イキナリですがアウディTT(8S)を購入。※画像は試乗車。ぼくの車の納車はもうちょっと先
ぼくにとっては8Jに続き二台目のTTですが、特にTTがさほど好きではない割に2台目を購入するとは、と自分でもちょっとびっくり。
グレードは「2.0 TFSI Quattro」、Sラインパッケージ付き。
結局のところロードスターでもなくTTSでもなく「普通の2リッタークーペ」で、これは価格が主な理由。
TTSになると走行性能が向上し装備は充実するものの、相当な金額となってしまい(768万円)、「そこまでの金額をTTに突っ込むことはできない(であれば他の車の購入を考える)」、と考えたわけですね。
なお「他の車」とは具体的にポルシェ718になりますが、現在のぼくの使用状況を考えると、718ボクスター/ケイマンは「非常にもったいない」使い方になってしまうと考えており、したがって「ほどほどの価格で、それなりの性能と先進性、スタイリッシュさを持つ」TTという選択に(妥協したわけではなく、用途と目的にあわせて選んだ結果)。
購入時に迷ったのはポルシェ718ケイマン/ボクスター、レンジローバー・イヴォーク、レクサスNX、メルセデス・ベンツGLA、フォルクスワーゲン・ゴルフR、ポルシェ・マカン、ミニ・クロスオーバー。
これらの中でアウディTTを選んだのは「サイズがある程度コンパクトで、ステータス性も高く、明るいボディカラーがあり、4WD、そしてそんなに高くない」という条件を満たすのがTTしかなかった、ということも大きな理由。
いずれの条件も「絶対」ではなかったものの、他の車は「満たせない条件をカバーできるだけのアドバンテージ」が十分ではなく、そして「全てを満たす」のはTTのみ。
ぼくはアウディに対し、「突出した何かがあるわけではないものの、全てのベクトルにおいて高スコアを記録する、秀才のような存在」だと考えています。
「欠点もあるけれどそれを補って余りある魅力を持つ」というタイプではない、ということですね(たとえばランボルギーニは、日常性が劣るものの、”そんなことはどうでもいい”と思わせる強烈な魅力がある)。
ぼくが購入したTTについて、ざっとその仕様は下記の通り。
(オプション)
ベガスイエロー 85,000円
内装:ブラック/ロックグレー 0円
マトリクスLEDヘッドライト 140,000円
アシスタンスパッケージ・アドバンスト 350,000円
S lineパッケージ 470,000円
合計6,935,000円
車両サイズは全長4180ミリ、全幅1830ミリ、全高1380ミリ。
燃費はリッターあたり14.7キロ、という数字。
かなりコンパクトで、そして燃費も比較的良好な数値だと言って良いでしょう。
エンジンは2Lターボで230馬力(8JTTの2リッターでは211馬力)、駆動方式はもちろん4WD、トランスミッションは6速Sトロニックで0-100キロ加速は5.3秒(ポルシェ981ボクスターは5.7秒、300馬力の718ボクスターは5.1秒)、というスペックです。
なおアウディTT(8S)はゴルフ7と同じ「MQBプラットフォーム」を採用。
ただ、完全に同じなわけではなく、アルミやカーボン、マグネシウムの使用の有無、その範囲が異なるものと思われます。
なお、MQBプラットフォームを使用したために8STTのシャシーは「スチールが基本」。
これまで(そして最近)のアウディというと「アルミフレーム」が有名でしたが、現在のアウディはいくつかのモデルで「スチール」へ回帰している、というのはちょっと驚きですね。
これは上述のMQBプラットフォーム採用というところが大きく、これによってフォルクスワーゲン・アウディグループの多くの(とくに販売台数が多い)モデルでエンジンやトランスミッションのレイアウトを共通化出来るようになったため、実に「エンジンとトランスミッション、そして周辺パーツ」あわせて90%もパーツを削減できたと言われます。
要は「それだけ利益が出るように」なっていると思われますが、その全てを会社が貯め込むのではなく、一部は車両の装備等として還元されており、そのために最近のVWアウディの車は急激に「コストパッフォーマンス」が上昇している模様。
これは販売台数の多いVWアウディだからこそ実現できたことだと考えていて、そういった意味でも、ぼくはVWアウディの車について高く評価しています。
さらには同じグループのポルシェ、ベントレー、ランボルギーニ、(乗ったことはないけれど)ブガッティも同様で、普及価格帯の車は上級ブランドからの技術的フィードバックを受けることができ(VWやアウディの静粛性の高さはベントレーと似ている)、上級ブランドは大量に数を販売するVW/アウディの仕入力を活かして(同じグレードのパーツであっても他メーカーより)低コストで部品を調達でき、とくに少量生産ブランドであれば、これは大きく影響してきます。※ぼくは車をエモーショナルな点からというよりも工業製品として捉える傾向が強い模様
なおTTの場合は同じMQBプラットフォームでも「サイドシルから上」とボディ外板がアルミ製となっていますが、スチールを基本骨格に持つといえども先代(8J)に比較して最大50キロの軽量化を果たしている、とされています(さらに重心も下がっているかも。アウディの言う「Audiライトウエイトテクノロジー」の恩恵)。
MQBプラットフォームの採用はコストダウンの意図も大きいとは思われますが、ちゃんと機能的な理由もある、ということですね。
先代アウディTTではラインアップ中で珍しくMMIを採用していないなどの「遅れ」もありましたが、そのぶん8STTは他モデルに先駆けて「バーチャルコクピット」を採用するなど先進性をアピールしているのもトピック。
コネクティビティも強化され、専用オペレーターがレストランやホテルを予約してくれるAudi connect Navigator、Wi-Fiスポット提供、オンライン施設&交通情報検索、最安ガソリンスタンド検索、天気やオンラインニュースの表示などインターネット常時接続が可能としたサービスも売り物ですが、これは例えばポルシェだとオプション扱いとなるもの。
その他法定点検やオイルなど消耗品の交換が3年間無料になる「Audi Freeway Plan」が無償で付帯されるのもアウディの特徴で、そのためこれらがない車に比べると、たとえ車両本体価格が同じであっても、アウディは「数十万円は割安」だと考えることができます。
8STTの4WDモデルに採用される駆動方式はアウディ得意の「クワトロ」で、これは「ハルデックス5」を使用したもの。
縦置きエンジンモデルに採用されるセンターデフ搭載のクワトロとはシステム構成が異なり、電子制御式マルチプレートクラッチ採用が特徴(youtubeで再生すると、関連動画としてゴルフ7に採用される4MOTIONなど、同じハルデックス5の動画も出てくる)。
なお、こちらが「縦置き」エンジンモデルに採用されるクワトロシステム(トルセン式)。
こちらのほうが本家で性能が高いとする向きもありますが、現在においては「両者においてさほど差はないんじゃないか」というのが実際に両方とも運転してみた印象です。
https://www.youtube.com/watch?v=MjaCbpw84kw
8STTの外装を見てみると、これまでのTTのような丸みを帯びたルックスからシャープなデザインへ。
特にフロントはヘッドライトが薄くなり、他のアウディラインアップとの共通性が高くなり、TTならではの独自性が薄れたようにも思います(そのため、ホワイトなど他のアウディに多いボディカラーを持つTTだと、一瞬TTだとわからないことも。しかしそれも狙いかもしれない)。
反面、フューエルリッドには初代に採用されたものの二代目TTでは「アルミルックの樹脂」へと変更されたものが、三代目TTでは再び「本物のアルミ」へと復帰。
のちに述べますが、内装でも同じように初代同様「本物のアルミパーツ」が使用されたりと実のところ「TTらしさ」は二代目よりも「濃く」なっているのかもしれません。
内装においては「コクピット」的イメージが強化され、ランボルギーニ・ウラカンと同じ「バーチャルコクピット」が採用に。
エアコン操作部もR8とよく似た意匠となり、エアコン吹き出し口の中に温度等の表示がある「デラックスオートマティックエアコンディショナー」装備など、他モデルとの相違、そして反対にR8との共通性を高めることで「アウディにおけるスポーツカー」としての独立性を示しているように思います。
着座位置は低く、反対にダッシュボードやセンターコンソールは高く、かなり「囲まれ感」の強い内装となっており、この辺り逆に「他のアウディラインアップと共通性の高かった」内装を持つ8JTTとは対照的。
ここはアウディが意図的に「スポーツカー」としての演出を考慮したものと思われ、ジャガーFタイプとまではゆかなくとも、「かなり雰囲気の出ている」インテリアと言えそうですね。
こういったところを見ても、やはり8STTは「TTらしさ」を新しい方向性で示してきた、と考えていますが、こういった「新しい方法」を採用したことについて、「初代TTの頃には存在しなかった」R8の存在が大きいのかもしれません。
「R8との共通性を持たせること」が8STTにおいてはかなり重要視されているように思われ、「R8とTTをセットで」今後アウディのスポーツカーレンジとして認識させようというブランディング上の戦略であるようにも感じている、ということです。
というのもフォーリングスがグリルではなくフロントフード上にある」のはR8とTTのみ。
現在R8はアウディにおけるフラッグシップとも言える存在ですが、そのフラッグシップを「TTに近づける」のはヒエラルキー上難しく、よってTTをR8に近づける必要があり、そのために8STTでは「初代」からデザインイメージが離れて行き、R8に寄せられたのでしょうね。
とにかく「R8とTTは他ラインアップとは異なる」とアウディが認識しているのは間違いなさそうで、その意味でもTTは特別感がある、とは認識しています。
今回ボディカラーに「ベガスイエロー」を選んだのは、単にぼくが「黄色好き」だから。
イエローが似合う車はそう多くはなく、イエローが似合うのであればイエローを選ぶべきだとぼくは考えており、加えてTTにおいてイエローはこれまで限定車にしか用意されなかったカラーで、プレミアム性も高い(売る時は苦労しそうですが)と考えています。
今回のTTが納車されると、ぼくが今までに乗ってきた車の中で「黄色」が最多ボディカラーとなりますが、それだけこの色は「自分らしい」とも考えています。
なお、オプション装着のマトリクスヘッドライトの動作はこんな感じ。
先行車や対向車のいないところは明るく、そうでないところはライトの照射を抑えて他ドライバーへの配慮を行いつつも最大限の視界を確保。
なお、これを装着するとフロントのウインカーが「ダイナミックインジケーター(シーケンシャルウインカー)」となります。
他のオプションとしては「S lineパッケージ」。
フロントバンパー形状が標準モデルとは異なり左右に大きく張り出したエアインテークが特徴となりますが、ラジエターグリルがハイグロスブラックとなり、サイドステップは大きく張り出し、リアディフューザーの形状とカラーも専用に。
内装だとアルカンタラ/レザー仕上げのスポーツシート、アルミ製ペダル、その他アルミトリムなどが付与。
他はサスペンションが「スポーツサス」に、ホイールが専用の「10Vスポークデザイン」へ変更されるなどの(標準モデルとの)相違があります。
かなり高価なオプションですが「見栄えがよく」、そのために目に見てわかるという満足感があり、おそらく「売る時」も多少は還元されるだろう、という目論見も。
同じくオプションの「アシスタンスパッケージ・アドバンスト」はパークアシスト、アクティブレーンアシスト、ブラインドスポットモニターなどがセットになり安心感が増しますが、これの価格はかなり高価だとは考えています(国産車だと標準装備となりつつあるが、一回事故を起こすとこれくらいに金額が”飛んでゆく”ので保険的意味合いから装着)。
その他スペックは下記の通り。
なお「初代TT(8N、1998年)」のデザインは「ペーター・シュライヤー」氏(2006には韓国のキアへ移り、現在はキアの社長、ヒュンダイの最高デザイン責任者を兼ねている)率いるチームによるもので、実際のデザイナーはフリーマン・トーマス氏、とされています。
同時期に発表されたアウディの超絶コンセプトカー「ローゼマイヤー」も初代TT風のデザインを持ち、アウディはこの頃からTTに与えられたデザインは特別視していて、なんらかの手法で”ブランド化”を考えていたこともわかりますね。
初代TTの内外装には他のアウディとの共通パーツや共通性がほぼ無く、(A2とともに)「鬼っ子」のような存在と言えるかもしれません。
当時はまだ珍しい「ターボ四駆」ということで機能的、そしてもちろんデザイン的にも注目を集めた車でもありますね。
なお、(エンツォ・フェラーリなどのデザインで有名な)ケン・オクヤマ氏の著書「ムーンショット デザイン幸福論」によると、ケン・オクヤマ氏がポルシェに在籍していた頃に件のフリーマン・トーマス氏と一緒に仕事をしており、その頃フリーマン・トーマス氏は「新しいポルシェ」として(ポルシェ上層部に)TTの原型を考案。
しかしポルシェからそのデザインを却下され、しかし諦めきれずに自分でクレイモデルを作った、としています。
なお会社で却下された以上は職場でその作業はできず、従って自宅のキッチンのオーブンを使い粘土を加熱したりしてクレイモデルを完成。
そのためこの車は「キッチンカー」と呼ばれたそうですが、後に彼がアウディに移籍して緊急プロジェクトに招集された時にこの「キッチンカー」を提案し、その場でピエヒ会長に「これだよ、これ」ということで一発採用になり、15年かけて「TTクーペ」として市販されることになった、とのこと。
かつ、上述のように「ローゼマイヤー」でも過去の車と初代TTのテイストを組み合わせられており、ピエヒ会長はTTのデザインに「未来」を見ていたのかもしれません。
仮に「ポルシェがそのときデザインを承認していたら、新しいポルシェ(もしかしたら911だったかも)のデザインはTTのものになっていて、そうなるとTTは存在しなかった」ということになりますが、これはなかなか面白い経緯だと思います。
8NTTの次は「8JTT」となり、これは初代の面影を残しながらもアウディのランナップにちょっと近づいた車。
初代に使用されていたアルミ製のパーツが「アルミ風の加工(スパッタリング)を施した樹脂」に置き換えられたりしたことがちょっとした論争に。
なお1998年にアウディに移籍し、「アウディ史上最も美しいクーペ」と言われたA5をデザインすることになる和田智氏も二代目TTのデザインに関わっており、著書の中「未来のつくりかた」でアウディはTTを「動く彫刻として認識している」という記載が見られます。
なお「TT」はイギリス・マン島で開催されていたレース、「ツーリスト・トロフィー」の略。
その名称の由来からも「TTはスポーツカー」を標榜したということもわかりますね。