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存在するのは世界に二台、走行わずか10km。納車されてから一度も運転されることなく30年ぶんの埃を被ったポルシェ911RSR 3.8が競売に

存在するのは世界に二台、走行わずか10km。納車されてから一度も運転されることなく30年ぶんの埃を被ったポルシェ911RSR 3.8が競売に

| 30年間メンテナンスがなされていない割に911カレラRSR 3.8の内外装は程度良好、高額落札が期待できる |

ポルシェコレクターにとってこれ以上価値の高い公道走行モデルは存在しないかもしれない

さて、走行わずか10kmというポルシェ911カレラRSR 3.8「シュトラッセン・バージョン」がボナムズ主催のオークションへと登場予定。

なお、この911カレラRSR 3.8シュトラッセン・バージョンは遡ること2017年5月に開催されたオークションにて225万ドルという高額にて一度落札されていますが、この数年間で希少車に関わる相場が大きく上昇したため、おそらく今回は想像もつかないような価格にて落札されることになるのかもしれません(ボナムズは予想落札価格を最高で250万ドル=約3億7400万円に設定しているが、この範囲には収まらないかもしれない)。

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この911カレラRSR 3.8シュトラッセン・バージョンは世界にに台しか存在しない

この911カレラRSR 3.8シュトラッセン・バージョンが高額にて落札される要因について触れてみると、まず、このクルマは世界に二台しか存在しないから。

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911カレラRSR 3.8シュトラッセン・バージョンは過去のカレラRS2.7(ナナサンカレラ)と3.0RSRモデルを再現したいというポルシェの願望から生まれたもので、その結果としてまずは1992年に260馬力を発生する3.6リッターエンジンを搭載した964カレラRS(に加え、さらにハードコアなクラブスポーツ)が誕生し、軽量化そして低められた車高、ハードなスプリング、調整可能なスタビライザーバーなど、サーキット向けのさまざまな装備が装備されることとなっています。

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ちなみにこの964世代のカレラRSは「ハイテクで武装した」日産R32スカイラインGT-Rに対するポルシェの回答であったも言われ、つまりはハイテクではなく「パワーアップ、軽量化、足回りの強化」という従来どおりのシンプルな定番メニューを用いることでその速さを証明したかったのかもしれません。

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さらにポルシェは964カレラRSのエンジンを3.8リッターへとボアアップし(約300馬力を発生)、ターボスタイルのボディを採用した3.8RSを発表していますが、このまた上に追加されたのが911カレラRSR 3.8。

このカレラRSR 3.8はプライベーター・レーシングチームのために作られたレーシングカーで推定325~350馬力を発生し、0-100km/h加速タイムは3.7秒であったとされ、生産台数はわずか50台。

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そしてこのカレラRSR 3.8の公道走行可能なモデルが911カレラRSR 3.8シュトラッセン(ストリート)バージョンであったわけですが、これが生産されたのはわずか2台のみにとどまります。

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なお、興味深いのはかつてポルシェのハードコアモデルについてはポルシェ自身「そんなに人気が出ないだろう」と考えていたことであり、カレラRS2.7(ナナサンカレラ)に採用されるその特徴的な形状を持つリアスポイラーにつき、販売がスローに終わるであろうという皮肉を込めて「ダックテール」と名付けられたほど。

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さらに当時のハードコアモデルは「通常のカレラから様々な装備をマイナスしたため」、補強やハード指す組み込まれていたにも関わらず価格が高くなかった(968だとむしろハードコアモデルのほうが安かった)ことで、これは「高利益率商品」となった現代のGT3系からは想像できない現象です。※GT3系の高利益化は996世代後期から顕著になったようにも思われる。もちろん、現代のGT3は「マイナス」するだけではなく多くの機能が「プラス」されている

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このポルシェ911カレラRSR 3.8シュトラッセンには「30年分の埃が積もったまま」

この車両は1993年に販売されたものですが、見ての通り特別注文(オプション)が多く盛り込まれていたため製造に時間がかかり、実際にオーナーへと納車されたのは1996年。

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その後オーナーによってずっと保管され、一度も乗られることはなかったそうですが、その後の2017年になってオークションへと登場したわけですね。

なお、当時の状態はこの通り(下の画像)なので、2017年に落札したコレクターは意図的に「埃を落とさず」ずっと保管しており今回のオークションへの出品となったということがわかります。

新車にて購入したオーナーがなぜ乗らずに保管し、かつ埃まみれになっていたのかはナゾではあるものの、新車注文時にはとんでもない量とレベルのオプションが装着されており、ボディカラーはポーラーシルバーメタリック、インテリアはカンカンレッド。

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さらにこのレザーはロールケージからステアリングコラムに至るまで、車内のほとんどすべてに使用されており、文字通りの「唯一無二の存在」に。

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カーペットやルーフライナーに至るまでもがカンカンレッド。

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シートバックやダッシュボードのトリム、メーターリングにメーターパネルは「ホワイト」。※トリムはレザー張り

こういった仕様を見るに、むしろ「ノーマルの部分が残っていないんじゃないか」と思えるほどですね。

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さらには助手席シート(これはオプション扱いである)、センターロックホイール(ディスク面はアメジスト。5穴ホイールを無理やりセンターロック化したような構造を持っている)、ゴールドブレーキキャリパー、エアジャッキ、ロッキングディファレンシャル、ル・マン仕様のツインプラグエンジンなどが装備されている、と紹介されています。

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こうやって見ると、「世界に2台しか存在しない」「オプションが山盛り」「走行距離が少ない」という他にない特徴を持っており、投資対象としてもコレクションとしてもこれ以上のクルマはないものと思われ、落札金額がどれくらいになるのかを注視したいところですね。

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参照:Bonhams

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