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ステランティスCEO「我々はこれから直面するであろう、中国製の安価なEVとの戦争に備えねばならない」。一般に中国では欧州より140万円、もしくは40%ほどEVを安く製造できるようだ

2023/01/14

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| 正直生産コストではどうやっても欧州製EVは中国製EVに勝てないと思う |

関税によって中国製EVの輸入を抑さえねば欧州の自動車産業は壊滅状態となる可能性も

さて、ステランティスCEO、カルロス・タバレス氏はこれまでにも様々な歯に衣着せぬ発言を行うことで知られていますが、今回は「我々欧州の自動車メーカーは、これからやってくるであろう、中国産EVとの恐ろしい戦いに備えねばならない」。

同氏によると、中国製EVは欧州製EVに比較して遥かにコストが安く、そういったEVが欧州に入ってくれば欧州産EVの多くは(特に普及価格帯において)駆逐されてしまい、競争力すら発揮できないだろうとコメントしています。

なお、同氏は以前にも同様の発言を行っていて、「我々欧州の自動車メーカーが、中国にて課せられたのと同じ規制を(欧州に入る中国車に対して)行わなければ公平ではなく、EUには強い姿勢で臨んでもらいたい」と主張したことも。

中国製EVは欧州製EVに比較して製造コストが著しく安い

最近Hellaを買収した自動車サプライヤー、Forvia社によると、中国の自動車メーカーによるEVは通常、ヨーロッパのブランドよりも1万ユーロ(約141万円)ほど安くEVを製造できるとコメント。

この数字がどのセグメントのEVに相当するのかはわからないものの、欧州製EVと同じセグメントであればそのぶん安価に販売できたり、欧州製EVと同じ価格で販売するためにバッテリーを追加してコストパフォーマンスを引き上げることも可能となるため、カルロス・タバレスCEOの言うとおりに「とんでもなくタフ」な戦いとなるのは間違いないものと思われます。

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さらに同氏は「欧州の規制により、欧州で製造された電気自動車は、中国製の同等の自動車よりも約40%割高になっています。欧州連合(EU)が現状を変えなければ、この地域の自動車産業は、欧州の太陽光パネル産業と同じ運命をたどることになるでしょう。このシナリオは以前にも繰り返された、とても暗いシナリオです。しかし今ならまだ手を打てる」とも。

なお、カルロス・タバレス氏は中国のSAIC、BYD、Geelyのような中国企業に反撃するための解決策を持っているとも述べており、「失われた生産能力を取り戻し、ヨーロッパを再工業化すれば、コストが下がり、中国製に対してより競争力のある価格の車ができるだろう」とコメントしたほか、欧州の自動車生産を保護するための貿易政策も有効な解決策になると考えているようですが、こういった対抗策を講じることができない場合は”不本意ながら”安い労働力を持つ生産地へと工場を移転する必要があると語っています。

どうやっても普及価格帯のEVは中国車に支配されてしまう可能性が高い

ただ、他の場所へと工場を移すのは時間がかかるので、その間に中国の自動車メーカーが世界を支配してしまう可能性も十分考えられ、仮に工場移転を成功させたとしても中国よりも安価なEVを製造できるとは限らず(品質による基準などが中国メーカーと欧州メーカーとでは違いすぎるので、欧州の自動車はどうやってもコストが高くなる)、よって普及価格帯の車両を製造しているステランティス、フォルクスワーゲン、トヨタ、ホンダなどは今後中国の自動車メーカーに対して競争力を発揮できなくなる可能性も。

それは現時点で様々な工業製品の多くが中国製となっていることを見れば明らかなのかもしれず、たしかに自動車のように「命を乗せて走る」製品は家電や玩具、衣類とは異なるものの、この分野において中国の自動車メーカーは合弁を通じて力をつけており、カルロス・タバレス氏の言うように「貿易政策」がまだ有用なのかもしれません。

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なお、この貿易政策とは高い安全基準を課したり関税を課すことで品質の低い製品が入ってきたり、国内の産業を脅かす存在をシャットアウトするということになりますが、現在米国では(貿易戦争の一環として)中国車に高い関税を課しており、これによってフォードやGMはもちろん、テスラなど国内で生産を行う自動車メーカーを保護しているわけですね。

そしてもしEUが何ら手を打たなければ、自動車産業の海外流出が発生してEU内では失業者が多く発生する上に税収も減り、なんらいいことはないため、やはりEU内で欧州産EVの競争力を維持できるように関税をかけるのがいいんじゃないかとは思います(それでも、欧州以外の市場では中国製品に勝てないことは変わりはなく、いずれにせよ自動車産業は今後大きな転換期を迎えるであろう)。

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参照:Automotive News Europe

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