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ランボルギーニ最高技術担当「中国の新興自動車メーカーを軽視することはできない」。一方で「彼らの持つ技術は宣伝されているほど優れたものではなく、対抗可能である」

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| いずれは中国からもランボルギーニを「おびやかす」存在が登場することとなるのかもしれない |

中国の自動車メーカーで警戒すべきは「その開発スピード」である

ランボルギーニは先日、「ランボルギーニ・デイ UK 2024」を開催しており、そこではいくつかの興味深い話が語られたもよう。

そのひとつがランボルギーニの最高技術責任者、ルーベン・モール氏が語ったもので、「中国の新興ブランドを無視することはできない」ということ。

ランボルギーニの立場からすると、中国の新興自動車メーカーの存在は「まったく脅威とならない(そもそも客層や価格帯が全く違う)」ようにも思えるのですが、同氏は「私はいかなる傾向も過小評価するつもりはありません。とくに中国の場合、それを過小評価するのは大きな間違いです」と述べています。

なぜランボルギーニにとって中国が驚異となりうるのか?

ルーベン・モール氏によると、まず中国を警戒せねばならない理由のひとつは「開発スピード」。

中国の新興自動車メーカーのひとつの強みはその開発スピードにあるといい、たしかに吉利汽車の各ブランド、そしてBYDの展開並びに成長速度を見るにじゅうぶんに理解ができるもので、ほんの2年前には「2025年には(EV業界では)フォルクスワーゲンがテスラからトップを奪い、その次にテスラ、そしてこの2強のあとに大きく離れてBYD、そしてフォード」と見られていたものの、現実的には早くも2023年末にはBYDが王者となってしまい、専門研究機関の分析結果をも超える成長力を見せているわけですね。

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この理由としては「開発開始から発売までの期間の短さ」が挙げられ、短期間で車両を企画し、マーケティングまで済ませて開発を行ったうえで発売にまで持ち込むのが現在の中国の新興メーカーです。※自動車にかかわらず、中国発のコピー商品が出回る速度を見ても、中国ではスピード重視ということがよくわかる

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たとえば欧米の自動車メーカーの場合、「新型EVを発表し、発売までは2年くらいかかる」のが常であったものの、中国の新興EVメーカーであれば「発表してすぐに発売、納車」が可能となっており、シャオミがはじめて発売したEV、SU7は発売した数週間後には納車が開始され、その1ヶ月後にはすでに1万台を納車したと言われるほど。

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こういった速度は「常識外れ」としかいいようがなく、アナリストが予想することすらできない速度での成長を見せる中国の新興自動車メーカーに対し、ルーベン・モール氏は「中国の自動車メーカーは有能で野心的であり、軽視するのは愚かな行為である」と語っているわけですね。

中国のバイヤーは伝統を意識しない

そしてランボルギーニがもうひとつ中国の自動車メーカーに対して警戒姿勢を取る理由は「 中国では、クルマのバイヤーは西側のバイヤーほどブランドの伝統を意識していないから」。

つまりは伝統的な日米欧の自動車ブランドであろうと、中国の新興自動車ブランドであろうと「中国のバイヤーはそのメーカーやブランドについて期にすることはなく、よって競争条件は名門であろうと新興であろうと平等」なのだそう。

これはにわかに信じがたい事実ではあるものの、中国ではほんの10-15年くらい前までは「自家用車が夢」の状態であり、よって多くの人がクルマに対して関心を持たず、そのため日米欧の自動車ブランドの知名度がさほど高くはなく、そのためポルシェやフェラーリ、ランボルギーニという名が一般に浸透し始めたのはここ最近。

よって、欧州伝統のブランドであっても、中国の人々にとっては(中国の自動車ブランドと同じく)「最近知った中国の自動車ブランドと同じようなもの」だとも言われており、こういった背景は中国独特のものであると考えられます。

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さらにここ最近ではAionやBYDが相次ぎハイパーカーを発表していて、これらは「数字だけ見ると」欧州のスーパーカーにもひけを取らないものであり、持ち前の愛国心バイアスも作用して中国産スーパーカー/ハイパーカーと欧州のスーパーカー/ハイパーカーとを同列に見てしまうのかもしれません。

もちろん、ここには自動車に対するメディア・一般人含めての知識レベル不足(上述の通り、自動車が普及したのは最近なので、ジャーナリストの多くも免許取り立ててでスキルが低く、直線で何キロ出た、くらいの評論しかできないと言われている)が関係しているものと思われ、クルマの良し悪しを判断する基準もまた日米欧の成熟したマーケットとは全く違う、ということなのでしょうね。

ただし中国の持つテクノロジーがずば抜けているわけではない

もうひとつ、ルーベン・モール氏は中国に対する言及を行っており、それは「中国企業は私たちの一部が信じ込まされているほど先進的ではない」。

同氏は「彼らのテクノロジーは、私たちが西側に持つテクノロジーよりも劇的に優れているわけではありません」と述べ、侮ることはできないものの、必要以上に警戒することもない、と語っています。

この意図については推し量りかねますが、中国の持つテクノロジーの多くは「日米欧の自動車メーカーとの合弁によって得られた技術」「同様の手法にて、コンピューター/家電業界から得た技術」「テスラなど一部の先行者の解析によって得られた技術」である可能性が高く、つまり中国から自発的に生まれたものではないため、欧米諸国を超えるような「まったく新しいものを(現時点では)作ることが難しい」ということなのかもしれません。

加えて、中国企業はプロモーションにも長けており(この多くはスティーブ・ジョブズの模倣ではあるが)、その宣伝手法によって自社の技術を「実際よりも良く」宣伝しているという可能性もありそうですね。

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