づく さて、フェラーリは様々な、しかも独特な特許(パテント) ...

続きを見る

もう一つ参考までに、トヨタは「フェイクMT」の開発を進めており、こちらは「楽しさ追求のため」だと捉えていたものの、もしかするとBMWのように「ドライバーに対し、スポーツ走行時に不可欠な情報を与えるため」という意図があるのかもしれません。

トヨタのマニュアル・トランスミッション
トヨタがEV向けの「フェイク」マニュアル・トランスミッションの特許を申請!疑似タコメーターを備え変速時の「トルク抜け」も再現するようだ

| おそらくはシフトショックも再現してくるだろう | こういった考えは多くの自動車メーカーが持つものの、ここまで本気で取り組むのはトヨタだけだろう さて、マニュアル・トランスミッションに対しては多くの ...

続きを見る

ただ、ぼくとしては「EVは出力特性が基本的にガソリン車と異なり、かつ駆動方法も(クワッドモーターなど)ガソリン車とは全く違うものが出てきたり、かつ重量バランスも違う」と捉えていて、となるとEVを無理にガソリン車の基準に合わせる必要もなく、EVはEVとしての新しいスタンダードを作っていったほうがいいんじゃないかとも考えています(でないと、将来的に、ガソリン車に乗ったことがない人にとっては無意味かつ難解な制御が行われることにもなりかねない。MTを運転したことがない人にはある種のことが絶対に理解できないのと同様に)。

あわせて読みたい、関連投稿

BMW
BMWがEVのアクセル開度に対する「速度 / トルクカーブ」を自由に変更できる特許を出願!EVにしかできない制御でありトヨタの「フェイクMT」とは真逆の考え方

| BMWはトヨタと同じように「ガソリン車の継続生産」を行うと宣言しているが、トヨタと異なりEVにも多大なる注力を行っている | さらにEV経験が長く「EVにしかできないこと」を知っている さて、BM ...

続きを見る

BMW
BMWがエレクトリックモーターの制御に関する新技術を特許出願!パフォーマンスを失わずに航続距離を確保する「新型デフ」装備、これはなかなか面白そう

| 各社ともEVのパフォーマンスと効率とを両立させる様々な技術を開発中、ここへきて各メーカーの「色」が出てきたようだ | 意外と自動車メーカーによって技術の「差」が出るかもしれない さて、電動化時代に ...

続きを見る

フェラーリ
フェラーリがピュアEVのサウンドに関する特許を出願!実際に回転するパーツから周波数を拾い、その回転数にあわせてサウンドを合成してアウトプットするようだ

| これによって、「直感的に」駆動系の負荷やパワーバンド、トルク感」を感じられるように | モーターやギア、ホイール等から発せられる「回転数によって変化する」周波数を取得 さて、少し前には「ランボルギ ...

続きを見る

参照:WhichCar.com.au

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->BMW(ビー・エム・ダブリュー)
-, , , , , ,