| ヴィリテックはパフォーマンスを追求したわけではなく、「最も条件が厳しい」ハイパーカーを作ることで技術力を高めたかったようだ |
そして得られた知見は「持続可能なモビリティへと」転用することで社会に還元
さて、2021年にハイパーカーを予告した英国拠点を拠点とするクリーンテクノロジーのパイオニア「ヴィリテック(Viritech)」。
今回はグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにて開発が(ほぼ)完了したという”世界初”のゼロエミッションハイパーカー「アプリケール(Apricale)を公開しています。
このアプリケール最大の特徴は「水素パワートレーン」を搭載すること、そしてその車体重量がわずか1000kgに収まっていること。
ちなみに出力は1100馬力だとされるので、パワーウエイトレシオは「1以下」ということになりますが、ここでその詳細を見てみましょう。
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ヴィリテック・アプリケールはバッテリー式エレクトリックハイパーカーの問題を解決
なお、ヴィリテックは当初から「水素」をパワートレーンの核に据えることを考えており、その理由は「バッテリーをパワーソースとして使用するとクルマが重くなる」こと、そして「バッテリーに使用するリチウムは環境に(採取時に)負荷をかけ、かつ再利用が難しい」こと。
つまりヴィリテックの目標はパフォーマンスというよりも環境にやさしいクルマを作ることにあったといえそうです。
これまでにも水素燃料電池を使用したクルマ、そしてそれをコンセプトに取り入れたスポーツカーも存在するものの、ヴィリテックではそれらと異なる”まったく新しいアプローチを採用した”とアナウンスしており、同社CTO、マット・フォークス氏によれば「これまで水素燃料電池は、バッテリーを中心としたパワートレインのレンジエクステンダーとして使用されてきましたが、私たちは、このアプローチを覆し、軽量かつ高効率なバッテリーを搭載した数百kWの燃料電池システムを中心としたパワートレインを開発しています。これにより、アプリケールのハイパーカー性能を実現しながら、一般的なBEVハイパーカーの半分以下の重量を実現することが可能となったのです」とコメント。
システム構成についてはかなり複雑となっていて、パワーソースは燃料電池、そしてリチウムイオンバッテリーは加速や高速走行時に「追加」にてパワーを提供するだけだとされていますが、リチウムイオンバッテリーは回生ブレーキエネルギーを蓄えるのにも使用する、と紹介されています。
反面、バッテリー容量を削ることで車体重量が1000kgに収まることでシャシーセットアップはシンプルになったといい(バッテリー式ハイパーカーのように、重い車体を制御するためのシステムが不要)、サスペンション形式はプルロッド式、そして(車体が軽いので)慣性モーメントが小さく、ステア、ヨー、ピッチ時の重量移動を少なく収めることができ、”アナログな”ミッドエンジン・スーパーカーのようなダイナミックな特性を持っているようですね。
車体を駆動するエレクトリックモーターは前後アクスルに1つづつ、そして電制デフはなく「機械式デフ」を備えるのものほかのエレクトリックハイパーカーとは異なるところだと思います。
極言するならば、このヴィリテック・アプリケールは「エレクトリックカーでありながら、シンプルなガソリンエンジン搭載スーパーカーのような軽量性と俊敏性、ドライブフィールを持ち、しかしエレクトリックモーターによる強力無比なレスポンスとクリーンさを誇る」クルマと表現することができそうで、つまりは現在の技術や規制の範囲内において、ガソリン車でもEVでも実現できないことを、発想の転換によって実現したと考えていいのかもしれません。
車体デザインはピニンファリーナ
そしてヴィリテック・アプリケールにはもう一つ特徴があり、それは「車体デザインがピニンファリーナによる」ということ。
基本的なデザインはヴィリテックによって考案されたそうですが、最終的にピニンファリーナによって仕上げられ、たしかに「構成するパーツや面を少なく、可能な限りラインを少なく」といったところはピニンファリーナっぽい、という印象(当初ヴィリテックが公開した初期デザインからかなりの変化が見られる)。
加えて、風の流れを視覚的に感じ取ることができるのもピニンファリーナデザインの特徴だと思います。
ピニンファリーナのCEOであるシルヴィオ・アンゴリ氏は、このデザインについて「テクノロジー、サステナビリティ、美しさ、そして何よりもパフォーマンスの総合体」と表現し、一方のヴィリテックでは「自動車デザイン界で、おそらく最も偉大な人物と協力できることを非常に誇りに思います。このパートナーシップは、ハイパーカーの伝統を受け継ぎ、未来に向けて完全に作り直すというアプリケールの使命を体現するものです」と述べています。
さらにヴィリテックは「クルマには個性が必要」だとも語り、アプリケールに「未来的なサウンド」を与えることについても言及し、25台のみを限定生産すること、2023年にプロトタイプを完成し、2024年に納車を開始することについても言及済み(今回価格について言及されていないものの、以前の話では2億円くらいとされていた)。
なお、ヴィリテックの目的は(上述の通り)パフォーマンスの追求ではなくクリーンエナジノー追求であるとされ、しかし今回ハイパーカーを最初のプロジェクトとして選んだのは「高い出力が要求され、それに対応する高レベルの車体やバッテリー制御技術が必要となり、さらには重量やパッケージングに制約がある」からだとしており、つまりはもっともハードルが高い車がハイパーカーであったため。
そしてこのハイパーカー開発によって得られた知見は「持続可能な輸送のための多様なアプリケーションのために使用される」といい、つまり様々な交通手段や移動手段に用いられ、未来における輸送を変えてゆくというヴィジョンを達成するために活用されることになる、とのこと。※マクラーレンF1設計者、ゴードン・マレーと同じく、乗り物を大きな範囲で捉えているようだ
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