フェラーリ・カリフォルニアTハンドリング・スペチアーレに試乗。
これは標準の「カリフォルニアT」に「ハンドリング・スペチアーレ・パック」を装着したもので、外観、サスペンション、エキゾースト、シフトプログラム等がその変更内容。
もともとカリフォルニアはGT色の強いモデルで、フェラーリとしては例外的に快適性を追求した車と言えます。
そのため初代ではオーナーの70%がフェラーリを今まで購入したことがない人とされ、フェラーリにとってカリフォルニアは新規顧客を獲得するのには重要な存在へと成長。
しかしながら、中には「カリフォルニアはコンフォートすぎ」と感じる人もいて、でもV8ミドシップはちょっと、でももっとフェラーリらしい刺激が欲しい、と感じる人向けに設定したのがこのオプションというわけですね。
サスペンションはフロントで16%、リアで19%レートが固められていますが、アダプティブダンパーの設定も変更。
さらにトランスミッションの変速スピードも高速化され、エキゾーストシステムはより大きな音を奏でるように。
外観だとマットグレーのグリルやディフューザーフィニッシュ、マットブラックのテールパイプが装着されています。
早速試乗に移りますが、カリフォルニアTのキーは488のようなスマートキーではなく、コンベンショナルなカギつきのキー。
これをキーシリンダーに差し込んでステアリングホイール左下にあるスタートボタンを押してエンジンスタートさせますが、さすがにエキゾーストシステムを交換しているだけあって勇ましい音とともにエンジンが目覚め、アイドリング中も振動を伴うほどの豪快なサウンドを届けてくれます。
標準のカリフォルニアTはかなり静かだった印象があり、よってこのカリフォルニアT・ハンドリング・スペチアーレは”かなり”音が大きくなっているのでしょうね。
その音や振動はF12ベルリネッタに近いという印象で、488GTB/488スパイダーに比べるとカリフォルニアTハンドリング・スペチアーレは確実に大きい音を出しているようですね。
なおカリフォルニアがほかメーカーからの顧客獲得に貢献している理由として「乗用車感覚で乗れる」というものがあるかと思いますが、シートに座った姿勢はアップライトで、ダッシュボード周りも(デザインされた年代のせいもあると思いますが)比較的普通。
ただ、これはもちろんフェラーリが「狙った」ものであろうことは推測でき、カリフォルニアの魅力を損なうものではありません。
なおAピラーの角度も比較的立っており、これも「乗用車ライク」な雰囲気を感じさせる一因でしょうね。
全長/全幅/全高:4570/1910/1322ミリ
エンジン:V8ツインターボ 3855cc
出力:560馬力
最高速度:316キロ
重量:1625キロ
0-100キロ加速:3.6秒
価格:2450万円
ミラーやシートの角度をあわせ、クリープはないのでアクセルペダルを軽く踏んで車をスタート(パーキングブレーキは自動解除)。
いくつか段差を超えますが不快な突き上げは皆無で、サスペンションが固められたと言えども乗り心地は快適そのもの。
488GTB/488スパイダーも同様に快適ですが、カリフォルニアTのほうがストロークが大きく、若干のロールを許容する設定とまり(それでもマセラティ・グラントゥーリズモ、ベントレー・コンチネンタルGTよりはフラット)、同じフェラーリであってもモデルごとにかなり味が違うのは面白いですね。
ブレーキは効き始めが強く、踏んでゆくとじわじわと効きを強める設定であり、これもスポーツカーに乗り慣れていない人や女性ドライバーの運転を考えたものかもしれません(踏みはじめでブレーキが効かないと怖がる人も多い。逆に488はペダルを踏み込む力に応じて効きを強める設定)。
乗車位置もフェラーリとしては例外的に高いと思われ(488GTBよりも全高が10センチ以上も高い)、前方の見切りも抜群。
一般的な車と較べてもとくに見づらい部分も運転しにくい部分もなく、「まったく普通に」乗れるフェラーリですね。
こうやって考えるとカリフォルニアTはしっかりターゲットを見据えた設計やセッティングを行っていると思われ、フェラーリがそこまでマーケティングをしっかりやるとは、というのはちょっと驚き(レースのことしか考えていないイメージがある)。
ですがよく考えるとこのキビ新競争の中で実際にほかメーカーの顧客を獲得するのに成功し、フェラーリに「既存顧客に上乗せした」利益をもたらしているので、「しっかりほかメーカーのライバルを研究し、そのうえフェラーリならではの付加価値をプラスした」優れた車であることは間違いないわけです。
カリフォルニアTというとフェラーリ一家の中では甘く見られがちですが、実際には560馬力、0-100キロ加速3.6秒という、ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4と同じスペックを持っており、さらには最高時速316キロというパフォーマンスを持つ紛れもないスーパーカー。
ポルシェ・ボクスターがポルシェファミリーの中ではちょっと下に見られがちなのと良く似ていますが、一家の外に出ると第一級のパフォーマンスを持っており、家紋や家族が凄すぎるがゆえの苦悩と言って良いかもしれません。
なおカリフォルニアTはそのクラシカルなスタイリング、運転しやすさ、リトラクタブルハードトップ、(仕様地によっては)一応4人乗れる、トランクがある、というところが魅力のモデル。
そこへフェラーリ入魂の「ハンドリング・スペチアーレ・パック」を装着することで利便性と運動性能、運転する楽しみが一気に加速するわけですが、その意図どおりまさに痛快なモデルに仕上がっていると言って良いでしょう。
標準のカリフォルニアTに比べると上述のように気分を盛り上げるべく力強いサウンドが響き、ロールやピッチを抑えるべく強化されたサスペンションがスポーツドライビングを支えていますが、ひとたびルーフを開けると快適なオープンエア・クルージングも可能な万能選手といったところですね。
カリフォルニアT自体がユーザーの用途や(フェラーリに)求めていることをよく考えて作られた車だと言えますが、このハンドリング・スペチアーレ・パックも同様で、ユーザーがカリフォルニアTに対して何を求めているかをよく理解した内容であると言えそうです。
さらには加速性能やストッピングパワーも「フェラーリである以上」不足があろうはずもなく、正直カリフォルニアTはぼくがもっとも惹かれるフェラーリでもあります。
試乗は488スパイダーと連続して行っていますが、それだけに両者の性格の違いが明確にわかる結果となっており、もしフェラーリを購入するのであればぼくは「カリフォルニアT(もしくはハンドリング・スペチアーレ)」を選ぶだろう、と考えており、それは用途や好みの問題であり、どちらが優れているかという問題ではありません。
今からフェラーリを購入するとなると「ランボルギーニ・ウラカンはステイ」のままで、そのためにウラカンと重複する性格の488を購入するよりも性格が異なるカリフォルニアTを選んだほうが良いと考えていること、ポルシェにおいてもぼくは911よりもボクスターのほうが性に合っていると考えるように、「気軽に乗れるオープンカー」が好きだからかもしれません。
ウラカンもそうですがフェラーリ488GTB/スパイダーも「気軽に」乗ろうという人は少ないと思われ、乗るときはある程度の計画性や心の準備をもって乗るのだと考えますが(ぼくはウラカンに乗るときは一応計画的に乗るようにしていて、イキナリ「ちょっと乗ろう」とはならない)、カリフォルニアだと肩肘張らずに「ちょっと」乗ることができ、フェラーリの素晴らしさを気軽に楽しめることができそうですね。
なお試乗は488スパイダーと同じ、コーンズさんの大阪・南港ショールームにて。
重ねてお礼申し上げます。
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試乗記について
ランボルギーニ、AMG、アルファロメオ、VW、ジャガー、ベントレー、ルノー、ミニ、フェラーリ、マクラーレン、テスラ、レンジローバー、スズキ、トヨタ、マツダ、スバル、ホンダ、レクサス、メルセデス・ベンツ、BMWなどこれまで試乗してきた車のインプレッション、評価はこちらにまとめています。
フェラーリがカリフォルニアT向けに「ハンドリング・スペチアーレ・パック」をオプション設定。
これはシフトチェンジのスピードアップ、よりハードなサスペンション、エキゾーストシステムで構成され、GT色の強いカリフォルニアTをより硬派に仕立て上げるもの。
サスペンションのスプリングレートはフロントで16%、リアで19%固められ、アダプティブダンパーも設定を変更。
オリジナルのカリフォルニアTを試乗した感じだとかなりソフトに感じたので、これくらい固めてカリフォルニアの快適性は犠牲になることはなさそうです。
フェラーリによると「スポーツモード」に入れた際にはよりレベルの高いドライビングマシンとしての性能を体感できるとのことですが、このモードではさらに変速スピードが速くなり、より高回転を許容する設定となるようです。
もちろんエキゾーストシステムはノーマルよりも大きな音を奏で、より気分を盛り上げてくれる、とのこと。
なお外観上にも相違があり、このパッケージオプションを装着するとマットグレーのフロントグリル、リアディフューザー・フィニッシュ、マットブラックのテールパイプが装備されるとのこと。
実際にオプションを装着した車両についてはジュネーブ・モーターショーにて公開されるそうです。