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中国よりガルウイング採用セダン「イーパイ 007」登場。マクラーレンっぽい可倒式メーターも装備、一見意味不明なクルマだが、ボクらはこれを笑うことはできないだろう

中国よりガルウイング採用の「イーパイ 007」登場。マクラーレンっぽい可倒式メーターも装備、ジャンルを超越したクルマだが、ボクらはこれを笑うことはできないだろう

| なぜならば中国の自動車市場は「自動車における意味」を求めていない |

そして市場原理は日米欧とは全く異なる心理で動いている

さて、中国の東風汽車が展開する電気自動車ブランド、イーパイ(eπ)がなんとガルウイングドア(正確にはディヘドラルドア)を持つ4ドアサルーン「007」を発表し受注を開始。

EV版とレンジエクステンダー付きのEREV版とがラインアップされ、価格は159,000元(約320万円くらい)からというバーゲンプライスで、この価格でこういったクルマが出てくると「外国の自動車メーカーのEVが売れなくなる」というのもよくわかります。

イーパイ 007はこんなクルマ

このイーパイ 007は「売れる」要素を詰め込んだクルマといえますが、名称自体も中国で人気のある「数字」とくに「7」を用いています(Zeekerも007というセダンを発表している)。※中国ではアメリカを仮想敵国としている反面、英国に対する憧憬が強いと聞いたことがあり、”007”を好むのはジェームズ・ボンド映画の影響なのかもしれない

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さらにはツルとした外観、切れ長のヘッドライト、クーペ風フォルム、フレームレスドア、フラッシュマウントドアハンドル、前後ランプのLEDアニメーションといった「人気アイテム」を詰め込んでおり、このイーパイはかなりマーケティングに長けた会社だとも考えられます(しかもホイールはスポーティな5本ダブルスポーク、ブレーキキャリパーはレッドである)。

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ボディサイズは全長4,880ミリ、全幅1,895ミリ、全高1,460ミリ、ホイールベースは2,915ミリという堂々たるサイズを持ち、最大の目玉は(オプションではあるものの)やはり上述のディヘドラルドア。

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イーパイ 007のインテリアはこうなっている

そしてこちらはイーパイ 007のインテリアで、やはり中国で好まれる「非物理ボタンを中心としたクリーンなデザイン」を持っており、しかし(コストや車体強度の関係なのか)中国で非常に好まれる、フロントグラスとのシームレスなグラストップが装備されていないもよう。

ただしフラットボトムデザインを採用したダブルスポークステアリングホイールに加え、クアルコム製スナップドラゴン8115チップを搭載した15.6インチディスプレイといった「ツボ」はしっかり抑えています。

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なお、こういったセダンにフラットボトムステアリングホイールはあまり意味がないかもしれませんが、これもディヘドラルドアやレッドキャリパー同様に「カッコいいから」という理由にて採用されたものだと思われ、つまり中国の自動車メーカーには「スポーツカーはこうあるべき」「セダンはこうあるべき」といった固定概念がなく、そしてそれらの垣根もないのだと思われます。

これがまた中国自動車市場の特殊性であり、そういったクルマを作れることが中国自動車メーカーの強みだとも考えられますが、日米欧の自動車メーカーはこのあたり中国に合わせないと(中国市場での)生き残りが難しくなってくるのかもしれません。

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そしてちょっと面白いのはこの「回転式」ディスプレイ。

ベントレーのローテーションディスプレイとは異なり、むしろマクラーレン720Sに採用されていた「可倒式」に近く、この8.8インチLEDメーターがパタっと閉じ・・・。

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パフォーマンス重視の表示に切り替わるというもの。

マクラーレンが720Sに可倒式ディスプレイを採用したのは(スポーツカーにとって重要な)視界の確保、そしてサーキット走行中に必要な情報だけを視覚的・直感的に伝えるという理由からですが、これもまたセダンには不要なものであり、しかし日米欧の自動車メーカーからすると「なぜこんなモノが要るんだ・・・」という装備こそが中国市場で必要とされるのかもしれません(過去に”最も不要なものこそが、最も必要なものである”と言った偉人がいた)。

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そのほか8点マッサージシート、フレグランスシステム、64色のアンビエント照明、20スピーカーオーディオシステム、50Wワイヤレス充電、顔認識カーエントリーも装備され、安全面だと31個のセンサーによる先進運転支援システム「erπ PILOT」を全車に搭載し、メモリーパーキング、リモコンパーキング、交通標識認識や前方衝突などの高速2地点間支援運転をサポート 警告、レーンキープアシストなどに対応します。

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駆動方式は後輪駆動もしくは全輪駆動となり、後輪駆動モデルだと航続可能距離は530kmと620km、全輪駆動モデルだと航続可能距離は540kmで、バッテリーを30%から80%にまで充電するのにかかる時間は約26分。

レンジエクステンダー付きモデルだと航続距離が1,200kmにまで伸長され、かなり実用的なクルマだと言っていいかもしれません。

なお、この「レンジエクステンダー」は最近発表される中国車において(PHEVとともに)よく見られるもので、これについても「レンジエクステンダーなし」が多い欧米のEVが対抗しにくいところだと思われ、このイーパイ 007は急速に変化する中国の自動車市場、そして中国車を示す格好の例だとも思います(笑い飛ばすことは簡単だが、おそらく日米欧の自動車メーカーはこういったクルマに泣かされることになりそう)。

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参照:CarNewsChina, Yipai

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