Image:Volkswagen(X)
| フォルクスワーゲングループは中国市場での立て直しを図らねば大きな成長は望めない |
さらには地元欧州でも中国製EVの侵略に悩まされる
さて、フォルクスワーゲンが「2023年にグループ全体で924万台のクルマを納車した」と発表(速報値)。
フォルクスワーゲンについては「主力市場の中国で売れていない」「バッテリー生産施設の建設を延期」「EVが売れず工場稼働を一時停止」などネガティブな話題ばかりが報じられていますが、蓋をあけると前年比+12%という好成績を収めています(といっても、前年はサプライチェーン問題等で生産が伸び悩んだ年でもあった)。
実際のところ、2024年の伸びは「2023年の受注残の生産が滞りなくできた」ためだとも見られていますが、それでも受注残があるということは「人気がある」と考えてよく、力強い結果であったとも考えることが可能です。
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各市場におけるフォルクスワーゲングループの納車実績はこうなっている
そこでフォルクスワーゲングループの地域ごとにおける納車実績を見てみると以下の通り。
- 中国・・・324万台(+2%)
- (中国以外の)アジアパシフィック・・・36万台(+9%)
- 中央および東ヨーロッパ・・・50万台(+14%)
- 西ヨーロッパ・・・327万台(+21万台)
- 中東/アフリカ・・・36万台(+29%)
- 北米・・・99万台(+18%)
- 南アフリカ・・・52万台(+9%)
こうやって見ると全世界において販売が伸びており、しかし中国の伸び率が低くなったことで「西ヨーロッパ」に逆転され、中国が首位から陥落したことがわかります。
そして中国市場は長らくフォルクスワーゲングループにとって「最大の市場」であっただけに、ここの成長が抑えられてしまうとワールドワイドにおける販売そのものが伸び悩む可能性も考えられ、よって今回の数字を見るに「雲行きがあやしくなってきた」ということもわかりますね。
そのほか、バッテリー式電気自動車(BEV)の販売が77万台(+35%)となったこと、BEVの販売比率が8.3%(+1.4%)となったこともトピックとして掲げられていますが、お膝元の欧州では中国製EVの猛攻にさらされており、ここからが「本番」なのかもしれません。
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そのほかにはこんな「数字」も
なお、上で述べた数字はフォルクスワーゲン「グループ」としてのもので、つまりはフォルクスワーゲンのほか、アウディ、ベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ、ポルシェ、セアト、シュコダ、マン、スカニアなどが含まれていることには注意を要します。
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計算上だと、この924万台に占める「フォルクスワーゲンブランドだけ」の比率は52.63%(487万台、4%増)となっており、フォルクスワーゲンブランドのうち54.2%がSUVがによって占められ(14.9%増加)、北米市場に限っては81%がSUVという構成。
欧州でもSUVが売れているという状況は変わらず、サブコンパクトSUVのT-Crossがドイツ、イギリス、トルコ、スペインにて「ベストセラー」に輝いています。
参考までに、トヨタは2023年11月までに(フォルクスワーゲングループの年間販売台数とほぼ同じ)923万台を販売しており、今月末に発表されるであろう通年での報告では「年間通じて1000万台の販売を達成する」可能性が高いと見られています。
フォルクスワーゲングループとしては、これまで「抜きつ抜かれつ」のライバルであったトヨタに大きく水を開けられたということになりますが、ここからの反撃にも期待したいところですね。
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