| 発売は2022年、限定100台、価格は2億8000万円 |
昨年に発表された、「マクラーレンF1」後継モデルの発売計画。
これはマクラーレンが公表したものではなく、マクラーレンF1の設計者(デザイナー)であるゴードン・マレー氏が明らかにしたもの。
マクラーレンF1は1993-1998年の間に生産されたスーパーカーで、放熱性を考慮してエンジンフード内張りには「純金」を張り、車載工具には軽量な「チタン製」、そしてロールセンター適正化のために「センターシート」を採用するなど、コストや実用性を抜きにした設計を持っています。
マクラーレンF1は現代の基準に照らし合わせても第一級の性能を誇る
その後マクラーレンF1は非公式では391km/h、公式だと386.7km/hという世界最速記録を樹立しますが、これはその後長らく破られることはなく、いかにマクラーレンF1が優れていたかがわかります。
もちろんマクラーレン自身もこの「F1」を重要資産として位置づけており、ル・マンに出場した「マクラーレンF1 GTRロングテール」を意識した”LT=ロングテール”シリーズも展開中。
そしてマクラーレンF1の時価は近代の自動車としては他に例を見ない「20億円」に迫る勢いとなっており、もはや「神格化」されているといっても過言ではありません。
誰もマクラーレンF1のようなクルマをつくれない
そしてマクラーレンF1の登場から現在まで、「こだわり」「パッケージング」においてこれを超えるクルマが存在しないのもまた事実。
そこでF1の設計者であるゴードン・マレー氏自身が「ほかが出来ないのであれば自分で作る」と名乗りを上げたのが今回のプロジェクトですが、このクルマの発売予定は2022年、そしてコードネームは「T.50」。
設計や製造はゴードン・マレー・オートモーティブにて行われ、ゴードン・マレー氏いわく「ピュアで、軽量で、史上もっともドライバーオリエンテッドなクルマ」。
エンジンはコスワース製V12
搭載されるエンジンは3.9リッターV12だと公表されており、これはコスワースによって製造されるもの。
出力は650HP、許容回転数は12,100rpmだとされていますが、実際にはルーフ上のエアスクープ経由でのラムエア効果によって700馬力近くを発生することになる、とも述べています。
なお、アストンマーティンのハイパーカー「ヴァルキリー」もコスワース製のV12エンジンを採用していますが、こちらは6.5リッター1,013馬力、レブリミットは11,100回転なので、T.50のほうが同じV12ながらも排気量が小さく、より高回転型ということになりますね。
そして使用されるトランスミッションはXtrac製の軽量6速マニュアル、駆動輪は後輪のみ。
ブレーキもまた軽量使用のモノブロック(アルミ製)、そしてディスクはカーボンセラミックを採用予定。
車体そのものにはカーボンモノコックを採用し、ボディパネルはカーボン製。
車体重量はトータルで980キロ程度に収まるとのことですが、これはアルピーヌA110やアルファロメオ4Cよりも軽い数字。※コストの制約がないと思われ、iSreamは使用しない模様
そしてそれらよりも軽い車体に「700馬力のV12エンジンが載っている」と考えると、ちょっと楽しくなってきます。
T.50にはターゲットが存在しない
ゴードン・マレー氏語るには、「”F1”のように、T.50にはラップタイム、加速、最高速の目標となる数値は存在しない。それらがなくとも、T.50が速いことは明白だ。T.50は軽く、小さい。これらによって、どのスーパーカーも手が届かないパフォーマンスとドライビングダイナミクスを実現する」。
つまり、自身の理想を実現すれば「速さは自ずといついてくる」ということだとも考えられ、このあたり「さすがはゴードン・マレー」。
そのほか、T.50ではF1同様の3シーター(センターシート・レイアウト)を採用し、前後重量配分はもちろん50:50。
さらにはGTカーとしての使用にも耐えうるラゲッジスペースを持つ、としています。
T.50には「ファン」が装備される可能性も
面白いのはブラバムBT46B(F1マシン)に採用された、「ファン」を装備する可能性があること。
これは車体下部のエアを吸出し排出することでダウンフォースを増強させるもので、その効果は1978年のスウェーデンGPでも実証済み(デビューウィンを飾り、その威力からほかチームの抗議にあって即刻廃止になったほど)。
もちろんこの「ファン」はゴードン・マレー氏の考案によるものですが、ゴードン・マレー氏の凄さはこういった「着眼点」そして「パッケージング」にあると認識していて、これらは技術でカバーできるものではない(だからこそ、だれもマクラーレンF1のようなクルマをつくれない)とも考えています。
ちなみにこのブラバムBT46B(1978)、1976のティレル6輪”P34”の2車については、ぼくにとって「F1史上もっとも心に残る」マシンたち。
ティレル6輪については「前衛投影面積を増やさずに前輪の接地面積を増やす」という課題に対する抜本的な解決策。
ただこういった発想はなかなか出るものではなく、そして現代のF1では「発想が出ようとも、がんじがらめのレギュレーションによって実現できない」のも残念ではありますね。
ちなみに、 フェラーリ599XXは車体後部に二基のファンを持ちテールから排出する「アクティフロー」 なるデバイスを持ち、アリエルも「Aero-Pコンセプト」にて同様のファンを装備。
Aero-Pコンセプトの場合は「ウイングに比べて3倍のダウンフォースを獲得できる」とも発表しています。
なお、このT.50については、生産が100台に限定され、その価格は2億8000万円程度になる見込み。
マクラーレンF1は「とんでもなく維持費のかかる」クルマでしたが、T.50ではどうなんでしょうね。