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ポルシェが911ターボの50周年を記念した腕時計「クロノグラフ1 911ターボ 50イヤーズ・エディション」を発売。およそ50年前、腕時計史上初の「真っ黒な腕時計」はこうやって誕生した

ポルシェが911ターボの50周年を記念した腕時計「クロノグラフ1 911ターボ 50イヤーズ・エディション」を発売。およそ50年前、腕時計史上初の「真っ黒な腕時計」はこうやって誕生した

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| ポルシェデザイン「クロノグラフ1」、ポルシェ「911」は同じ人物によって生み出されている |

ポルシェデザイン クロノグラフ1は腕時計という「プロダクト」ではなく「時間を知る」という目的のためにデザインされている

さて、ポルシェ(ポルシェデザイン)は腕時計史上はじめて「真っ黒な」腕時計を発売したことでも知られていますが、この「真っ黒」の理由とはポルシェ911のダッシュボードとメーターにインスパイアされ「視認性を追求したから」だとされています(真っ黒な中に針とインデックスにホワイトやレッドを用いて情報を読み取りやすくするという、自動車のメーターと同じ手法)。

そしてこの「史上初の真っ黒な腕時計」、”ポルシェデザイン クロノグラフ1”は現在復刻されポルシェデザインのラインアップに組み込まれていますが、その中でもいくつかの限定モデルが派生しており、今回は「ポルシェ911ターボの50周年を記念して」クロノグラフ1 911ターボ 50イヤーズ・エディションが新たに登場することに。

この腕時計は当時のクロノグラフと同様にポルシェ911を定義するのと同じ原則でデザインされ、精度、パフォーマンス、そして時代を超えたスタイルを体現しています。

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ポルシェの腕時計はなぜ誕生したのか

現在、「IWCとメルセデスAMG」「アストンマーティンとジラール・ペルゴ」のように多くの自動車メーカーが腕時計ブランドとタイアップしているものの、ポルシェの場合は「ポルシェデザイン」名義にて腕時計を発売しており、つまりは「コラボではなく自社名義で」腕時計を展開しているわけですね(おそらくインハウスで腕時計を企画開発・発売する唯一の自動車メーカーである。製造は外注ではなく買収した腕時計メーカーによって行われる)。

そこで今回、「ポルシェが腕時計を発売した経緯」を振り返ってみたいと思いますが、この腕時計「クロノグラフ1」はおよそ50年前、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェによってデザインされています。

フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは「良いデザインは正直であるべきだ」というモットーにて知られますが、ドロテアとフェリー・ポルシェの長男として1935年に生を受け、幼少の頃は祖父である(そしてポルシェ創業者である)フェルディナント・ポルシェの設計事務所や開発センターで多くの時間を過ごしたといいます。

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その後1958年にはシュトゥットガルトにある(当時)家族経営であったポルシェに加わり、技術、素材、そしてミニマルなデザインのスキルを磨くこととなるのですが、この時期に彼と彼のチームが開発したポルシェは、後にポルシェ911という偉大なアイコンとなるわけですね。

ただ、この頃ポルシェは「個人が設立したデザイン事務所」から「公的企業」へと急速に変革を進めていて、そんな中で「ポルシェ創業者一族が会社の中枢に居座るのはいかがなものか」という風潮が生まれ、そこでフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ含む一部のポルシェ一族がポルシェを離脱し、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは1972年に自身のデザイン事務所(現在の「スタジオ F. A. ポルシェ」)を開設します。

ただ、自動車メーカーとしてのポルシェを離れたといえどポルシェとの関係性が途絶えたわけではなく、実際のところ最初の注文は「ポルシェから」。

ポルシェデザインの腕時計は当初「贈答用」だった

その内容は優れた社員や選ばれた顧客へのオリジナルで高品質なギフトとして時計をデザインするというもので、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェはこの「創業記念製品」を開発する際、自然に自らの信条である「デザインの正直さ」を貫くことに。

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それは今日に至るまでポルシェ・デザイン製品の精神、魂、そしてデザインを決定づける基準ともなっていて、この基準を通じ、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは「自身の設計したポルシェ911に匹敵する時計を作ること」を目指すわけですね。

かくして「クロノグラフ1」が誕生し、これは時計の世界に革命をもたらした初のマットブラックのクロノグラフで、もちろん大きな論争を引き起こしたと言われます。※この大きな論争によって多くの人がこの存在を知ることになり、当初は贈呈用であったものの、市販化要望が相次ぎ市販に至る

そしてマットブラックを採用した理由は「911のコクピットを腕時計の世界で再現すべく」デザインされたためで、ブラックダイヤル、高コントラストのインデックス、そして最適な視認性を確保するための高反射防止ガラスの装備など、まさにこの腕時計はポルシエ911の世界観を表現したものであり、赤い秒針は当時のポルシェのダッシュボードにあるタコメーターとも一致しています。

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ポルシェ911の特徴的なラインは、今日でもスポーツカーのデザインに影響を与え続けており、パフォーマンス、速度、エレガンスの象徴でもありますが、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェはこの(自身がデザインした)スポーツカーのDNAを直接「クロノグラフ1」に組み込み、車両の基本的なアイデアを時計へと翻訳したわけですね。

このようにしてフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは「形と機能の完璧な共生を体現し、ポルシェのDNAを受け継ぎ、当時も今も変わらず時代を超えたパフォーマンスを放つユニークな時計」「腕時計上の初のスポーツカー」を生み出すことになりますが、ここで重要なのは「ポルシェ911、クロノグラフ1が同じ人物によってデザインされたこと」、そして「クロノグラフ1は腕時計としてよりも、スポーツカーと同様の思想を持ち、”時間を知る”という機能優先にてデザインされたこと」。

そう考えるとこのクロノグラフ1の歴史的な重みが増してこようというものだと思います(クロノグラフ1は単なるライセンス商品やコラボ製品ではない)。

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参照:Porsche

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