ポルシェ製トラクターが大量に競売へ。ポルシェはナチスの命令によってトラクターを1930年代に作り始め、その後1955年に自社名義で販売開始、しかし8年で撤退

｜　ポルシェにとってトラクターとは何だったのか、それが今でも謎である　｜

近年、「徐々に」ではあるがポルシェ製トラクターの人気も高まりつつあるようだ

さて、クラシックカー専門の販売業者、ドニントンがポルシェのトラクターを大量に出品して話題に。

ポルシェがトラクターを製造していたということはあまり知られておらず、しかし今年ロサンゼルスにて開催されたポルシェ最大規模のファンミーティング、レンシュポルト・リユニオンにて「ポルシェのトラクターのみ」のレースが開催されたため、そこで多くの人がその事実を知ることになったのは記憶に新しいところ。

ポルシェの設立は92年前にまで遡る

ポルシェは今年「75周年」記念行事を多数開催し、様々な限定モデルを発売していますが、それは1948年に初のスポーツカーである「356」を発売してからの「スポーツカーの歩みを始めた後の75周年」という意味であり、会社としてのポルシェの設立は1931年にまで遡ることが出来ます。

なお、ポルシェは「356以前の歴史」をあまり前に押し出したがらず、それは「多くの車両含む兵器をナチス、およびヒトラーの命によって開発・製造していた」ということに一因があるのかもしれません（実際のところ、創業者であるフェルディナント・ポルシェは第二次大戦終了後に戦争犯罪人として収監されている）。

そこで「ポルシェのトラクター」についてその歴史を紐解いてみると、これは戦前（1937年）にナチスの指示によってトラクターを開発したのがその始まり。

しかしながらその後まもなく第二次世界大戦に突入したためにポルシェはこのトラクターの生産を行うことが出来ず、これがようやく可能となったのは戦後の1950年。

最初のトラクターは「Allgaier（アルガイヤー） Werkzeugbau GmbH」との契約によって製造された「AP17」だとされています。

その後1956年になるとポルシェはアルガイヤーからトラクタービジネスを引き取ってラインアップを拡大させ、「マスター、スーパー、スタンダード スター、ジュニア」といったモデルを次々発売。※シャークノーズがポルシェ製トラクターの一つの特徴でもあるようだ

ポルシェは1963年にトラクタービジネスから手を引くことに

この頃ポルシェは「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」など数多くのレースで輝かしい成績を残しており、しかしそれでもトラクタービジネスの権利を獲得した理由は明らかではなく、ポルシェはわざわざトラクター含む農機具製造販売会社として「Porsche-Diesel-Motorenbau GmbH Friedrichshafen a.B.」なる会社を設立。

ここでは都合12万台ほどのトラクターが製造され世に送り出されたと言われていますが、なぜか創業から8年が経過した1963年にこの会社は「廃業」となり、同時にポルシェはトラクタービジネスから手を引くこととなっています。

これらトラクターが販売されたのは主に欧州だとされ、そのため多くの場合において、トラクターの売り物件が登場するのは欧州市場だそうですが、現在はアメリカのコレクターがポルシェのトラクターを購入する例も少なくないといい、「新車」当時だとアメリカには1,000台ほどしか輸出されなかったものの、もしかすると現在ではそのときよりも多くのポルシェ製トラクターがアメリカへと渡っているのかもしれません。

ただ、ポルシェのトラクターは「人気があるようでない」とも言われ、オークションに登場しても予想落札価格に達しないことも少なくはなく、今回だと約700万円というエスティメイトが出されている個体もあるものの、これまでの例を見ると、700万円まで価格が上がることはないのかもしれません（ポルシェのトラクターは平均すると250−300万円くらいで落札されているようだ）。

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参照：Donington