ゴードン・マレーはマクラーレンF1もお気に召さない
あのマクラーレンF1を設計したゴードン・マレー氏が「マクラーレンF1の魂を受け継いだ後継モデルを開発中だ」と発言。
これはカーメディア、Road and Trackに語ったもので、「マクラーレンF1が登場してずいぶん経つが、どこもF1のようなクルマを作っていない。マクラーレン・スピードテールもそれは同じことだ」とのこと。
「だれも、そしてどこもマクラーレンF1のようなクルマをこれまで作っていない」
さらには「誰もデザインや軽量性やドライバビリティやV12サウンド、ロードインフォーメーション、些細なディティールにはこだわっていないからだ。だが、これは批判ではない。たとえばラフェラーリは700台もの生産台数を誇るが、それだけ多くの台数になると細部にまでこだわることは不可能だ。しかし、そろそろ誰かが新たなるマクラーレンF1を作るべきだ」とも語っており、つまりはその「誰か」が自分である、ということですね。※ということは、実現したとしても生産台数はかなり少ない
なお、ゴードン・マレー氏はTVRに軽量車体技術「iStream」を提供していますが、新たに開発する「マクラーレンF1後継」にはこの技術を使用しない模様。
というのも、iStreamはあくまでも量産と経済性を重視したもので、そしてマクラーレンF1後継は「コスト度外視」、かつ「性能重視」なため。
よってプラットフォームは専用のカーボンモノコックとなり、エンジンはV12、そしてトランスミッションはマニュアル。※マクラーレンF1開発時、ゴードン・マレーはV12ではなくホンダのV8エンジンを欲しがったとも言われるが、ホンダが供給を断った
現在のところこれ以上の情報はなく、そのほか唯一語られたのは「とても、とても軽量になる」とのこと。
「多くのスーパーカーが発表されているが、重量はどれも1300キロ以上だ。だが、私にはそれが信じられない。私が作るからには1000キロ以下だ」。
なお、アストンマーティン・ヴァルキリーはV12エンジン、ハイブリッドシステムを搭載して車体重量1030キロを達成しているので、マクラーレンF1後継の「1000キロ以下」は現実的に可能である、とも言えそう。
マクラーレンF1はなにがそんなに特別なのか?
マクラーレンF1は「マクラーレン初の」ロードカーで生産は1993-1998年。
ゴードン・マレー氏はホンダNSXをベンチマークとしてF1を開発した、とされています。
NSXの何がベンチマークであったかというと「その扱いやすさ」だとされ、ゴードン・マレー氏は実際にF1の出来には満足しており、「F1が10点ならばNSXは7点」とも語っていますね(なおポルシェ959やフェラーリF40は3点、とも評している)。
車体サイズは全長4,287ミリ、全幅1,820ミリ、前高1,140ミリとなっており、マクラーレン720Sや570Sと比べて「一回り」小さい数字となっています。
なお重量は1140キロとかなり軽量(カーボンモノコックシャシー採用)。
そのこだわりようはハンパなく、ロールセンター適正化、左右の重量を均等にするため「センターシートレイアウト」を採用し、さらにエンジンルーム内張りは「放熱性に優れるから」という理由だけで「金張り」に。
そして手荷物であっても前後オーバーハングにモノを載せることは許されず、したがってトランクスペースはホイールベースの間に。
軽量性を追求したために車載工具も「チタン製」なのも有名ですね。
その他にもたくさんのこだわりが詰まったクルマがマクラーレンF1ですが、そのぶん価格は高価になり当時1億円(フェラーリF40が4500万円だった)。
そして驚くべきは維持費用で、些細なことでも整備は本社に送ったり、タイヤ交換を行った後はマクラーレンの指定するドライバーを雇ってサーキットを借り切って走行し足回りの再調整を行う必要がある(そのため、タイヤ交換には570万円かかる)という常軌を逸したクルマ。
そのかわり性能は比類なく、その最高速「386km/h」は長らく世界最速。
公的な記録として認められなかったものの、テストにおいては時速391キロを記録したことも有名ですね。
そしてマクラーレンF1の「センターシート採用3シーター」、「時速391キロ」をコンセプトとし、マクラーレンF1の後継として開発されたのが「スピードテール」ではあるものの、ゴードン・マレー氏は「これは認めるわけにはゆかない」と一蹴したことに。
マクラーレンは「セナ」でそのデザインを酷評され、スピードテールではゴードン・マレー氏にダメ出しを食らうなど、なにかと「うまくゆかない」ようにも思います。
ただ、ゴードン・マレー氏は新会社を設立と伝えられるも具体的な動きが見られず、今回の発言があったとしても、「実現するかどうかはわからない」とも考えています。