>フェラーリ

フェラーリはその性能同様、インテリアの進化にも注力してきた。フェラーリが「スーパーカーの内装において常に業界のリーダーである」理由とは

フェラーリ

| フェラーリは独自の理念に基づき、ドライバーが運転に集中できる環境を整えてきた |

そして現代では、同乗者にもエモーショナルな関わりを持たせ、運転していなくとも「特別な体験」ができるように配慮されている

さて、フェラーリが「エンジンやシャシーのみではなく、インテリアにおいても常に業界のリーダーである」というコンテンツを公開。

意外なことかもしれませんが、フェラーリは内装において常に「扱いやすさ」を考慮しており、ドライバーに対して負担をかけないことに高いプライオリティを置いています。

その考え方につき、おそらくは耐久レースや、一瞬の判断が勝敗を分けるF1において「ドライバーが運転に集中し、他のことに気を取られなくてもいい」ようにというところからから来ているのだとぼくは捉えており、これは「レーシングチームがそのルーツである」フェラーリらしいところだと考えています。

フェラーリ・プロサングエのインテリアは現時点で「フェラーリの集大成」である

そこでフェラーリが「もっとも進化したインテリア」として挙げるのがプロサングエ。

プロサングエは見ての通り運転席と助手席の「2つのウイング」から成るデザイン的構成を持っていますが、これは「ドライバー以外の乗員にも、ドライバーが感じるのと尾同じように、エモーショナルな関わりを持って欲しい」というコンセプトに起因するもの。

1

なお、この「助手席ディスプレイ」は(およそ1世代前くらいにまで遡った)他のフェラーリにも(標準なりオプション装備なりで)備わっており、プロサングエほどサイズは大きくないものの、フェラーリはけっこう前から「助手席の人にも楽しんでもらおう」という考え方をもっていたということがわかります。

52181536226_96d3caf2a2_o

ちなみにですが、この助手席ディスプレイについてはほかのスポーツカーメーカーは(フェラーリが導入した後)しばらくは興味を示さなかったものの、ポルシェが「タイカン」にて取り入れ、さらには最新モデルのカイエンにてこれを拡大。

そしてポルシェと同じくフォルクスワーゲングループに属するランボルギーニもまた、最新V12フラッグシップである「レヴエルト」でこれを取り入れ、EVコンセプト「ランザドール(下の画像)」ではこれを拡大して装着しており、こういった傾向を見ると、おそらくはほかの自動車メーカーも今後これを取り入れてくることになると考えてよく、これからの1つのトレンドと成るかもしれません(そして、このトレンドはフェラーリが発信したものということになる)。

19

ランボルギーニが「レヴエルトのメーターやインフォテイメントシステムはこう動作する」という解説動画を公開。基本的にはアヴェンタドール風、ただしシンプルかつ高精細に【動画】
ランボルギーニが「レヴエルトのメーターやインフォテイメントシステムの動作解説動画」を公開。基本的にはアヴェンタドール風、ただしシンプルかつ高精細に【動画】

| ランボルギーニのインフォテイメントシステムはレヴエルトへの搭載によって格段に進歩したと言える | ただし基本はこれまでとよく似ており、既存オーナーにとっては「移行もスムーズ」かもしれない さて、ラ ...

続きを見る

そのほか、フェラーリはHMI(ヒューマンマシンインターフェース)にも非常に高いこだわりを見せ、やはり運転中の(ドライバーの手の)動線を最小限に抑えることを考えていて、同社の設計理念のひとつでもある ”視線は道路上、手はステアリングホイール” をとことん追求。

そのためウインカーレバーは存在せず、(458イタリア以降のフェラーリでは)ウインカー操作はステアリングホイール上のロッカースイッチにて行います。

ちなみにこのウインカー「スイッチ」を最初に見たときこそはちょっと戸惑ったものの、交差点をいくつか曲がってウインガーを数回操作した後にはすっかりこれに慣れてしまい、むしろ他のクルマに乗ると「なんでフェラーリのようなウインカースイッチを採用しないんだろうな」と考えるようになり、ウインカーレバーの操作が面倒くさくなるほど。

L1380514

そのほかドライブモード(マネッティーノ)の制御スイッチは2004年のフェラーリF430からステアリングホイール上へ。※この”ドライブモード”の導入についてもフェラーリはかなり早い段階で行っている

ステアリングホイールには「頻繁に、かつ運転中に使用する」操作系が集中して配備されていて、これによってドライバーは運転中にステアリングホイールから手を離す必要がなくなり、かつ集中力を削がれることもなくなるわけですね。※これらについては、実際に生体測定テストの結果から配置や操作感が決定されている

L1420596

加えて、ステアリングホイール上部に埋め込まれるLEDインジケーター(レーシングカー同様にエンジン回転数を直感的にわかるように表示する)もドライバーを運転に集中させるための機能であり、フェラーリの市販車において、様々な機能が「極限の環境下で競われるモータースポーツから」フィードバックを受けていることがわかります。

L1380714

ちなみに最新のステアリングホイールはこういったデザインで、大きな特徴としてはスポーク上に「タッチ式スイッチ(タッチセンサー式サムパッド)」が設けられていること。

L1410222

このパッドの操作によって16インチサイズのメーター兼インフォテイメントディスプレイ(かなり大きい。一般的なデジタルメーターは約12インチである)の表示をコントロールでき、様々なサブメニューを呼び出すことが可能となっているわけですね。

なお、操作(サムフリック)の際にはフリック音が発せられてドライバーにフィードバックを与えることになりますが、ローマ・スパイダーではこのフィードバックに「振動」が追加されている、とのこと(このフィードバックは非常に重要で、これがないと操作を受け付けたかどうかわからず、二度押ししてしまうことになる)。

L1460394

一方で、運転中に操作することがないスイッチ類はこんな感じでセンタートンネルへ(しかしその形状がアート作品のようである)。

L1002956

最新バージョンだとこう。

これはジェッド機の「スロットルレバー」「かつてのフェラーリのオープンゲートシフト」を模したデザインだとアナウンスされています(ただ、ぼくはこの光沢と質感があまり好きではない。プロサングエでは上品な仕上げに変更されているようだ)。

L1440678

そのほか、現行のフェラーリでは室内からのドア開閉を「ボタン」で行うことになりますが、この(グリップ付近に設置されている)ボタンを押すと電動でロックが解除されてドアが開くという親切設計(レクサスがNXにて導入した)。

つまりレバーなどを引いてドアを開く必要がなく、「まさかフェラーリにこういった快適装備が備わるとは」といった感じですね。

L1280213

フェラーリのインテリアは究極のモダニズムを反映している

なお、フェラーリは(モータースポーツ活動がそのブランドのルーツであるといえど)美しさを非常に重要視しており、そのレーシングカーや市販車において「美しさ」を重視しているのは周知の通り。

よって、その美学を汚す存在に対しては容赦なく法的手段を検討し、どんな著名人であっても即座にブラックリストに追加したりすることでも知られていますが、「美しさを重視し」市販車に(別体式)ウイングを装着しないのも意外な事実です(SF90 XXは”XXプログラム直系”ということで今のところ唯一の例外だと捉えている)。

フェラーリ・ローマ・スパイダー
フェラーリの「ブラックリスト」にはどういった人物が、どういった理由で入っているのか?そしてどうすればVIP認定を受けることができるのか?

| フェラーリは「販売する顧客」を選ぶことでそのブランドイメージを守っている | フェラーリはクルマを売っているが、それ以上に「ブランドを売っている」 さて、時々話題となる「フェラーリのブラックリスト ...

続きを見る

実際のところ、ぼくは「フェラーリを超える速さを持つクルマを作ることは難しくないだろうが、フェラーリを超える美しさを持つクルマを作ることは容易ではないだろう」とも捉えていて、もちろんこの「美しさ」の基準は人によって異なることも理解しています。

L1450588

ただ、フェラーリが「速さ」という数字で測ることができる基準のみによって判断されるクルマではないことは間違いないのは間違いないとも認識しており、それがフェラーリをフェラーリたらしめている一つの要因ではないかと考えています(客観的数値によって優位に立とうとしても、それはすぐに抜かれたり、色褪せてしまうことがある)。

それはともかくとして、ぼくがここで言いたいのはフェラーリの内装の美しさ。

フェラーリがそのエクステリアデザイン同様にインテリアに対しても強いこだわりを持っていることは間違いなく、それは上で述べたHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)に加え、視覚的な美しさも同様かもしれません。

たとえば、フェラーリは単に機能的であるだけではなく、その造形についても芸術性が感じられ・・・。

L1450464

エアコン吹き出し口についても「必要性を超えた」範囲での美の追求も見られます。

L1002267

ダッシュボード上には「レザーストラップ」を意識したと思われるアクセントも(ただ、これはダッシュボードのレザーを二分割しても継ぎ目が目立たないという実利が含まれているものと思われる)。

L1003096

さらにはステッチの幅も選択できたり・・・。

L1450366

素材やカラーを「部署単位で」選択可能(ダッシュボードの上下やバルクヘッド上下、ステアリングホイール単体など)。

L1420563

エレガントにもレーシーにも仕上げることができるのがひとつの魅力だと言えるかもしれません。

L1380505

シートベルトなどの「パーツ」の選択範囲も非常に広く、文字通り「無限」の選択肢が存在します。

L1490607

こういったイタリアンカラーの刺繍も追加可能。

これらパーソナリゼーションについても、フェラーリが先鞭を付けた部分だと言えるかもしれません(ただしポルシェはもっと早い段階から顧客の要望を取り入れたカスタムを行っていたように思う)。

L1380640

こういった美しさ、そしてパーソナリゼーションの高さに加え、プロサングエでは「エアコンの調整ダイヤルがせり上がってくる」などのギミックもあり、フェラーリは「ただ速さや機能性を追求するだけ」ではなく、実際に乗車して運転するときの「体験」までをもデザインしていると言えそうです(さらに言うなれば、オーダーや納車に至るプロセスまでもデザインされていると考えていい)。

加えて、現代のフェラーリのインテリアは「ドライバーだけのもの」ではなく、その体験=エクスペリエンスの対象範囲がほかの乗員にまで拡大してきている、ということも理解できます。

2022-09-19 15.24.51

フェラーリが「快適なエアコン」の特許を出願!これからの時代、そしてプロサングエには(フェラーリといえど)こういった装備が欠かせないんだろうな・・・
フェラーリが「快適なエアコン」の特許を出願!これからの時代、そしてプロサングエには(フェラーリといえど)こういった装備が欠かせないんだろうな・・・

| ブガッティ、ポルシェもエアコンには相当に力を入れている | とくに北米市場では「エアコン」を重視する顧客が多いようだ さて、これまでにも様々な特許を出願してきたフェラーリですが、今回は珍しく「エア ...

続きを見る

そうやってこれまでのフェラーリの内装をを見てみると、フェラーリが率先して取り入れ、そしてそれが「業界標準となった(もしくはなりつつある)」ものも少なくはなく、これまでなんとなく見ていたフェラーリの内装も「違って」見えるような気もしますね。

6

フェラーリの変革に努めたかつてのCEO、ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏は「フェラーリは手の届かない美女のような存在である」と発言していますが、フェラーリの外観的美しさはそういった美女そのもので、フェラーリの持つ先進性や装飾は美女を引き立てるためのドレスやアクセサリーのようなものなのかもしれませんね。

Ferrari-Purosangue-SUV (10)

合わせて読みたい、フェラーリ関連投稿

フェラーリ
「普通のクルマは寿命の限られた消費財かもしれませんが、フェラーリはまったく違います」。フェラーリ自らが文化財保護と語る、フェラーリ・クラシケの活動とは

| フェラーリはクルマではなく「ブランドを」売っている | ここまでブランド価値向上に注力する自動車メーカーはフェラーリをおいてほかには無いだろう さて、フェラーリのクラシックカーは非常に高額なことで ...

続きを見る

フェラーリが公式にそのエンブレム誕生を語る。エンツォとミラノの芸術家によって作られ、文字の上で「馬が跳ねているように」というのはエンツォの指示だった
フェラーリが公式にそのエンブレム誕生を語る。エンツォとミラノの芸術家によって作られ、文字の上で「馬が跳ねているように」というのはエンツォの指示だった

| フェラーリが公式にエンブレムについて語るのはおそらくこれが初だと思われる | フェラーリの「馬」は現在に至るまでに「スリム」になっていた さて、フェラーリは自動車業界でもっとも印象的なエンブレムを ...

続きを見る

フェラーリ
フェラーリは創業当初、年産わずか3台、しかし現在では13,221台の生産を誇るまでに。フェラーリがいかに拡大したか、その変遷を見てみよう

| やはりフェラーリの拡大についてはエンツォ・フェラーリの「明確な信念」が影響していたことは間違いない | さらにいえば、エンツォ・フェラーリは「運」を引き寄せるだけの力を持った人物であった さて、フ ...

続きを見る

参照:The Official Ferrari Magazine

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->フェラーリ
-, , ,