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メルセデス・ベンツがNGOから「不正デバイスによって、基準値の5倍もの汚染物質排出を隠している」として訴えられる!同様の訴訟は16,400件にのぼる模様

2021/11/18

メルセデス・ベンツ

| これら訴訟を片付けるだけでも相当のコストを要しそうだ |

自動車メーカーにとっては年々経営リスクが高まっていると考えざるを得ない

さて、先日NGOから「二酸化炭素排出に対して真剣な対策を取っていない」として訴えられたメルセデス・ベンツですが、今回はドイツの非営利環境団体であるDeutsche Umwelthilfe e.V.(DUH)によって、「複数の不正手段を用いて排出ガス試験をごまかし、その結果、車両が実走行に戻ると窒素酸化物の排出量が増加している」として訴訟を起こされることに。

これはいわゆる「チーティングデバイス」「不正デバイス」に該当するもので、たとえば「排ガステストはローラーの上に乗ってテストするのでステアリングホイールを切っておらず、タイヤが真っ直ぐの状態で速度が上昇すればチーティングデバイスが作動し、ハンドルを切ると”一般道を走っている”と認識すればデバイスが解除される」といった仕組みを持っています。

もちろんこのチーティングデバイスは車両の出力を抑える等して「有害物質排出を制限する」わけですが、そうなるとパワーがダウンして思うように走らないといった事態になってしまうので、あの手この手で「実際の走行とテスト走行」とを判断してデバイス作動のオンオフを(車両が自動的に)行うことになります。

メルセデス・ベンツは8種類ものデバイスを使用

そしてメルセデス・ベンツはなんと8種類ものチーティングデバイスを用いていたというのが今回のDUHによる言い分で、これによると、2016年式メルセデスE350ブルーテック4MATICワゴンを対象に、排出ガスとエンジンのデータを測定したところ、試験場では窒素酸化物の許容値内に収まっていたものの、路上では窒素酸化物の排出量が500%も増加していることが判明した、とのこと。

DUHのユルゲン・レッシュ事務局長は「これらの装置は、ほとんどすべての状況において、これらの車がクリーンではないことを保証するものです。通常の走行では、NOxレベルを500%も上回っている。街中に窒素酸化物をまき散らしています。その理由は、環境と都市生活者の健康を犠牲にして、利益を最大化するためです。私たちは、秋にダイムラー社に対し裁判を起こしました。彼らは、会社は別の道を歩むだろうと言いました。私たちはまだそれを見ていません。違法なディフィートデバイスで大気を汚染するこれらの車両はリコールする必要があります」とコメント。

メルセデス・ベンツ

これについて、メルセデス・ベンツ側は「状況によったキャリブレーションは知られていますが、我々の見解では、非常に複雑な排出ガス制御システムの相互作用と全体的な状況において、これらは違法なディフィートデバイスとは評価されていません。ドイツの地方裁判所および高等裁判所における判決の大部分は、引き続きダイムラーに有利なものであり、約95%のケースでダイムラーに有利な判決を下しているのです。地方裁判所レベルでは、ダイムラーに有利な15,500件以上の判決が出ており、ダイムラーに不利な判決は約900件に過ぎません。現在、上位の地方裁判所では、当社に有利な判決が約900件あり、当社に不利な判決は3件しかありません。また、ドイツ連邦司法裁判所(BGH)は、いくつかの判決において、ダイムラーAGの法的見解の重要なポイントを確認しています。特に、連邦司法裁判所(BGH)は、エンジン・コントロール・ユニットに搭載された許容できないとされるディフィート・デバイスだけでは、損害賠償請求ができないと、これらの判決やその他の判決で判示しています」と述べており、こちらはこちらで自らの正当性を主張しています。

正直なところ事実関係は全く不明で、チーティングデバイスが存在するのは間違いなく、それが「違法なのかどうか」が争点となりそう。

そしてDUHのような環境団体は様々な主張を行いその存在感を強めることで問題提起を行っているということになりますが、同時にプレゼンスを高めることによって資金を獲得しようという狙いもあるのだと思われます(シーシェパードが過激な手段に訴え、注目度を高めつつも支持と資金を集めているのと同様かもしれない)。

メルセデス・ベンツは1300億円レベルの罰金を課される可能性も

なお、これに先立ってメルセデス・ベンツは(今年夏に)ドイツ連邦自動車交通局(KBA)より、CクラスとEクラスのディーゼルエンジン車について不正なソフトウェアを発見したために28万台のリコール行うようにという指示を出しており、1台あたり最大で5,000ユーロ、概算だとトータルで1300億円規模の罰金を科すとも報じられています。

メルセデス・ベンツ

これらについては現在検察とともにメルセデス・ベンツを調査している最中だとも報じられていますが、同社従業員もこの不正に関わっている可能性が指摘されているほか、2012年から2015年にかけて生産されたGLK220(ディーゼルのみ)についてもリコールの指示が出されています。

参考までに、昨年5月、シュトゥットガルトのドイツ検察当局は、ポルシェに5億3500万ユーロ(6億ドル)、サプライヤーのボッシュに9000万ユーロ、VWには10億ユーロ(11.2億ドル)、アウディには8億ユーロ(8.96億ドル)の罰金を科しており、まだまだこの影響は拡大することになりそうですね。

メルセデス・ベンツ「EQ」への影響も必至

さすがにメルセデス・ベンツといえどもこの罰金のダメージは非常に大きいものと思われ、さらに大きい影響としては、現在その展開が拡大しつつあるEVシリーズ「EQ」への影響が拭えないであろうということ。

欧州においては、多くの人がその企業イメージを(自動車購入の際に)考慮しているといい、いかにそのクルマが「ゼロエミッション」であったとしても、利益のために不正装置を組み込んだ自動車メーカーのクルマを購入しようと考える人がぐっと減ることになりそうです。

なお、ぼくら消費者にとっては「(最小で?)8つもの不正デバイスが組み込まれ、そのぶん高額になった」クルマを購入せざるを得ないということになり、それもまたメルセデス・ベンツにとってのイメージダウンにつながるのは間違いない、と考えています。

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参照:CAR Magazine

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