| 多くの自動車メーカーが「顧客に対する押し付け」を行った中、トヨタは正面から顧客と向き合っていたのかもしれない |
実際のところ、トヨタ/レクサスの記録づくしは「顧客からの評価」だと言っていいだろう
さて、トヨタとレクサスが北米における2024年6月の販売台数を公表し、トヨタでは多くのモデルが過去最高を記録したほか、レクサスブランドでは(全モデル含めた販売で)過去最高の販売台数を記録、さらに1-6月の累計販売においても「ブランド立ち上げ以降、同期間における過去最高の販売台数」を達成したと発表。
トヨタ(当時の豊田章男社長)は数年前「EVに全力を注がず、ガソリンやハイブリッドエンジンを見捨てない」という決断を下していますが、これはある意味大きな賭けであり、投資家や環境団体からの大きな批判を浴びています。
しかしながらいかなる批判を浴びようとも「カーボンニュートラルへの道において複数の選択肢を追求する」という決意を固く守り、パワートレーンにおける解決策は1つではなく、どれが正しいかは買い手が選択する必要があると論じてきたわけですね。
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トヨタ/レクサスの戦略が正しかったことがここに証明される
そこで2024年6月の販売を見ていみると、まずトヨタではbZ4x(BEV)、カムリ(ハイブリッド)、カローラ(ハイブリッド)、カローラ クロス(ハイブリッド)、グランド ハイランダー(ハイブリッド)、タンドラ(ハイブリッド)、セコイア(ガソリン)、クラウン(ガソリン)といった面々が過去最高の販売台数を記録しています。
そしてレクサスだと全体では第2四半期では9.3%、1-6月でも11.9%の増加を記録し納車台数は149,412台から167,412台へ。
当然ながらレクサスでも多くのモデルが過去最高の販売を記録していて、ざっとそれらモデルを挙げてみるとES(ハイブリッド)、NX(ハイブリッド)、RX(ハイブリッド)、TX(ハイブリッド)、NX(プラグイン ハイブリッド)、RX(プラグイン ハイブリッド)、TX(プラグイン ハイブリッド)、RZ(BEV)、TX(ガソリン)。
ちなみにレクサスにおける電動車(EVとPHEV)の販売は33.7%増加して全体の35.9%を占めるに至っています。
そのほか特筆すべきはSUV全体の販売が15%増えたにもかかわらず「お手頃な」UXの販売が(1-6月で)21%減少していること、一部セダンの販売が伸び悩んでいること(LSの販売はほぼ横ばい、ISは8.7%減)、しかしなぜかモデルライフ末期のRCの販売が11.8%伸びたこと(ただしもともとの販売台数が少ないので、少し増えると大きくパーセンテージが変わる)、LCも比較的好調であること(17.1%増)。
やはり「多様なラインアップ」が必要である
今回のトヨタ/レクサスの発表を見るに、売れ筋は「様々なボディ形状」「様々なパワートレーン」にて構成されており、つまりは特定のボディ形状とパワートレーンに集中していないことがわかります。
これによってトヨタの「マルチパワートレーン」戦略の正しさ、つまり「何を買うのかはお客様が決めるのであって、我々が押し付けるべきではない」という考え方の正しさが証明されたと考えていいのかもしれません。
加えて、「お客様が決める」という思想はトヨタのデザインにも現れているように思われ、たとえばトヨタブランドのライバルであるフォルクスワーゲン、レクサスブランドの競合であるメルセデス・ベンツ、アウディ、BMWはそれぞれ「ラインアップ間でデザインを統一」しています。
これはひとえに「ブランディング(デザインを統一することで、そのブランド全体のプレゼンスを高める)」上の理由からですが、一方でトヨタだと「デザインがバラバラ」。
ヤリスやシエンタ、ノア/ヴォクシー、カローラ、アルファード/ヴェルファイア、RAV4、ランドクルーザー、GR86、ハリアー、クラウン、プリウスといった代表的なモデルの間には、他競合ブランドのように「共通するグリル」「共通するヘッドライト(DRL)デザイン」「共通するディティール」がほぼ存在せず、それぞれの車種固有のデザインを採用しています(ただしハリアーのエンブレムが”トヨタ”となったように、以前よりも統一化される傾向にはある)。
これもやはり、”ブランディング”といった自動車メーカー側の勝手な事情による押しつけではなく、顧客が求めるデザインを、それぞれの車種やセグメントごとに与えるべきであるという「顧客ファースト」の姿勢のあらわれなのかもしれません。
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参考メルセデス・ベンツ「もう我々は顧客にEVを買うことを押し付けません。ガソリンだろうがPHEVだろうが自由に選べるようにしようと思います」
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参照:TOYOTA