| この状況にて、「エレクトリックカー作らない宣言」を行うとはまさにパガーニ |
いくつかの少量生産自動車メーカーがこれに追随するかもしれない
さて、パガーニが「ピュアエレクトリックカーを発売しない」との報道。
パガーニはV12ガソリンエンジンを積むピュアなハイパーカーを作り続けていますが、現行モデルであるウアイラシリーズの生産が終了した後、C10(正式名称は後に発表)と呼ばれている新世代へと移行する計画を持っています。
そしてこのC10について、当初はV12エンジン搭載にてデビューするものの、モデルライフ途中にてピュアエレクトリックバージョンが登場すると(パガーニから)公式にアナウンスされており、しかし今回それが覆ったということに。
なぜパガーニはその決定をひっくり返したのか?
パガーニによれば、まずは2018年にピュアエレクトリックカーの開発にかかわる専門チームを結成し、そのチームの役割としては世界各地、特に米国市場にて(パガーニ製)EVのホモロゲーションを取得し安全性を確保する方法、さらに販売の可能性を探ることだったといい、しかし4年にわたる調査の結果としては「エレクトリックハイパーカーに意味を見いだせない」。
その大きな理由としてはまず「重量」が挙げられ、パガーニの調査によると、満足の行く性能を持つバッテリーを積むとそれだけで重量が600kgにも達し、これはウアイラR(1070kg)の半分以上。
オラチオ・パガーニ氏は「1300kg以下のエレクトリックハイパーカーを作ること」が目標だったといい、しかし現代のバッテリー技術ではどうやってもそれは実現できず、よって現段階ではエレクトリックハイパーカー計画を「放棄せざるをえない」と考えているようですね。
そしてもう一つは「EVは速すぎる」。
オラチオ・パガーニ氏はEVを理解するためにテスラ車を所有しているといい、しかし「これほどの高性能は必要ない」とも。
オラチオ・パガーニ氏は「速さ」が最重要課題ではなく、「ガソリンエンジンのような、素晴らしい感動をドライバーに与えること、エモーショナルなクルマを作ること」こそが重要であり、これも現在のエレクトリック技術では実現が難しい、と語っています。
これはウアイラRの発表時にも語られたことではあるものの、「運転しやすさ」が非常に重要であり、速さだけを追求して「扱いにくいクルマ、性能を活かしきれないクルマ」になってしまっては意味がないということなのでしょうね(極端なクルマを作るのは本望ではないとも述べている)。
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加えてオラチオ・パガーニ氏が今回下した「EVを投入しない」という判断については、EUによる「小規模生産自動車メーカーに対する免責合意を2029年から2035年へ延長する」という決定も関係していることは間違いはなさそうで、さらには「我々のような、生産台数が少ない自動車メーカーについて、大規模量産車メーカーと同じように環境負荷をかけていると考え、規制するのは間違っている」とも。
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これからのパガーニが目指すところとは?
エレクトリックカーを発売しないと決めたパガーニが今後目指すところについて、まずは「V12エンジンの継続」。
現在同様にメルセデス・ベンツからの供給を受けることになり、「メルセデス・ベンツは大きな企業ではあるが、決定権を持つ人々と話すこともでき、我々の主張にも耳を傾けてくれる」とも語っており、V12エンジンの継続供給については問題がないと考えて良さそう。
そして次はクルマのデザインであり、「パフォーマンスだけを追求するとどのクルマも同じようなデザインになってしまう。しかしハイパーカーにとって重要なのは視覚的なドラマである」とも述べ、デザインについては特段の注意を払うことになるものと思われます(直近のウアイラ・コーダルンガ、C10を見てもそれは納得できる)。
さらに追求するのは「卓越したカスタマーサービスを提供すること」、「バイヤーがクルマをサーキットに持ち込むことを可能にすること」、「クルマが路上で利用しやすい状態を保つこと」。
なお、パガーニのクルマは非常に精密に組みたてられており、搭載されるエンジンの許容回転数は9000回転。
こういった「究極の」クルマは通常だと(メルセデスAMG Oneのように)メンテナンスに手間をかける必要がありますが、ウアイラだとサービスインターバルは望外に長い1万キロに設定されているといい、これによってオーナーは安心してパガーニのクルマを所有することが可能となるわけですね。
パガーニのクルマは価値が非常に高い
パガーニの「納車待ち」リストは現在おおよそ3年程度だといい、9月に発表を控えるニューモデル「C10」の初期生産分である100台は完売済み。
そしてすでに販売済みの過去のモデルについても触れ、「ゾンダの中には市場での取引価格が10倍になっているものもあり、チンクエだと20倍になっている」という事実についても言及していて、こういった発言を見る限り、高い残存価値を実現するためにも「他と同じようなクルマしかできない」「極端なパワーウォーズ状態になってしまっている」エレクトリックカー業界に参入することにメリットは感じられず、パガーニはやはりパガーニとしての道を進むべきである、と判断したのだと思われます。
もちろん、今後の技術の発展によってパガーニが再度翻意してエレクトリックハイパーカーを製造する可能性もあり、一方で合成燃料が普及すればガソリンエンジン搭載車をずっと作ることができる可能性もあり、しかしひとまずは「ガソリンエンジンに固執する」という判断を行ったことを喜びたいと思います。
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参照: Autocar