| たしかにあのウインカーをはじめて見たときは驚いた |
さて、先日「受注台数が目標の14.5倍に達した」ということで話題になった新型トヨタ・ハリアー。
今回IT mediaにて、ちょっと面白い記事があったので紹介したいと思います。
記事の中で目を引いたのは、まず「売れ筋はハイブリッドのFF」に集中しており、これはオプション等追加装備を含めると販売価格が「400万円オーバー」となり、これに45,000台という予約台数をかけると「1800億円」という数字が算出され、トヨタの年間売上高である30兆円の0.6%を占める、とのこと。
ただ、年間というタームで考えると、「1800億円」を確実に上回ることになると思われ、となるとトヨタの年間売上高の相当な割合を占めるのかもしれません。
-
そんなに売れているのか新型トヨタ・ハリアー!発売1ヶ月で目標の14.5倍、インプレッサの1年分以上の受注を集める
| トヨタはなぜ目標販売台数を少なく見積もっている? | 新型トヨタ・ハリアーはちょうど6月16日の発売から1ヶ月が経過していますが、ここでトヨタ自動車が「7月16日時点で約45000台の受注を受けた ...
続きを見る
なお、ハリアーは「かつて消滅の危機」にあり、しかし千葉トヨペットの社長の働きかけで消滅を免れたという事実があるそうですが、千葉トヨペットはトヨタからなんらかの表彰を受けても良さそうですね。
-
トヨタ・ハリアーは千葉トヨペット社長の直訴によって「”2代目で販売終了”から”販売継続”」へと計画が変更されていた!英断を下したのは豊田章男社長か
| 通常ではこういった事例は考えられず、トヨペット千葉の熱意がよほどのレベルであったに違いない | さて、Twitterで話題になっている「トヨタ・ハリアーはかつて生産中止の危機に陥り、それを救ったの ...
続きを見る
ハリアーは「ベストトヨタ」
そして記事ではハリアーについて「ベストトヨタ」としながらもいくつかの要改善点も掲げていて、大きなものとしては「前後シート」。
とくにリアシートだと「アングルが寝すぎていて、座面の前後傾きがない」としており、強いブレーキング時に、後部座席の乗員の体が前に滑ってしまうという懸念を示しています。
なお、これは「人」ではなく「モノ」であっても同じで、もしかすると後部座席に置いたモノが滑り落ちるようなこともあるかもしれません。
逆に優れている点は運転操作の「リニアリティ」で、操作と反応とが予期したとおりに動くこと(当然といえば当然だが、これができるトヨタ車は少ない)、乗り心地が良いこと。
筆者によると「床板の振動はTNGAプラットフォームの弱点」だとしていますが(ぼくは気づかなかった)、ハリアーではこれをうまく押さえているようですね。
そのほか記事では例の「ウインカー低すぎ問題」にも触れていて、これによると「ハリアーの、あの薄いテールランプ内に、法規に適合するだけの輝度を持つ光源を組み込むことができなかった」というトヨタのコメントを引用。※おそらくは、ストップランプと位置が近すぎると、ストップランプが光った際に、ウインカーが同時点灯したとしてもウインカーの光が「ストップランプの強い光に消されて見えなくなる」のだと思われる
その結果、リアバンパーの低い位置(リフレクターの上)にウインカーが装備されることになっていますが、たしかにこれは初めて見た時に「え?」と驚く位置であり、たとえばハイエースのように着座位置が高くノーズが無い)に乗っていたりすると、発光を確認できないんじゃなかろうか、と思うほど(ぼくはバイクに乗っている時に新型ハリアーの後ろに付けたが、かなりウインカーを認識しづらいと感じた)。
そして、トヨタが「割り切って」ウインカーをそこに設置したからこそ、あのテールランプのデザインが実現できたのだとも結論づけており、その突き抜けっぷりがハリアーのヒットの一因でもある、と述べています(トヨタにとっては、かつてないほどデザインコンシャスなクルマである)。
もうベンツを買っている場合じゃない
なお、記事では「現在のドイツ車は劣化している」「ハリアーよりも格下のドイツ車がハリアーよりも割高」としており、「もうベンツを買っている場合じゃない」とも。
80年代のメルセデス・ベンツとトヨタとの”乗り味”の差に対し、現在におけるその差は大きく詰められ、信頼性や燃費については(トヨタの)圧勝だと述べており、しかしこれに関しては「なんとも言えない」部分があるとも考えていて、たしかにメルセデス・ベンツは「ヤシ繊維を使用した」シートを採用しなくなったりしたものの、代わりに得たものも大きい、と考えています(最近のメルセデス・ベンツが大きくコストダウンされたのは間違いないが、それは”オーバースペック”から”他社並みスペック”になっただけかも)。
参考までにバブル期(1990年代)はじめでもっとも安価だったメルセデス・ベンツは190(W201)の499万円だったと記憶していますが、現時点でもっとも安価なメルセデス・ベンツはAクラスの337万円で、おそらくハリアーのライバルになりそうな新型GLAは502万円、GLBは512万円。※190の直接の後継であるCクラスの現行モデルは484万円~という設定を持ち、むしろ190より安くなっている
つまりはお金をかける部分を時代に応じて変え、過剰なほどだった内外装の品質や足回りを”他社と同じレベル”にとどめ、そのぶん浮いたお金でコネクティビティや安全性といったところにコストをかけ、「コストパフォーマンスの高い」クルマを作っているだけだ、とぼくは認識しています。
-
【試乗:メルセデス・ベンツGLB】最新のベンツは最良のベンツ!GLSにも劣らぬ快適性を持ち、その価格は512万円。トヨタ・ハリアーとの競合が多いそうだ
| 先代GLAとの比較だと「完全に別次元に」まで進化している | さて、メルセデス・ベンツの最新SUV、「GLB」に試乗。GLBはGLAと同時に発表されていることでもわかるとおり、多くをGLAと共有し ...
続きを見る
ちなみに初代ハリアーは1997年に244万円~というプライシングで登場し、新型ハリアーの価格は299万円。
初代ハリアーはバブル期に企画された”高級な”クルマだったということもあり(なんといっても北米ではレクサスとして販売されていた)、当時かなり高価だった部類のクルマ。
現行ハリアーは当時よりも50万円ほど高価になっているものの、ほかの日本車に比較すると「かなり価格上昇が抑えられている」のは間違いなく、価格競争力の強い車へと成長したといえど、クルマのコアバリューを「コネクティビティ」へと舵を切ったメルセデス・ベンツと単純に比較するのは難しいかもしれません。
つまりクルマの魅力や価値は多種多様化していて、どこに最重要価値を置くのかということになり、同様にクルマの判断基準は「ひとつではなくなって」いるわけですね。
たとえば、一昔前だと「排気量」や「エンジンパワー」が重要な指標であったものの、現在ではそれらを押し出さなくなったメーカーも多く、スペックシートを開かないとそれらを知ることができない、という例も。
よって、ぼくら消費者は、そのクルマの情報を集め、正しくその性質を理解し、そのクルマが「どういった考え方で設計され、どういった人々に向けて製造・販売されているのか」を見定めた上で、自分に合ったクルマを選ぶ必要がありそうです。
なお、メルセデス・ベンツディーラーにて話を聞いたところだと、新型GLA/GLBともっとも競合しているのは新型ハリアー。
実際に両方を試乗し、その乗り味や装備、価格を直接比較した人がどういった結論を下したのか興味のあるところですが、ハリアーの受注台数を見る限り、「ハリアーに軍配をあげた」人も多そうです。
参照:IT Media