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【試乗】「ビューティフルモンスター」新型カムリ。和製セダンの基準を大きく超えた「世界標準」に驚く

2017/07/19

さて話題のトヨタ・カムリ。
信じられないかもしれませんが(ぼく自身でも信じがたい)、ぼくは一時期カムリを所有していたことがあり、これでもカムリには一家言あるわけですね。
今回のカムリは北米モデルと共通となり、日本専用の「マークX」「SAI」を吸収する形での登場で、「(セリカ時代から数えると)10代目」となります。

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日本における新型カムリのグレードは「X(3,294,000円〜)」、「G(3,499,200円〜)」、「G”レザーパッケージ”(4,195,800円〜)」の三つ。
エンジンはいずれも直4/2.5リッター178馬力。
それぞれ120馬力のモーターと組み合わせられるハイブリッドとなり、駆動方式は全てFFです。

ドライブトレーンはいずれも同じながら、燃費については「X」が燃費がリッターあたり33.4キロ、Gはリッターあたり28.4キロ。
この差はタイヤサイズ、重量などの相違によるものだそうで、つまり「X」は燃費重視モデルということになり、自動車メーカー各社がよく用意する「広告塔」のようなグレードなのでしょうね。

ちなみにカムリは15年連続で北米における乗用車販売ナンバーワンで、もちろん新型カムリもこの記録を更新させるという使命を持って登場したもの。
よってトヨタの威信をかけたセダンと言ってよく、日本市場を飛び越えて「世界を」見据えたセダン、と認識すべき車ですね。

実際に再量販グレードとなるのは装備の充実した「G」と思われ、ディーラーさんの用意してくれた試乗車もそのまま「G」グレード。
なお新型カムリの期待は相当に高く、かなりな数のお客さんがディーラーに訪れている模様。
すでに納車待ちが生じており、今注文すると納車は大体12月頃となるようです。

まずは外観のチェックですが、これは「クーペスタイル」のセダンで、最近の一つの流行。
トヨタはこの形状に凝っていると見え、新型レクサスLSもやはりクーペ風のなだらかなラインを持っていますね(加えて2018年モデルのホンダ・アコードも同様のスタイルを持っている)。

フロントグリルは大きく迫力があり、鋭い眼光を放つLEDヘッドランプの形状もスタイリッシュ。
フロントグリルや、ボンネットとその下のトヨタマークがあるパーツも「水平基調」となり「ロー&ワイド」に見えるデザインですね。

ボディサイズは4885×1840×1445ミリ。
けっこう大きなサイズと言えますが、見た目は比較的スリムかつスポーティーに見え、オッサン臭さを感じさせないのも良いと思います。

さて室内に乗り込み全体を見渡して見ると、C-HRでも採用されていたダッシュボード上のステッチなど「高級感」に配慮したであろうことが一目でわかる作りであることがわかります。
なおセンターコンソールには宝石の「タイガーアイ」を模したパネルが用いられ、これは触った感じも独特なもの。

ブレーキペダルを踏んでスタートボタンを1秒以上押すとシステムが起動し、オプティトロン二眼メーターの間にある液晶ディスプレイには空港の滑走路のようがグラフィックが登場し、スポーティーな走りを予感させる演出が。

なおスイッチ類は「あえて」アナログを残したとされ、これは「年配ユーザーへの配慮」とのこと。
確かに未来に「行きすぎた」内装は混乱を与えるだけですし、BMWもかつては内装が先進的になりすぎてユーザーがそれに対応できず、やむなく「元に戻した」経緯も。
そういった例を考えると内装の仕様とユーザー層とのマッチングは重要で、その点カムリは「よく考えている」と言えそうです。

シートやミラー類を合わせていざスタートですが、滑り出しはけっこう軽やか。
ディーラーから道路に出る段差においてもほとんど衝撃を感じさせずに走り出し、足回りのしなやかさも体感できます。
ドライブモードは「エコ/ノーマル/スポーツ」とあり、まずは「ノーマル」での走行を試すことに。
システム合計だと300馬力近い出力があるのでまず不満などあろうはずもなく、バイパスに合流したり流れに乗ったり、上り坂でもストレスのない走行ができます。

なおドライブモードを「スポーツ」に入れるとエンジンレスポンスとパワー感が増し(モーターは出力の調整がしやすく、モードの変更によるフィーリングの差異を出しやすいと思われる)、「エコ」に入れるとそのぶんレスポンスが緩やかに(そのぶん燃費を稼げる)。

メーターの左側は「ハイブリッドシステムインジケーター」で、現在のシステムの状態を表し、メーター内のインジケーターによって「エンジン+モーターでの走行」か、「モーターのみ」での走行かがわかるように。
これを見る限りでは、かなり「バッテリーのみ」で走行している時間や状況が多く、燃費はかなりいいんじゃないか、と思われます。



特筆すべきは静粛性と衝撃吸収性で、ディーラーさんがあえて舗装が荒れている道路(ロードノイズが大きい)、そしてマンホールの出っ張りがあるような試乗ルートを指定していたものの、ほぼ衝撃や騒音はなく、これはちょっと驚いてもいい部分(その道路は普段ぼくも走るところなので、車にどういった負担をかけるかは理解している)。

これについてはやはりプリウス、C-HRに続く新プラットフォーム「TNGA」の影響が大きいと思われ、改めてTNGAの素性の良さを感じるところ(サスペンション形式はフロント:マクファーソンストラット、リア:ダブルウィッシュボーン)。

そしてやはりディーラーさんの厚意にて高速走行を行わせてもらいますが、その安定性についても再度驚くことに。
カムリはFFレイアウトですが、ハイブリッド用のバッテリーはリアアクスル付近に、そして通常の12Vバッテリーも車体後部に設置され、前後重量配分を最適化。
加えてアンダーカバーを装備することでエアロダイナミクスを向上させており、こういった設計思想がこの「日本車らしからぬ」安定性を生んでいるようですね。

なお、「FF」に絞ったことでセンタートンネルを廃止することができ、これによって静粛性の向上(フロア下をプロペラシャフトが通らないので)、居住空間の最大化を実現できており、実際に功績に座って見るとその広さにもびっくり。

さらには「運転しやすさ」にもかなりの配慮を行なっているようで、フロントサイドウインドウの下部が低くなっており(普通の車は横一直線)、サイドウインドウのグラフィックは横から見ると「横長の六角形」に見えますが、これによって横方向の視界が拡大し、特に左折時には死角が大きく減ることになります。
加えてサイドミラーはドアスキンマウントとなり、これもまた良好な視界を確保しているところでもありますね。

こちらはマークX。
サイドウインドウの下部が一直線であることがわかります。

しばらく走行してみてわかったのは、ノイズ、バイブレーション、ハーシュネスが極めて低いこと、サスペンションがしなやかであり、しかしロールは少ないこと、高速走行安定性に優れること、加速性能に優れること、ピッチングが少ないこと(加速/減速において)。

反面ちょっと気になったのは「アンダーステア」で、これはぼくの思い描くラインを10%ほど外れて大きく曲がる模様。
この直前にプログレッシブ・ステアリング(可変ステアリング。切れ角が増すほどタイヤの切れる度合いも比例して大きくなる)を採用するフェイスリフト後のゴルフGTI/ゴルフRに立て続けに乗ったこともありますが、ここだけが違和感を感じる部分。

ただし車のサイズやホイールベース(2825ミリ)を考えるとこれは「ゴルフ同様」にゆかないのは当然で、ある程度のスキルを持つドライバーを対象としたゴルフGTI/ゴルフRと比較することはできず、また「基本的にファミリーセダン」ということを考えると「これくらいのアンダーステア」セッティングで当然とも言えます(オーバーに転じてスピンすると立て直せない)。
よってこのアンダーステアはフェイルセーフとも捉えるべきもので、車の性格を考えると十分に納得できるもの。

これが気になるのであればTRDの用意する19インチホイール/タイヤへの交換を行う、のちにサードパーティーが発売するであろうスポーツサスペンションへと交換すればまず問題はなさそう(気持ちフロントを下げ気味で)。

安全性についてもファミリーセダンとしては申し分なく、プリクラッシュセーフティシステム、レーダークルーズコントロール、オートマチックハイビーム、レーンデパーチャーアラートを核とする「トヨタセーフティセンス」の装備、オプションとしても「ブラインドスポットモニター」、「リヤクロストラフィックアラート」等を用意しており、第1級のポテンシャルを持つセダン、と言えそうです。

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