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ポルシェがテキサス州にも合成燃料(Eフューエル)生産設備を開設!現在はガソリン車の100倍とされる生産コストをどこまで下げることができるかが普及の鍵

2023/05/19

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| 合成燃料そのものはカーボンフリーだとされているが、生産や流通課程において多大なエネルギーを要するもよう |

加えて生産量が(今のところ)限られており、列車や航空機に優先的に回すべきという声も

さて、EUの「2035年以降の内燃搭載車の新車販売禁止」が一部修正され、合成燃料しか使用できない車であれば2035年以降も新車での販売を継続できることとなっています。

これに関する自動車メーカー各社の反応は様々で、フェラーリは「チャンスが拡大した」と述べ、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンは「今後の戦略に変更はない」、そしてまたある環境団体は「ほぼ意味がない」。

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ポルシェがついに合成燃料(Eフューエル)の製造を実用化!「最初の一滴をポルシェ911に注入した」と発表し、これでガソリン車存続の可能性がちょっと開くことに

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ただしポルシェは合成燃料の生産を加速

ただ、ポルシェは合成燃料に先鞭をつけたということもあり、この合成燃料の生産を加速させる意向を見せていて、今回はチリのプラントに続いてテキサスにもその製造工場を建設するという報道がなされています。

これによると、米国テキサス州において、ポルシェが支援する合成燃料製造会社HIFグローバル社が合成燃料の生産施設としては世界最大規模となる工場の建設に関する承認を得たとされ、実際の建設は2024年から開始される、とのこと(ポルシェがどの程度の出資割合となるのかは不明)。

今話題の「合成燃料」!そのままガソリンエンジンに使用できカーボンフリーを実現できるものの「何が問題でなぜ普及しない」のか?
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なお、すでにチリでの合成燃料の生産も開始されており、つい先ごろ、ポルシェはここで生産した最初の合成燃料をポルシェ911に注入したと発表したところ。

これによりポルシェは合成燃料が既存のガソリンエンジン搭載車においてもうまく機能することを証明したわけですが、その次のステップとして、先日報じられたようにグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにて「合成燃料を使用した車両のみのレース」を行い、さらには今回の「テキサス州における追加での工場建設」に進むのだと思われます。

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環境団体「ポルシェの進める合成燃料は、ポルシェ乗りのためのニッチな解決策にしかすぎません。リッター390円、しかも汚染性が高く、脱炭素化を遅らせる」

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現時点では合成燃料はガソリン価格の100倍

今回の工場建設承認につき、HFグローバル社の取締役会執行役員、メグ・ジェントル氏は「今回テキサス州では、合成燃料(Eフューエル)を商業規模レベルに引き上げ、年間約2億ガロンの合成燃料を生産する許可がおりました。これにより一層合成燃料が身近なものとなるはずです」とコメント。

なお、この合成燃料の生産にあたり、HIFグローバルは年間30万トンの水素と200万トンのリサイクル二酸化炭素を必要とするといい、水素と二酸化炭素をどこから供給し、どのように発電するのかが重要な課題だと見られています(これはポルシェに限らず、どの合成燃料工場でも同じことである)。

ポルシェそしてHIFグローバルがテキサスを選んだのは「テキサス州が、クリーンエナジーである太陽光発電を利用するのにもっとも適した天候を持っている」からだと思われ、しかし実際には「より少ない資源で、より多くの合成燃料を作る(環境負荷の低減)」ことを考えたほか、環境活動家への配慮だとも見られているもよう。

というのも合成燃料の生成には多大なエネルギーを要し、かつ原料となる水素の輸送、完成した合成燃料の輸送にもCO2を大量に排出する可能性が非常に高く、よって「実質的なCO2排出量が(プラスマイナス)ゼロ」となるものの、合成燃料は実は環境に優しくない、という意見も少なくはないためだと思われます。※よって合成燃料は自動車のためではなく、どうしても電化できない鉄道や航空機のために使用すべきであって、電化が可能な自動車はまず電動化すべきという風潮もある

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なお、環境団体(ハイドロジェン・インサイト)の試算によると「合成燃料は、バッテリーに比較すると(その製造に際して)6倍の再生可能エネルギーを使用する」とされ、ポツダム気候影響研究所の報告書では、(ポルシェの)チリにある合成燃料施設での製造コストは1リットルあたりおよそ50ユーロ(およそ7,000円くらい)で、これはガソリンの卸価格(販売価格ではない)の100倍に相当するという試算も見られます。

ただ、さらに合成燃料の生産が効率化し、商業ベースでの製造が可能になれば、その製造コストは1リットルあたり2ユーロにまで下がる可能性があるといい(この場合だと末端価格はリッターあたり500-600円)、ここまで下がると「一般的ではないものの、富裕層がガソリン車を動かすための許容範囲に収まる」とも見られているようですね。

なお、HIFグローバルは、オーストラリアのタスマニアでも合成燃料を製造する予定を持っているそうで、将来的には「1リットル1ユーロ」まで生産コストを下げることを計画しているといい、ここまで下がればかなり実用的な価格となりそうですね。

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