| フェラーリはクルマではなく「ブランドを」売っている |
ここまでブランド価値向上に注力する自動車メーカーはフェラーリをおいてほかには無いだろう
さて、フェラーリのクラシックカーは非常に高額なことで知られますが、過去のモデルが高額にて取引されることにより、フェラーリのオーナーは「フェラーリは価値が高い」と認識して新車・クラシックカーに対して高額な対価を支払うことを厭わなくなります。
これはつまり「ブランド価値が向上している」ということを意味しており、現行モデルについてもさらに高い付加価値を盛り込み、より高い価格で販売することが可能となるわけですね。
よって現在、自動車業界では「販売済みのクルマの価値を高めよう」という動きが活発化していて、メーカー直系のクラシック/レストア部門を設ける例が増加しており、国産車メーカーにおいてもパーツの再販やレストアの取扱開始といったトレンドも見られます。
-
ポルシェが1968-1976年までの911に対応するマグネシウム製クランクケースを復刻!ナナサンカレラもこのパーツを使用しているためカレラRS 2.7のエンジンを「新しく」作れるかも
| ポルシェは「過去のクルマの性能を維持向上させるため」ポルシェクラシック部門を通じてパーツの供給を行なっている | さらにポルシェクラシックでは「パフォーマンスパーツ」にも参入 さて、ポルシェは「こ ...
続きを見る
参考までにですが、これは腕時計やジュエリー、バッグにおいても同様の傾向と言ってよく、「過去の製品の価値が高くなればなるほど」そのブランド価値、そして新製品の価格が高くなる傾向があるようです(腕時計だとロレックスやパテック フリップが好例である)。
フェラーリは昔から「ブランド価値」の保護に力を注いでいた
フェラーリの歴史上には数多くの名車が存在し、たとえばすぐに思い浮かぶのは250GTO、365 GTB/4「ディトナ」、ディーノ206/246GTといったクルマたち。
これらはもちろん「クルマ自体が素晴らしい」といったこともあるかと思いますが、フェラーリがこれらクルマの価値を維持・向上しようと考え、かつブランド価値を向上させようと実際に行動してきた、という事実が大きく影響しているのかもしれません。
実際のところ、フェラーリ創業者であるエンツォ・フェラーリは、「ブランディング」の「ブ」の字もなかった時代からブランドを成長させることを考えていたと見え、まずブランド価値を向上させる最大の手段は「モータースポーツで勝ち続けること」だと認識してこれを実践し、そのほかには「クルマを売る相手を選んだり」「ブランド価値を毀損するチューナーやショップ、個人には容赦なく対処したり」、そして「常に人々が欲しがるよりも1台少なく作る」という思想に基づいて限定台数を「~9台」という設定としたことからもその思想をうかがい知ることが可能です。
-
エンツォを激怒させたいわくつきのケーニッヒ・テスタロッサがオークションに登場
| バブル期の日本ではテスタロッサが大人気 | 1988年製のフェラーリ・テスタロッサをケーニッヒがカスタムしたコンプリートカーがオークションに登場予定。ケーニッヒとF40/F50をかけあわせたような ...
続きを見る
そしてこういった活動はエンツォ・フェラーリが没した後も確固たる意思をもって行われ、2006年に設立されたフェラーリ・クラシケ部門は最たる例かもしれません。
このフェラーリ・クラシケは「マラネッロの至宝、このブランドの遺産を守ること」を目的に設立されており、販売済みのフェラーリに関するメンテナンス、レストア、技術的な支援、鑑定書(レッドブック)の発行サービスを行うことを目的としています。
エンツォ・フェラーリは「いま、あなたが手にしているフェラーリ(の新車)は、将来のクラシックモデルである」という言葉を残しており、つまりはいずれのフェラーリも高い価値を誇るクラシックカーになりうるということを意味しているわけですが、フェラーリは(フェラーリ・クラシケのほかにも)新車に対して7年の無償メンテナンスを付与するなど、比較的新しいモデルに対してもその価値を維持しようとする努力が見られます。
もちろんこれはフェラーリ側に相当な負担が生じるものではあるものの、それでブランド価値が向上するのであれば「安いものである」という判断なのかもしれません(もちろん、そのいくばくかは車両価格に転嫁されているものと思われるが、その車両価格が許容されるのもブランド価値の高さゆえである)。
フェラーリ・クラシケではこんなことを行う
そこでフェラーリ・クラシケについてもう少し掘り下げてみると、フェラーリ・クラシケのサービスを受けるのに製造年は無関係だといい、つまり最新モデルであってもその対象になるということですが、鑑定書(レッドブック)発行サービスを受けるには、その車両が製造から20年を経過している必要がある、とのこと。
そしてこの「認証」において重要となるのはオリジナリティだといい、つまりは車両が正常に機能したりというコンディションのみではなく「工場出荷時の状態が維持されていること」に重点が置かれ、改造されていたりパーツが(オリジナル以外のものへ)交換されていると認証を得ることができない、ということに。
ここまでフェラーリがオリジナリティを意識する理由としては、「それぞれのクルマは、それぞれの目的をもって、決まったパーツと方法で機能するように設計・製造されており、よってなにかが変わっているということは、もはや当初の目的を持つクルマをは言えないから」。
よってフェラーリはこの認証サービスによって「そのクルマが設計・製造されたとおりの機能を発揮し目的を果たす」ことを公的に認めているということになりますが、フェラーリはこれを「文化財保護」と呼んでおり、以下のようにコメントしています。
クルマは、時間が経つにつれて元の工場で製造されたのではない部品を取り付けられたり改造されたりしてオリジナルの状態でなくなることがあるものです。フェラーリ・クラシケの最大の役割のひとつは、そのクルマが製造時のオリジナルとまったく同じ状態であることを保証することです。それは文化財保護の問題なのです。
「普通」のクルマは寿命の限られた製品として設計されているかもしれませんが、フェラーリはまったく違います。フェラーリの顧客は、将来的に複数のオーナーの手に渡る可能性のあるクルマのいわば「管理者」です。フェラーリ・クラシケの使命は、クルマをできる限り長く乗ることができて将来の世代にも楽しめるようにすることです。さらに、本来の状態を維持することができればクルマの価値は高いまま保たれます。
Ferrari
フェラーリがそのオーナーをして「文化財の管理者である」と明言していることは非常に興味深く、新米フェラーリオーナーとしては身が引き締まる思いです。
あわせて読みたい、フェラーリ関連投稿
-
古今東西、もっとも高額にて取引されたフェラーリ13選!250GTO、290MM、275GTなど1950-1960年代の名車がズラリ。もっとも高価なのは250GTOの7000万ドル(92億円)
| ここまでクラシックフェラーリの価値が上がるとはエンツォ・フェラーリも予想しなかっただろう | そしてフェラーリの価値はまだまだ上がることになるだろう さて、フェラーリのクルマはクラシックカー、そし ...
続きを見る
-
フェラーリ・レーシング・デイズにて「クラシケ」「あと付けオプション」の展示を紹介!フェラーリは自社が生産したクルマの価値の保全に重きを置いている
| 「売りっぱなし」ではブランド価値を高めることは到底できない | フェラーリは「過去があってこその未来」だと考えている フェラーリ・レーシング・デイズ、今回は「クラシケ」「スペシャルモデル」編。 ま ...
続きを見る
-
フェラーリが公式にて「もっとも人気のあるフェラーリ」、250GTOについて語る。製造された36台すべてが現存し、中には77億円で落札された個体も
| ボディのバリエーションも多く、中には「後期型」に改造された前期型250GTOも | もっと希少なフェラーリも存在するが、モータースポーツ上での戦績を考慮すると250GTOよりも価値が高いフェラーリ ...
続きを見る
参照:Ferrari