| これほどデザインに対するプライオリティの高い自動車メーカーも珍しい |
そしてこれほどデザイナーの地位が高い自動車メーカーも珍しい
さて、ヒュンダイ(ヒョンデ)グループのキア(KIA)がロサンゼルス・オートショーにてEV9コンセプトを発表。
一見するとコンパクトカーのようではあるものの、実際には「大型3列シートSUV」だといい、これはヒュンダイグループの持つエレクトリック・グローバル・モジュラー・プラットフォームをベースとしている、とのこと。
なお、ヒュンダイは時を同じくして「セブン・コンセプト」を発表していますが、プラットフォームはじめ多くの点での共通性が見られ、このEV9コンセプトは「キア版セブン・コンセプト」とも呼べるクルマなのだと思われます(実際にヒュンダイとキアは同じプラットフォームを使用した兄弟EVを発売している)。
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デザインしたのは元インフィニティのチーフデザイナー
なお、このキアEV9のプロジェクトを率いたのは起亜グローバル・デザイン・センター長のカリム・ハビブ氏ですが、同氏はインフィニティを辞してキアへと移籍した人物。
そして今回、同氏は「起亜コンセプトEV9は、今年に入ってからの計画の中で、私たちにとってもうひとつの重要な指標となりました。持続可能なモビリティ・ソリューションのグローバル・リーダーになるという私たちの意図を明確にした上で、今日、先進的なゼロエミッション・パワートレイン、最先端のエクステリア・デザイン、現代的で革新的な技術を駆使したインテリア空間を融合させた、オールエレクトリックSUVコンセプトを世界に向けて発表できることを誇りに思います」と述べています。
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ちなみにキアの社長はアウディTT(初代)をデザインしたと言われるペーター・シュライヤー氏。
その後もインフィニティ、BMWのデザイナーを獲得するなど、キアは世界で最も「デザイン志向であり、デザインにこだわる」自動車メーカーのひとつだとも考えていますが、その理由は「デザインを武器にして日本や欧州のコンパクトカー対して優位に立つ」「同時に、追い上げてくる中国勢から”デザインで身を守る”」というものだと思われます。
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つまりは走行性能ではなくデザインがキアの武器であり、それによって「特に走行性能にこだわらず、足としてクルマを買う」人々に対し、「でも、どうせ買うならカッコいいクルマにしよう」と思わせる戦略なのだとぼくは捉えています。
そして、「走行性能を気にしない」人々は、今後どんどん増えてくる安価な中国車へとシフトする可能性もあり、そしてそういった人々をつなぎとめるための手段としてもデザインが機能するということですね。
現時点ではキアEV9のスペック公開は限定的
このキアEV9では、技術的なスペックは控えめにし、しかし将来のデザインにおける可能性を世界に示すことに注目したといい、バッテリーの詳細については言及されていないものの、このコンセプトカーは最大で300マイル(482km)の航続距離を達成できるとされています。
また、キア自動車が「次世代超高速充電技術」と呼ぶテクノロジーを採用していて、EV9コンセプトは30分以内に10%から80%まで充電することができ、このあたりはヒュンダイ・セブン・コンセプトと同様だと考えて良さそうですね。
駆動方式についても明かされておらず、E-GMPプラットフォームは、後輪駆動と全輪駆動の両方に対応していることがわかっていますが、市販車には全輪駆動が採用されると思われ、しかし2輪駆動の可能性も残されています。
キアEV9のボディサイズは、全長4,930mm、全幅2,055mm、全高1,790mm、ホイールベースは3,100mmというかなり大きなもので、このボクシーなスタイルからするに、実物は相当に大きく感じられるのかも。
テーマは三角形?
このキアEV9について、デザインの要素として三角形を用いていることが明らかで、たとえばボディ中央から前後フェンダーへと向かうラインにも「三角形」。
そしてホイールも「三角形」。
こういったシルエットやディティールは、冒険、外出、レクリエーションの形を体現していると言われており、起亜の新しいデザイン哲学「Opposites United(オポジット・ユナイテッド)」を予告しているといい、ヒュンダイの「なめらかで凹凸が少なく、柔らかさを感じる」デザインと十分に差別化が図られているようにも思えます。
ちなみにキアのデザイン上の一つの特徴は「タイガー・フェイス」と呼ばれるグリルを中心とした一連のフロント周りですが、このEV9ではそれがデジタル化され、ボディ内にヘッドライトがインテグレートされているようですね(さすがにこれは市販モデルでの再現は難しそう)。
コンセプトEV9では、ボンネットのベントダクト部分をソーラーパネルとして活用し蓄電するという機能を持つものの、具体的にどの程度の電力が得られるのかは不明です。
EVが電力を蓄えるためにソーラーパネルを使用するのは初めてのことではなく、日産リーフにも同様のコンセプトが採用されますが(HVですがトヨタ・プリウスにも)、キアによると充電ステーションがなくとも、ソーラーパネルが充電の代替手段になると表現しているので、けっこうな発電量を持つのかもしれません。
そのほか、ボタンひとつで昇降するリトラクタブル・ルーフレールを採用することでエアロ効果を高めつつ、EV9では(空気抵抗削減のために)ミラーを廃止し、「次世代カメラモニタリングシステム」を採用しています(カメラの形状そのものが、ヘッドライト同様に「L」字となっている)。
キアEV9のインテリアはこうなっている
そしてこちらがキアEV9のインテリアで、キアいわく「自然」「動」「静」を融合させ、ファーストクラスのような美しいラウンジを実現した、とのこと。
具体的にはパノラミックルーフ、27インチのウルトラワイドディスプレイ、異型ステアリングホイールなどを備えた未来的なルックスでもありますね。
多彩なシートアレンジを楽しむことができるのもセブン・コンセプト同様で、移動(走行)中は3列目が正面を向ものの、移動していないときには1列目と3列目が向かい合い、2列目のシートがテーブル配置に変化する「ポーズモード」へと変更することも可能です。
さらには"エンジョイモード "と名付けられたモードも存在し、これは3列目のシートが後ろに向かって回転し、テールゲートが開いて、屋外の景色を眺めることができるというもの(ロールスロイス・カリナンっぽい)。
参考までに、キアのデザインチームは、「ウォーターエレメント」からインスピレーションを得たと述べ、このコンセプトカーののカラーは、静けさ、落ち着き、幸福感に関連する特性からインスピレーションを得たといい、サステイナビリティを重視していることから車内のフロアにはリサイクルしたフィッシュネットが使用され、シートの生地にはリサイクルしたペットボトルとリサイクルしたウール繊維が使用され、内装にはヴィーガン・レザーが使用されている、とのこと。