| メルセデス・ベンツは徐々に、しかし大きく方針を転換し「変化の速度は消費者に任せる」ように |
現実問題として、それほど顧客のEV離れは深刻なのかもしれない
さて、メルセデス・ベンツはかつてラインアップをすべてEVへと転換するという方針を強く推進しており、そのためにガソリンエンジンの開発を停止し、ガソリン車の生産ラインをEV向けに転換したうえ、(ガソリン車の生産を担当していた)従業員の一部を解雇したと伝えられるほど。
しかし直近ではEV需要の減退を受け、その方針を撤回するという声明を出していて(他の多くの自動車メーカー同様に)、同時にハイブリッドとPHEVに注力するという新しい戦略を打ち出しています。
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メルセデス・ベンツが「EV集中」戦略を転換し2030年以降もガソリン車を作り続けるとコメント。「2030年であっても、EV / PHEVの販売比率は50%にとどまるだろう」
| もはやEVの販売減速、ガソリン車の存続は誰の目にも明らかに | 今後さらに多くの自動車メーカーがメルセデス・ベンツ同様に「方針転換」を行うものと思われる さて、昨今は「EV離れ」「ハイブリッド / ...
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メルセデス・ベンツは顧客に対しても「EVを無理強いしない」
そして今回報じられているのが、メルセデス・ベンツCEO、オラ・ケレニウス氏が語った「バッテリー式電気自動車を米国の消費者に押し付けようとするのをやめ、パワートレイン戦略をより柔軟にして、どのような種類の自動車を購入すべきかを市場の判断に任せる」という新しい方針。
メルセデス・ベンツはシュツットガルト(本社)にて開催した北米のディーラー向けの3日間のイベントにおいて、「今年は内燃機関車とハイブリッド車の選択肢を増やす計画を持っており、2024年にはEV販売の割合が劇的に増加するとは予想していない」という談話を発表したばかり。
さらに米国のディーラーは、メルセデス・ベンツが今後、顧客にどのような種類のクルマを購入すべきかを指示しなくても良いと伝えられたといい、簡単に言えば「これまでのように顧客に電気自動車を勧めず、ガソリン車でもハイブリッド車であっても、顧客に自由に選ばせる」。
このイベントに参加したディーラーは「米国の消費者は何を買えばよいか指示されることを望んでいない。彼らは選択肢を求めているのだ」とも語っており、今回の方針変更は意外な、しかし大きな変化だとも考えられ、今後「電気自動車の購入を勧められなくなった」消費者がどういった行動の変化を起こすのか、そしてその結果としてのEV販売台数やその比率の変化には注目したいところです。
メルセデス・ベンツディーラー取締役会長、そしてベンゼル・ブッシュ・モーター・カー・グループ社長という肩書を持つジョセフ・アグレスタ・ジュニア氏は「すべてのディーラー団体は電動化への移行と、それが消費者のペースに適合するかどうかに関心を持っています。BEVに対する顧客の需要がある程度横ばいになっているのを私たちは皆知っています。 したがって、自動車メーカーは顧客が望むパワートレインを持たなければなりません」と述べており、現在のEV販売ペースの成長鈍化は「現場でもひしひしと感じられるもの」ということになりそうですね。
メルセデス・ベンツは今年、25のニューモデル(フェイスリフト含む)をアメリカのショールームに持ち込む予定だとされ、今年は2023年より約5万台多いクーペ、セダン、クロスオーバー、SUVの販売を見込んでいます。
主要な新製品はプラグインハイブリッドバージョンで、もっとも期待されるのは人気のSUV「GLC」、そして新しい電動パワートレーンを持つCLA、フェイスリフトがなされるSクラスとGLE、C クラス、そして直近でフェイスリフトを受けたGLA、GLB、GLCなど。
さらにこのイベント中、メルセデス・ベンツの最高経営責任者オラ・ケレニウス氏は”メルセデス・ベンツは販売台数を追うことに興味はなく、値下げもしない”と語ったと伝えられ、その代わりに「販売価格(値下げや廉価モデルの投入が含まれるのだと思われる)を下げるのではなく、消費者に対し、金額に見合ったより多くの価値を提供する」とも述べており、ここから様々な「目に見える形での」変化を目撃することになりそうですね。
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