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ピニンファリーナが最新コンセプト「ピューラ・ヴィジョン」発表。内外装には画期的な素材や技術を使用し、未来の自動車産業における新しい価値観を提言

2023/08/08

ピニンファリーナが最新コンセプト「ピューラ・ヴィジョン」発表。内外装には画期的な素材や技術を使用し、未来の自動車産業における新しい価値観を提言

| 現代の自動車業界において、デザインハウスでしか踏み込めないスペースが数多く残されている |

その意味では、デザインハウスの存在意義は非常に大きい

さて、長年フェラーリのデザインを担当してきたピニンファリーナが最新コンセプトカー「ピューラ・ヴィジョン(PURA Vision)」を発表。

これはピニンファリーナの次世代高級EVをイメージしたもので、モントレー・カー・ウィークで一般公開されることもあわせてアナウンスされています。

なお、現在ピニンファリーナはインドのマヒンドラ傘下にありますが、フェラーリと決別した後には様々な自動車メーカーからデザインを受託する一方、自社名義のピュアエレクトリックハイパーカー「バッティスタ」を発売するなど新しい展開を見せています。

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ピニンファリーナはもともと「SUVを発売する」予定だとされていた

なお、ピニンファリーナは長い歴史を持つカロッツェリアそしてデザインハウスではあるものの、バッティスタ以前は自社名義でのクルマを発売したことはなく、しかし自社名義でのクルマの発売は創業者であるバッティスタ・ピニンファリーナの積年の夢であったといい、現在は孫世代がそれを叶えたわけですが、自身の自動車メーカー「アウトモビリ・ピニンファリーナ」を設立した当時の計画の中で「ハイパーカーの後にSUVを発売する」ことも語られています。

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そしてこのSUVは「バッティスタのように高価ではなく、2000-3000万円くらいで、ランボルギーニ・ウルスやベントレー・ベンテイガの顧客を狙う」とされており、今回発表されたピューラ・ヴィジョンがその「予告」、あるいはその機能やデザインが部分的に市販SUVへと採用されるというスタディモデル的な役割を果たすのかもしれません。

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このピューラ・ヴィジョンはピュアエレクトリックパワートレーンを積むという想定で、EVらしく未来的なエクステリアを持っており、フロントでは「細長い」ヘッドライトがそのデザイン的特徴として挙げられます(フェラーリ・プロサングエにちょっと似ている)。

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ただ、他の多くの「細長いLEDライトバーを備える」クルマのように「実はどこかにヘッドライトが隠れている」わけではなく、実際にこの「細長い」ライトが実際にヘッドライトとして機能するといい、これに採用されるのは”ナノファイバー照明技術”。

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これによってヘッドライトを非常にコンパクト、そしてスリムにデザインできるようになり、これによってエアロダイナミクスを向上させることができるほか、開口部を大きくとることができ、クーリングにも貢献する、と紹介されています。

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ボディカラーは上品な「ビアンコ・シエストレ」そして車体下部の黒い部分はカーボンファイバー。

タイヤにはホワイトのラインが入り、躍動感が強調されているようにも感じます(ホイールは23インチ)。

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ピニンファリーナ・ピューラ・ヴィジョンはSUVでありながらも「スポーツカーライク」

なお、最低地上高はけっこう高いように見え、しかしルーフは低く、グラスエリアも「最小限」。

これによってずいぶんスポーティーな印象を醸し出していますが、興味深いのは「着座位置が低いこと」。

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どういうことかというと、一般にEVはフロア下にバッテリーを敷きつめるため、オフローダーだと最低地上高が低くなったり(実際にメルセデス・ベンツEQGのプロトタイプはそうなっているようだ)、逆に最低地上高を稼ごうとなるとそのぶん室内側が圧迫されてシートポジションが高くなったりするわけですね。

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ただ、このピューラ・ヴィジョンについては、ピニンファリーナいわく「2シータースポーツカーのような着座位置」を持つといい、ヘッドライト同様、ピニンファリーナはなんらかのソリューションを見つけたのかもしれません。

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ちなみにドアは「観音開き」、そして乗降を容易にするためかルーフは「ガルウイング」。※ジウジアーロ・シビラも似たようなドア構成を持っている

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なお、この「ラウンジドア」は創業者バッティスタ・ピニンファリーナが過去にスケッチしたピラーレス4ドアのデザインスタディ、ランチア・フロリダにインスパイアされたものだといい、つまりこのピューラ・ヴィジョンは未来と同様、過去にも目を向けているということになりそうです。

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そしてピニンファリーナは「バッティスタ同様、上から見た時に特徴的な外観がよくわかる」ともコメントしており、これはなかなか他にない観点かもしれません。

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そしてピニンファリーナ・ピューラ・ヴィジョンの見どころはインテリアにも及び、EVならではのフラットフロア、そして広々とした室内が特徴的(全般的に、高級ヨットをイメージしているそうだ)。

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アウトモビリ・ピニンファリーナのインテリア・デザイン・ディレクター、フランチェスコ・クンダリ氏によれば、「ピューラ・ヴィジョンのエレガントなインテリアは、アウトモビリ・ピニンファリーナの次世代の内装コンセプト紹介するもので、高い視界と絶妙な素材の選択、優れた仕立てによって快適さに包まれます。スポーツカーの個性と高級車のスペースと快適さとを兼ね備えているのです」。

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機能的なところに触れておくと、ヘッドレストにスピーカーが装備され、乗員全員に個別のサウンドゾーンが作られていることや・・・。

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後部座席用にはシート一体型ワインクーラーが設けられていること。

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このワインクーラーという設備自体、やはり高級ヨットにヒントを得たのかもしれません。

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加えて、センターコンソール、ヘッドライニング、シートバック上部は30%のナティバ・ウールと70%のリサイクル・ポリエステルからなる新しいテキスタイルが使用しており、つまりこのピニンファリーナ・ピューラ・ヴィジョンはパワートレーンだけではなく、クルマ全体が「環境に優しい」と捉えて良いのかも。

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ポリエステル自体は高級素材ではないものの、ピニンファリーナはそれをよりラグジュアリーに見せるべくメランジヘリンボーンへと織り上げていますが、この素材はすでに市販車の(防火性能など)耐久性基準を満たしており、数年後には市販車に採用される可能性があるのだそう。

現在の高級車においてはやはり「レザー」が主流ではあるものの、それは「レザーが高級」であるということのほか、(自動車メーカーのデザインスキルでは)レザー以外の素材を高級に見せることが難しいということを意味しているのかもしれず、しかしそこはピニンファリーナのようなデザインハウスが率先して変革してゆくことになるのかもしれません(ただ、ピューラ・ヴィジョンにおいてもレザーが部分的に使用されている)。

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コックピットの他の部分では、セミアニリンレザー、アルマイト処理されたアルミニウム、織柄の見えるネイキッドカーボンファイバーで覆われており、アルミニウム製のキックプレートはホイール製造時に出る廃アルミニウムからリサイクルし作られています(BMWグループも同様の試みを行っている)。

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ピニンファリーナにてカラー&マテリアル担当デザイン・ディレクターを務めるサラ・カンパニョーロ氏は「ピニンファリーナの新しいデザイン・フィロソフィーに則り、ピューラ・ヴィジョンは可能な限り少ない、そして最高品質の素材を、可能な限り効率的に使用することで、高度に調整された、時代を超越した、持続可能な仕上がりを実現しています」とコメント。

ピニンファリーナのような小規模メーカーは大手自動車メーカーのように「消費者に対する」大きな影響力こそ持たないものの、業界(主に自動車メーカー)に与えるインパクトは小さくはなく、このピューラ・ヴィジョンはそのデザイン力によるリーダーシップをいかんなく発揮している一台だと言えるかもしれません。

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