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スバルの販売減少が止まらず、このままでは1990年代半ば以降、「最大の不振」に。コロナとチップの問題だと言われるが、それだけではないとボクが考える理由

2021/11/29

スバルのキー

| おそらくスバルのビジネスモデルは他社の侵攻によってゆらぎ始めている |

ここまでは「ガラパゴス」にて春を謳歌してきたが

さて、スバルが最大市場の北米にて大きなダメージを受けている、との報道。

これはSUBARU現社長、中村知美氏の言を引用したもので、「今年の米国の販売は60万台にも満たないだろう」と述べたもよう。

ちなみに(不振だった)2020年にスバルが北米で販売した台数は61万1842台なので、2021年はさらにその下になるということですね。※2019年には70万117台を販売している

なお、アメリカでは感謝祭の後に大量の受注が入る傾向があるようですが、「今の雰囲気を見ると、やや厳しい状況である」との見方を示しており、1990年代なかば以来「最大の販売減少」を記録する可能性が高くなっています。

原因はもちろんコロナウイルスとチップ不足

この原因としてはやはり「コロナウイルスとチップ(半導体)不足」ということになりますが、スバルはかなり早い段階から公式にて「半導体不足にて生産が減少している」と述べており、調達に関して出遅れがあったのかもしれません。

実際のところ、トヨタ、マツダ、ホンダが2021年の1~10月に2桁の増加率を記録し、現代・起亜自動車が10月までの期間に29%の販売増を達成したことを考慮するに、スバルの販売減少についてはもっと他の原因があったりするんじゃないかと考えられますが、ほかの(販売台数がもともと多い)自動車メーカーの場合は、よりチップの使用量が少ない車種の生産を強化することで「台数」を稼げる可能性もあり、しかしもともとの販売規模が小さく、車種も少ないスバルにはそれができなかった可能性もありそうです。

スバル

なお、中村知美社長によると、他社の販売が増加している傾向にも触れ「2022年は記録的な年にはならないだろうが、マイクロチップの供給不足が解消され、販売台数が回復すると確信している」ともコメント。

加えて「半導体の状況にはまだ不確実性があります。そのため、現時点では確固たる目標はありません。しかし、業界の需要は1,550万または1,600万程度になるでしょう。そう考えると、65万台くらいの数字が見えてきます」とも述べており、コロナ前、そして半導体危機前の水準に戻るとはゆかずとも、2021年より販売が下がるという認識は持っていないようです。

スバルは「追われる立場」となってやや形勢が不利に?

なお、スバルは特殊な会社であり、「他社と競合する市場を捨て、自身が強みを発揮できる市場」に集中していて、たとえば、ミニバンや軽自動車、コンパクトカーをスパっと切り捨て、ワゴンとセダン、SUVに特化しています。

生物に例えると「コアラ」のように、他の生物にとって毒性のあるユーカリを主食とすることで、他の生物と競合せずに生きて行ける環境を作り出し、その限られた環境において最大限の存在感を発揮している、とも言い表すことが可能。

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そしてその武器が「アイサイト」や「シンメトリー4WD」ということになりますが、実際にこれが奏功し、スバルは「より少ない車種で、そしてより少ない販売台数でも儲かる」会社に変化を遂げたわけですね。

そう、これまでは。

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そして「これまで」というのは、スバルが生息するガラパゴス的環境へ、ほかの自動車メーカーが続々とやってきているためで、たとえば(以前からスバルをベンチマークとしている)マツダは新型CX-5にオフロードっぽい架装を施したグレードを設け、さらにはラギッドなCX-50も投入。

加えて北米市場では「すべてのSUVを4WDのみのラインアップにする」など、明らかにスバルに対抗していると考えて良さそう。

さらには他の複数メーカーがスバルの生息域へと入ってくる傾向も見られ、中にはスバルに対して価格優位性を持つケースもゼロではなく、要は「安住の地」であったスバル王国が他社の侵略にさらされていると考えていいのかも。

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よって、こういった減少がスバルの販売減少に響いているのではとぼくは考えていて、そのため「コロナやチップの問題が解決しても、そうかんたんに販売は上向かないだろう」とも捉えています。

ちなみにスバルの販売構成を見ると、その70%以上が米国に依存しており、これはホンダやトヨタの「30%くらい」とは全く異なる構造です。

これにはいくつかの理由があり、上述のように「日本国内での売れ筋であった軽自動車やミニバンを切り捨てた」ために日本市場の占める割合が1/3くらいに減ってしまったこと。

そしてもう一つは、トヨタ、ホンダ、マツダのように、世界最大の自動車市場である中国において合弁企業を展開しての「本格進出」を行っていないこと。

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こういった状況を鑑みるに、「スバルは最大効率を追求して利益を上げてきたものの、その歯車が逆転しだす時期に差し掛かっている」とも考えられ、これまでうまくいっていた「他社との競争を避け、限られた市場とセグメントに特化して強みを発揮する」「不要な投資を行わず、手持ち資産で勝負する」というスバルの方針が(他社の侵攻によって)崩れ去ろうとしているのかもしれません。

参照:Automotive News

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