| さらに新興国や低所得地域では中国車のシェアが飛躍的に伸び、もしかするとこの推測以上に中国車の勢力が拡大する可能性も |
たった数年で中国の自動車メーカーは状況を塗り替えてしまった
さて、UBSグループのアナリストがあまりに衝撃的な試算結果を発表。
これによると、EVを発売する中国自動車メーカーの増加により、欧米の自動車メーカーは世界市場シェアの5分の1を失う可能性があるとしています。
この結果(レポート)の一部を紹介してみると、まず「2022年に欧米の自動車メーカーが持っていた世界自動車市場の81%のシェアは2030年までに(中国自動車メーカーの台頭によって)58%に低下し、テスラのシェアは2022年の2%から2030年には8%に跳ね上がる」。
そして特にBYDに対しては楽観的な見方を示しており、10年内に自動車市場でのシェアをほぼ倍増させると述べています。
参考までにですが、2022年におけるトヨタ自動車(世界販売段数No.1)のシェアは11.5%なので、テスラの「8%」というのはとんでもない数字ということになりますね。
なぜBYDはそんなに強いのか
なお、BYDの強さはあちこちで報じられるところではありますが、気になるのが「なぜそんなに強いのか」。
UBSはその理由について「部品の75%が自社で製造されていること」、つまり内製率の高さを挙げています。
BYDはもともと電池メーカーとして(EVが話題となる前から)創業しており、その後に自動車製造業へと乗り出しますが、ただしこの時点ではガソリンやディーゼル車を製造しており、しかしその後に方針を転換して2022年に「EVオンリー(PHEV含む)」の自動車メーカーへとシフトしたわけですね。
そしてEVメーカーへと転身したことで「バッテリーメーカー」という強みを存分に発揮させることが可能となり、EVに不可欠なバッテリーはもちろん、モーターやインバーターなどの主要部品を自社で製造しているために(コンポーネントの)仕入れが不要なので製造コストが安く、自社で生産をコントロールできるために「インフレや資材不足などの外的要因を受けにくい」と言われています。
さらに、直近で発売したEV「シール」においては「海外サプライヤーからの部品調達率」がなんと10%未満となっており、サプライチェーンをほぼ完全にコントロールできる状態にあるとも見られます。
そしてもっと驚きなのは、「生産コストをもっとも抑えることに成功した」EVだとして知られるテスラ・モデル3に対しても(BYD シールが)15%のコスト優位性を持っていると言われることで、つまりは今後の値下げ競争においても生き残ることができる可能性が非常に高いということを意味します。
こういった状況を見るに、今後EVは「テスラとBYDによって支配される」という多くのアナリストの見解が現実味を帯びてくるように思われ、既存自動車メーカーはこれらに対抗できないんじゃないかという気もしてきますね。
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中国の自動車メーカーは「さらに」大きく成長するというシナリオも
冒頭のUBSに話を戻すと、同社のアナリスト、パトリック・フンメル氏は「我々のベースケースでは、中国自動車メーカーの世界市場シェアは、2030年までに17%から33%に拡大し、欧州自動車メーカーの市場シェアが最も低下する。既存欧米自動車メーカーの世界市場シェアは、現在から2030年の間に81%から58%に低下する可能性が高い」。
参考までに、現在中国の自動車メーカーがもっとも威力を発揮しているのは中国市場であり、これも(別のレポートでは)2030年までに現在のシェア(50%弱)から70%にまで増加するとの見方が存在しています。
加えて、中国の自動車メーカーは現在米国、日本、韓国、インドで大きな存在感を示しておらず、もしこれらの市場で販売を伸ばすことができれば、中国の自動車メーカーはUBSの予想よりも遥かに高いシェアを獲得することになるのかもしれません。
そしてUBSはこのレポートの発表後、フォルクスワーゲンとルノーの両社を格下げし、この両社は欧州全域で中国の自動車メーカーやテスラとの競争にさらされているとも指摘。※中国自動車メーカー進出の影響をもっとも大きく受けるのが普及価格帯の自動車を販売するメーカーだと思われる
加えてルノーの欧州市場シェアは現在の10%から2030年には7%程度にまで縮小する可能性があることに言及し、フォルクスワーゲンについては「主要分野での実行が我々の予想を下回り、EVにおける先行者としての優位性を失った」とまでも述べています。
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