| そうなれば一部モデルは「地理的に近い」日本にも輸入されることになるのかも |
ただし現地でのプレゼンス強化を考慮すると、まずは中国で求められるEVの生産を行う可能性が高いだろう
さて、ここ数日中国界隈のメディアを賑わせているのが「レクサスが中国に工場を建設し、中国にて製造を行う」というニュース。
起点となったのは7月23日に36krによる「レクサスが中国で自動車生産を開始する予定で、生産開始は2026年を」というもので(現在該当の記事は削除済み)、しかしレクサスはこれに対して「”当面は”国内生産の計画はない」という公式見解を出しています。
当初報じられた内容だと、レクサスの計画は、上海に完全所有の工場を置き、UX(ハイブリッド)と新型電気自動車を生産するというもので、この新型電気自動車は今年の北京モーターショーで発表された2台の新しいコンセプトカー、LF-ZCとLF-ZLのいずれかの生産バージョンになると言われていたわけですね。
しかしそこにはいくつかの矛盾も
ただ、この報道と推測にはやや違和感があり、というのも中国でUXのハイブリッドモデルを生産したとしても、中国では(通常の)ハイブリッドモデルはNEV=新エネルギー車の対象とならずに優遇措置を受けることができず、つまり市場規模が小さく(買う人が少ない)、わざわざ中国で生産する必要性が感じられないため(ただしこれを中国外へと輸出するというのであれば話は別である)。
そしてLF-ZCとLF-ZLについて、これらは完全なるコンセプトカーであるため、今から2026年までという短いタームではとうてい生産に移すことができないと考えられます。※これらはたしかに2026年発売予定とはアナウンスされていたが、昨今の情勢を考えるとプロジェクトが後回しにされている可能性が高い
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参考までに、今回の報道の発端は「トヨタが中国政府に対し、レクサスの工場を建設するため、税制優遇、政策支援、土地の無償提供、現地の合弁パートナーを必要とせずに直接運営できる条件など、テスラと同様の待遇を求めている」とされた6月29日の報道にあるのだと思われます(これは中国国外のメディアから発信されている)。
そしてもうひとつ参考までに、(現在は緩和されているが)中国にて工場を作って自動車の生産を行い販売する場合、基本的には中国の企業との合弁会社を設立する必要があり、これを逃れて「自社資本100%」にて工場を建設することは非常に困難だとされていて、おそらく、現時点で唯一の例外はテスラのみ(テスラのギガ上海はテスラの完全自己資本工場である)。
なお、この中国国外のメディアは「たしかに上海政府とトヨタとは連絡を取っているが、レクサスの完全自己所有工場建設計画が実行可能かどうかはまだ不確定要素が多い」という補足を行っており、現時点では「まだ何とも」という感じですね。
トヨタはすでにレクサスの現地生産を行う段階に差し掛かっている
参考までに、日産(インフィニティ)とホンダ(アキュラ)の両ブランドは2013年に中国で合弁会社を設立して現地生産を開始しており、その反面レクサスは「販売台数が一定数に達したら現地生産を検討する」と何度も述べてきたものの、いまだ現地生産は行われておらず、しかし中国の消費者にとっては「日本製だからこそ」価値があるのかもしれません。※レクサスは日本以外だとカナダ(RX、NX)、アメリカ(ES、TX)でしか生産されていない
その意味では、中国生産となったレクサスが競争力を維持できるかどうかは不明ではあるものの、中国乗用車協会の崔東樹事務局長によれば「中国市場での競争力を考えると、レクサスが中国にEV製造工場を建設することは間違いなく有利になる」。
実際のところ、もし中国生産が実現すれば、現地調達部品の使用率は95%にも達すると報じられているので、トヨタが劇的に収益を改善する事ができる可能性が高く、かつ中国内で安価に販売することも可能になるため、今よりも高い競争力を発揮する可能性も考えられます(ただし中国の人々は安価なレクサスを求めてはいないだろうが、輸出に際しては仕様地での競争力がぐっと上がる)。
現実問題として、レクサスの(中国・香港での)販売台数は年々減少の一途をたどっていて、2019年の20万2000台から2023年では18万1400台へと縮小し、これは電動化が進む中国市場において、レクサスが競争力のあるEVを持たないからだとも報じられています。
その意味では、レクサスが今後中国に工場を建設し、現在トヨタブランドにて販売しているEVのレクサスバージョンを「中国専売モデル」として販売した場合、その市場シェアを大きく回復させることができる可能性も考えられ、諸々考え合わせたとしても、むしろ「トヨタが中国にレクサス工場を建設しない理由はない」のかもしれませんね。
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