| ユーロ7導入内容の緩和に続き、世界中でこの傾向が加速する |
こういった方向性はある意味では中国のEVに対する普及抑止策になるのかも
さて、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン、ベントレーなどいくつかの自動車メーカーが「ラインアップのEVへの完全置き換え」を後ろ倒しにするというコメントを発表し、GMやフォードは「EVよりもハイブリッドやPHEVに注力する」という新方針を取り入れていて、つまりは「EVシフトに遅れが生じている」というのが現在の状況です。
そしてEVシフトに遅れが生じている理由としては「笛吹けど踊らず」つまり消費者がついてきていないということになり、さらにその理由は「EVは高額であり、かつ充電エクスペリエンスに優れず、EVを購入することが割に合わないから」だと言われています。
加えて最近ではEVの修理コストの高さ、それに起因する保険料の高騰、そして保険料に加入できない、トドメとして「EVは売却価格が異常に安い」という事実がEVの普及とともに明らかになってきており、ますます消費者がEVを敬遠する状況が出来上がっているのかもしれません。
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ベントレーがガソリン車全廃を「2033年に後ろ倒しにする」とコメント。メルセデス同様、現在の状況を鑑みてハイブリッドに注力し市場の動向に歩調を合わせる
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アメリカでは政府が「EVシフトの遅れ」を認定
そして今回報じられているのが、こういった状況を鑑み、アメリカ政府が「EVへと無理に移行しなくてもいい」という方針へと転換を行ったこと。
これまで米政府は「自動車メーカーに対してEVの製造を行うことを義務付け、一定の基準に達しなければ高額な罰金を支払うことを定めていた」ものの、今回「電気自動車への移行を早めるという提案には応じられない」とした一連の自動車メーカーと政府関係機関(エネルギー庁)との会合が持たれることに。
そしてこの会合の内容を受け、米国エネルギー庁が「基準の緩和」を発表しており、これによって(簡単に言えば)「自動車メーカーは、当初政府の定めた基準(目標)を満たし、罰金を回避するため、無理やりEVを作らなくてもよくなった」わけですね。
この基準(もしくは目標)には「2032年までにEVのシェアを67%にまで高める」というもの、「企業平均燃費(CAFE)基準」などが含まれますが、このCAFE基準はその自動車メーカーの自動車が排出するCO2の平均を計算した指標です。
どういうことかというと、ガソリン車を製造し続けるのであれば、そのCO2排出量を(定められた基準まで)相殺できるだけのエコカーを製造する必要があるのですが、この相殺のための手段として有効なのがEV(EVのCO2排出量=効率性評価は車両によって異なるものの、ほぼガソリン車のCO2を相殺する水準にまで換算されるので、企業全体のCO2排出量平均を大きく引き下げることが可能になる。そしてCAFE基準に適合するにはPHEVでは間に合わず、EVを大量に生産するしか方法がないというレベルであった)。
しかし当初の規制ではEVの効率性評価が2027年に72%削減される(つまりもっと多くのEVを製造しないとガソリン車の排出するCO2を相殺しにくくなる)という内容であったものの、新規制では「2030年までに65%削減」へと変わっており、EVの効率性評価が「より長い期間、より高い環境性能として評価される」こととなります。
報道では、今回の変更がなければ「2032年までに、GMは65億ドル、ステランティスは30億ドル、フォードは10億ドル」の罰金を払わなければならなかったとされ、しかし新規制の導入によってこの罰金を払う必要がなくなったほか、(EVシフトの必要性は変わらないものの)急激なEVラインアップへの転換、新型EVの開発や市場投入を進める必要が(当面)なくなり、ガソリン車を作りつつもゆっくりEVを開発したり、その移行段階としてハイブリッドやPHEVで「しのぐ」ことが可能になったと考えた良いかと思います。
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参照:CARBUZZ