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三菱車が中国にて絶望的に売れず、現地生産停止を6月以降も継続。このままでは中国撤退の決断に迫られる可能性があり、しかし他社にとっても「明日は我が身」

三菱車が中国にて絶望的に売れず、現地生産停止を6月以降も継続。このままでは中国撤退の決断に迫られる可能性があり、しかし他社にとっても「明日は我が身」

| ここまで来ると、「見通しが甘かった」というよりも中国市場の変化と中国車の躍進が予想を遥かに超えていたとしかいいようがない |

おそらく、中国車と価格帯が重複する自動車メーカーには三菱と同様の運命が待ち受けているのかも

さて、三菱が「中国での新車生産を6月以降も停止する」と発表。

三菱は昨年12月に新型アウトランダーを投入したものの売れ行きが芳しく無く、よって中国現地での需要が低いとして(作っても売れないとして)今年3月から5月までの生産を停止すると発表していたのですが、今回はさらに6月以降も生産休止を継続すると公表したわけですね(再開時期は未定)。

これはもちろん「生産しただけの車両を販売できない」、つまり生産するだけ赤字になってしまうということなのだと思われますが、三菱にとっては「先が見えない、長く暗いトンネルに入ってしまった」ということになりそうです。

三菱は中国からの撤退も視野に

なお、三菱の中国市場における販売は減少の一途を辿っていて、2022年には31,826台を販売するにとどまり、2019年の123,581台から比較して1/4に、そして2021年に比較してもほぼ半減といった不本意な数字を計上しています。

参考までに、2019年の中国販売比率は「三菱の総販売台数のうちの10%」であったものの、2022年の数字は三菱全体の4%程度だというので、直近では中国市場の占める割合が大きく減少しており(ただし、この数字を見る限りでは、他市場のほうが大きく減っているようだ)、しかしちょっと前の報道では「中国からの撤退は考えていない」。

しかしながら直近の報道では「中国からの撤退を視野に入れた話し合いが持たれている」ともされ、三菱は大きな岐路にさしかかっていると言えるのかもしれません。

いったいなぜこのような事態に?

そこでなぜ三菱のクルマが売れなくなったかについて、これはひとえに「電動化への対応遅れ」。

現在中国では政府のEV推進政策(国内販売もそうだが、生産を活性化させてEV輸出大国になるという目的を持っている)によってEV生産や購入に対して様々な恩恵がもたらされており、これを求めて消費者がEVを購入したり、そしてEVを買い求める消費者を狙って各自動車メーカーともEVに集中したり、はたまた新興EVメーカーが大量に登場しているといった状態です。

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つまりは需要もあり供給も豊富にあるのが現在の中国の状態ですが、そのぶん競争も激化しており、各メーカーとも差別化を行うことで消費者の歓心をひいたり、品質を向上させて(強豪が少ない)上級マーケットへ移行したりといった様々な戦略を持っていて、消費者にとっては結果的に非常に多数の(目移りするほどの)選択肢が同時多発的に発生し、そしてそのほとんどは中国車というのが現状です。

そういった背景もあって多くの中国人が中国車を選ぶようになっていますが、これはちょうどスマートフォン市場にてシャオミやOPPO、ファーウェイといったブランドが台頭し、それまで(中国の)携帯電話市場を牽引してきたノキアやモトローラなどが淘汰されてしまった状況によく似ているのかもしれません。

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よって現在の中国の自動車マーケットにおいて、日本車はそもそも(EVのラインアップが殆どないため)選択肢に入らず、高価で、かつ中国車に比較して機能が劣るという認識を持たれている可能性がありそうで、中国の自動車市場を拡大させるための導入としての役割を終え、主役がいま交代しようというところなのだとも考えられます(中国では、自動車に走行性能を求めるより、スマートフォンのような機能を求めている。これは、高級車であっても小さなエンジンしか載せていないということからも一部想像がつく)。

この傾向は三菱だけではなく、他の日本の自動車メーカー、そして欧米自動車メーカーでも同じである

こういった傾向は三菱特有のものではなく、他の日本の自動車メーカーにも当てはまり、直近だと三菱のほかにも日産だと45%、ホンダは38%、マツダは66%、トヨタは14%の販売減少が記録されており、つまりは「三菱車の人気がない」のではなく、日本の自動車メーカー全般が「選ばれていない」というのが中国の現状なのかもしれません。

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日本の自動車メーカーは中国でのEVシフトに乗り遅れ、そのシェアが4年連続で減少中。日産は45%、ホンダは38%、マツダは66%、トヨタは14%の販売減少

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もちろんこういった状況に対処すべく、各自動車メーカーとも中国のパートナーから供給を受けたEVを発売するなどしていますが、それでも「そのクルマをが欲しい」と名指しで買ってもらえるような魅力、価格優位性、そして何よりも数(三菱だと、EVは広州汽車から供給を受けた1モデルのみ)が少なく、とにかく中国市場へのキャッチアップができていない、とも考えることができそうです。

ただ、この風潮は「比較的EVに対して慎重だった」日本の自動車メーカーだけではなく、早い時期から電動化を進めてきた欧米の自動車メーカーにも当てはまっており、たとえばフォードは2016年以降ずっと中国での販売が減少していて(中国車のシェアが急激に増えたのは2017年頃から)、ステランティスも一部ブランドを中国から引き揚げる意向を示すなど、もう「中国では中国車しか売れない」という現状ができつつあるとも考えられます。

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そしてこういった傾向を見るに、空恐ろしくなるのが「今後の世界の自動車業界」。

メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンははその販売の多くを中国に依存しているので(中国車にシェアを奪われ)大きく販売が減少することになると予想されており(ただ、メルセデス・ベンツは価格帯が中後個車とかぶりにくいので、直近での影響は少ないものと思われる)、そうでない自動車メーカーであっても、世界中の様々な市場において(家電市場でそれが起きているように)中国製EVにシェアを奪われ、その存在感が希薄になってゆく可能性もありそうです。

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さらに驚くのは、昨年あたりに出された予測がもう「現実とは乖離していること」であり、要は予測よりも遥かに速く中国のEV生産と販売が伸びており、これによって日米欧の自動車メーカーがそのあおりを受けているわけですが、これは日米欧の自動車メーカーの予測が甘かったというよりは、「予想すらできない速度で」中国市場、そして中国の自動車メーカーが成長したと考えるのが妥当なのかもしれません。

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参照:東洋経済, 読売新聞 etc.

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