| おそらく、現ランボルギーニCEOは自身が携わった作品に対し、強い愛着と誇りを持っている |
そしてそのディティールを最新のモデルにおいても反映させ、過去モデルの成功を取り込もうとしているのだと思われる
さて、ランボルギーニやフェラーリ、マクラーレンなどのスーパーカーメーカーは国産車や(日常的に乗られる)輸入車とは様々な点で異なっており、それは「オプション」にも現れます。
一般的なクルマだと、新車発表時にオプションも同時に公開され、その内容がフェイスリフトやマイナーチェンジ、モデルチェンジ時まで維持されるケースが多いものの、スーパーカーの場合は「随時」オプションが追加される傾向があり、モデルライフ中にチョコチョコと新しい選択肢が増える場合が多いもよう(中には後付できるものもあるが、そうでないものもあり、自分が購入した後に魅力的な後付不可のオプションが登場するとちょっと悔しい)。
そして今回、(すでに受注が終了している)ウラカン、向けに新しいオプションが設定され、ここで紹介してみたいと思います。
ランボルギーニ・ウラカン向けとしてチェンテナリオ風のホイールが設定される
そしてこちらがウラカン用の20インチホイール「Ceus(読みはセタス?)」。
これはセンターロック構造を採用し、しかしその最大の特徴はカーボンファイバー製のエアロブレードを持つことですが、このホイールデザインは2016年に発表されたランボルギーニ・チェンテナリオLP770-4に装着されていたものと「同一」のデザインを持つように見えます(ただしカーボンファイバー製のブレード形状に少し差があり、今回新しく設定されたものにはスリットが設けられている)。
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なぜいま、「チェンテナリオ風」ホイールが登場したのか
なぜこの時期に、そしてウラカンの受注が終了したいま、チェンテナリオのデザインを反映させたホイールをオプション設定するのかは全くナゾではあるものの、ぼくが思うに、「現在のランボルギーニCEO、ステファン・ヴィンケルマン氏がこのホイールデザインに思い入れを持っているから」。
チェンテナリオLP770-4は、同氏が以前にランボルギーニCEOとして指揮をとっていた期間に発売した限定スーパーカーですが、この間もなく同社CEOが(スクーデリア・フェラーリから来た)ステファノ・ドメニカリ氏へと交代し、ステファン・ヴィンケルマン氏は(VWグループの定期異動にて)アウディスポーツのCEOへと移ることに。
その後ステファノ・ドメニカリ氏は「LP何とか」というステファン・ヴィンケルマン氏が用いていた伝統のネーミングを廃止し、フェイスリフトモデルでは「EVO」という新しい命名を取り入れたほか、モータースポーツ注力、(カウンタックのリバイバルに見られるような)レトロ路線を採用したわけですね。
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しかしその後、ステファノ・ドメニカリ氏はF1のCEOへとなるべくランボルギーニおよびVWグループを離れ、そこで後任CEOとして呼び戻されたのがステファン・ヴィンケルマン氏。
同氏はステファノ・ドメニカリ氏の方針を気に入っておらず、すぐさま「レトロモデルは今後一切ない」と断じたほか、ウラカンEVOの後継モデルとして(おそらくはウラカン企画当初のモデルライフ計画にはなかったであろう)ウラカン・テクニカを発売しています。
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そしてこの「テクニカ」という名称もまた、ステファン・ヴィンケルマン氏がガヤルドのハイパフォーマンスモデルに(はじめて)与えた名称で、それまでの「スーパーレッジェーラ」に代わるもの。
参考までに、「スーパーレッジェーラ(超軽量という意味のイタリア語)」という名称はステファン・ヴィンケルマンCEOが就任する前のCEOが導入した(ガヤルドのハイパフォーマンスに与えられていた)ペットネームであり、ステファン・ヴィンケルマンCEOがこの名称を継続使用しなかった理由は「もはや新世代のガヤルドのハイパフォーマンスモデルは軽量なだけではなく、最新技術(=テクニカ)を盛り込んだスーパーカーであり、スーパーレッジェーラという名称がマッチしなくなったから」。
加えて、ステファン・ヴィンケルマンCEOはそれまで長らく廃止されていた「LPなんとか」という呼称を(ガヤルドの後期モデルをへの移行を期に)復活させていて、つまりステファン・ヴィンケルマンCEOはそのネーミングに対して強いこだわりがあり、それをもって自身の意思を伝えていると考えることも可能です。
ただ、現在のステファン・ヴィンケルマンCEOが指揮をとるランボルギーニにおいては「LPなんとか」というサブネームが用いられておらず、よってここにはなんらかの心境変化があったのだと思われますが、ウラカン・テクニカにおいては、ステファン・ヴィンケルマンCEO時代に発売されたウラカン・ペルフォルマンテのオマージュとも受け取れるリアエンドのデザインが採用されており、同氏はネーミング以外にも、自身が関わったクルマのデザインに強く感情を移入していることがわかります。
もう一つ参考までにで、ウラカンシリーズの公式フォトにつき、「(ウラカンEVO系を紹介するなど、特別な意図がない限り)ウラカン・テクニカが前もしくはセンター」に位置していて、この配置もまたステファン・ヴィンケルマン氏の意向を反映していると考えていいのかもしれません。
そしてもうひとつ、同氏の「こだわり」を紹介しておくと、先日発表された「ウルスSE」のリアエンドについては、過去に自身が先代CEOからバトンタッチし、ガヤルドのフェイスリフト版として発売した「ガヤルドLP560-4」のリアをイメージしたもの。
こちらがガヤルドLP560-4ですが、横長のリアグリル、ハニカム構造といった共通点を持つことがわかり、これもまた同氏が「自身の作品」に対する強い愛着を示す一つの例かもしれません。
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ステファン・ヴィンケルマンCEOはデザイナーやエンジニア出身ではなくマネジメント畑出身の人物ではあるものの、こういった例を見るに、自身が関わる新型車について、そのデザインや構造にも対しても深く関与し、かつネーミングでもわかるように、ブランディング面においてもリーダーシップを発揮していることを見て取れます(そして、それらに対して非常に高い愛着と誇りを持っていることも)。
だからこそ「ランボルギーニ歴代CEOの中で最高の業績」を記録することが可能になったのだと思われますが、なによりも「過去を大事にしつつも、しかし過去を振り返るのではなく、必要であれば過去を破壊しながら前に進むこと、そして今の自分の行動がランボルギーニの未来を作ってゆく」というアグレッシブかつ前向きな姿勢が現在のランボルギーニの躍進に大きく貢献しているのかもしれませんね。
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