| もはや株式市場は「業績」ではなく「根拠のない期待」「希望的観測」によって動いている |
おそらくは投資家層の変化、そして投資手法の多様化、さらには投資のコモディティ化によるものであろう
テスラが2024年第2四半期の納入台数を「443,956台であった」と発表し、これは前年比で4.8%減という数字であり、第1四半期に続いて”前年割れ”を記録することに。
ただ、テスラの低調な販売を尻目に、その株価はなぜか10%も急騰していて(過去6ヶ月の最高値を記録している)、これはちょっと「考えにくい」現象でもありますが、株価上昇の理由としては「市場の予測よりも(減少したとはいえど)多くの台数を納入した」という解釈がなされたのだと推測されており、つまりは「テスラは最悪の時を脱した」と投資家から見られているのだと思われます。
これに加え、CFRAリサーチのアナリスト、ギャレット・ネルソン氏は「6月中旬の年次総会で株主がマスク氏の2018年報酬プランを再承認した後、株価は引き続き好調な勢いを維持している」と述べ、この報酬プランによってイーロン・マスク氏のテスラに対するプライオリティが増したことについても触れています。
テスラ株の買い時は難しい
ちなみにですが、ぼくはすでにすべてのテスラ株を手放していて、その理由は「まだ下がる」と踏んだから。
ただし再び上昇する局面を迎えることも間違いないとも捉えており、よって「下がりきったところで再びテスラ株を仕込もう」と考えていたものの、思ったよりも下がらず、むしろ上がってしまうことこですっかりアテが外れています。
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そして今回の2024年第2四半期の納入台数については見方がパックリと分かれており、上述のように「最悪の危機を脱した」とする向きもあれば「ここからが地獄である」と見るアナリストも。
たしかに第2四半期の納入台数は(大きな落ち込みを記録した)第1四半期に比較すると14%の増加ではありますが、テスラの主力市場である中国では、(中国乗用車協会=CPCAのデータによると)中国製テスラの6月の売上は前年比24.2%減だとされ、かなり深刻な状況であるとも考えられます。
さらに(テスラは米国での売上を個別に公表していないものの)コックス・オートモーティブは米国での第2四半期の売上が15%減ったと推定し、登録データによると、テスラの新車数は1月から4月の間に11%減少しているとも発表しているので、米国については「どんどん販売が減速している」可能性も考えられるわけですね。
実際のところ、エドマンズのインサイト責任者、ジェシカ・キャドウェル氏は「テスラが(値引きやインセンティブなど)米国で成長を促進させるための選択肢を使い果たしたのではないか」という見解を述べ、 「テスラにとって厳しい時期です。EVの販売は鈍化し、EVの競合企業もインセンティブを惜しみなく提供している。そして、テスラの場当たり的な値下げやインセンティブは、頻繁に利用されるほど、買い物客の注目を集める効果が薄れてきているのだと思われます」とコメントしており、テスラの今後についてはやや否定的な見方を示しています。
今後のテスラはどうなるのか
そこでぼくが考えるテスラの今後ですが、EV事業については「相対的にテスラが再評価される時期が来る」と考えていて、その主たる理由は「(現在テスラを追い詰めている)中国車の自滅」。
現在中国車は恐るべき勢いで伸びているものの、品質そしてアフターサービスが伴っているとは言い難く(すべての中国車メーカーがそうではない)、そしてそもそも中国製品全般的に「売りっぱなし」の傾向が強いから(中国製品が安価な理由の一つには、アフターサービスにコストをあまり割かないという側面もある)。※電動バランスボードのように、一瞬で盛り上がり一瞬で消滅した中国製品メインの市場がいくつかある
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今は「安価、かつコスパのいい」選択肢として中国車が受け入れられているものの、あと数年もすれば多くのメーカーが倒産して(フィスカーのように)メンテナンス/サービスを受けることができないクルマが大量に登場し、生き残ったメーカーであってもサービスコストの上昇に悩まされて製品を値上げせざるを得なくなったり、サービス品質が追いつかずに「客離れ」を起こすと考えています。
そして現在、多くの既存自動車メーカーが「EVよりもハイブリッド、PHEV」という状況となっているので、中国勢が自滅した後に有効な(電気自動車の)選択肢として残るのは「主にテスラ」になると推測しており、よってテスラが再び輝きを取り戻すであろうと推測しているわけですね。
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さらにテスラは数少ない「EV事業単体で黒字化している」自動車メーカーのひとつでもあり、状況が好転すれば一気に利益が増加することも考えられ、加えてロボタクシー、そしてAI事業、自動運転(FSD)、スーパーチャージャーといった分野での利益貢献も期待できるのは、と考えています。
ただ、ぼくの予測では、テスラが「第二の成長」を迎えるのは2-3年後であり、その間にもう一段株価が下がる局面を期待していて、そこでテスラ株を全力で仕込もうと目論んでいるわけですね。
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ちなみにですが、最近の(コロナ禍以降の)株式市場は非常に読みづらく、それは冒頭で述べたように「業績が下がっているのに株価が上がるから」。
一般的には「業績が上がると株価が上がる「業績が下がると株価が下がる」のがセオリーではあるものの、今回のテスラ、そしてほかの銘柄の動きを見ても、現実よりも「期待値(希望的観測と言ってもいい)」が株価に反映される比率が高いように思われます。
さらに言えば、ここ最近の米国株式市場の「景気が悪いという指標が出たほうが株価が上がる」のも奇妙な話であり、これも従来の常識である「景気が良くなったら株価が上がる」というのとは真逆の動きです。
ちなみに「景気が悪いと判断されたほうが株価が上がる」のは、「景気がいいと金利が上昇し、金利が上昇すると株式市場に流入する金額が減るから」という理由ですが、これらはある意味で(株式含む)投資がコモディティ化し、投資自体が一種のゲームのようになってしまい、実態よりも「憶測」「観測」「予測」に相場が左右される傾向が強くなったからなのかもしれません。
この傾向はとくにビットコインはじめとする暗号資産に顕著であり(とくにドージコイン)、これらはもう「全く予測不可能」です。
そして株式市場へと投資する投資家の中でも「株式のみではなく暗号資産はじめ様々な分野に投資する」人たちが増加し、そういった人々は株式相場を「暗号資産と同じように解釈している」ため、実際の企業の業績よりも、「人がどう動くか」という要素によって株価の行方を判断するようにシフトしているのかもしれません。
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