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マクラーレンW1、フェラーリF80、ブガッティ・トゥールビヨンがこぞって採用する「3Dプリンティングサスペンション」は今後のスタンダードに?そのメリットとは

マクラーレンW1、フェラーリF80、ブガッティ・トゥールビヨンがこぞって採用する「3Dプリンティングサスペンション」は今後のスタンダードに?そのメリットとは

Image:McLaren

| 今後この技術は車体構造、ホイールなどさらに広い範囲へと拡大してゆくだろう |

それにしても3Dプリンタによるパーツがここまで急速に拡大しようとは

さて、マクラーレンは「新たなる覇者」W1を発表したところですが、このハイパーカーには注目すべきいくつかのハイライトがあり、そのひとつは1,285馬力を絞り出すV8ツインターボ+ハイブリッド、そしてもうひとつが3Dプリンタにて製造されたフロントサスペンションコンポーネント。

このフロントサスペンションは(すでに発表があったとおり)マクラーレンが提携を行っている先進企業「ダイバージェント」の協力によって製造されていますが、このダイバージェントは(ここ最近)様々なハイパーカーの記録を塗り替えている米新興ハイパーカーメーカー「ジンガー」のCEO、ケビン・ジンガー氏によって設立された会社です。

マクラーレン
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「3Dプリントによるサスペンション」はハイパーカーのスタンダードになりうるのか

さらに興味深い事実としては、ここ最近発表されたハイパーカーがすべからくこの「3Dプリントされたサスペンション」を持つことで、ブガッティ・トゥールビヨンもまた同じ。※フロントサスペンションのアッパー側とナックルが3Dプリンタによって製造されており、これはダイバージェントによるものだと説明されている

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そしてフェラーリF80もまた3Dプリントによるサスペンションを持っていて、しかし見る限りだとアッパーアームのみにとどまるようですね(フェラーリはこの3Dプリンターによって製造されたサスペンションアームの供給先を明かしていない)。

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Ferrari

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そしてマクラーレンの場合は「アッパーアーム、ロワーアーム、ナックル」が3Dプリンタによって出力され、ブガッティ・トゥールビヨン、フェラーリF80に比較して「もっとも広範にわたり」この技術が使用されているように見えます(3Dプリンティングパーツではないが、ほかの2車とは異なりパフォーマンスダンパーのようなパーツも装着されている)。

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3Dプリンタによってサスペンションパーツを製造するメリットとは

そしてこの3Dプリンタによって製造されたサスペンションパーツを見てわかるのは「従来の部品とは全く異なる形状を持つ」ということ。

直線がまったくなく有機物のようにも見えますが、これはAIを使用して設計しているためで、AIに要件(サイズや強度、エアフロー、重量、取り付け方法など)を入力するとAIがパーツを設計してくれるものものであり、ダイバージェントはこの(自社の)プロセスを「ダイバージェント アダプティブ プロダクション システム (DAPS) 」と呼んでいます。

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参考までに、AIによる設計と「これまでの手法による設計」によって生まれたサスペンションパーツの相違はこんな感じ。

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Donuts media

そしてシンガー21Cの足回りはこう(シンガー21Cはサスペンションだけではなく車体もAIによって設計されている)。

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TopGear

つまるところAIによって設計され3Dプリンタによって製造されたパーツは「より少ない材料で軽量に仕上がり、さらにはより高い強度や優れたエアロダイナミクスを持つ」と考えてよく、従来の鋳造や削り出しといった製法では作り得ない構造を持つパーツを作ることが可能です。

たとえば「内部に交差した構造を持つ」パーツはその端的な例ですが、この実現には「AI」「3Dプリンタ」両方が必要であり、どちらか片方では最大限の効果を得ることができず、そしてこの両方を(現時点で)もっともうまく扱えるのがダイバージェントということに。

加えてもうひとつの3Dプリンティングの利点は、複数の設計を迅速かつ比較的安価試せる点。

従来の方法だとパーツ設計と製造に時間がかかり、トライ&エラーを繰り返すと相当なコストが掛かったものの、AIによる設計だと「ちょっと改良したい」と思ったときにAIへのコマンドを変更するだけで改良パーツの設計があっという間に出来上がり、そしてそれを製造する速度も非常に速く、よって車両の開発速度、開発の可能性が飛躍的に向上するわけですね。

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McLaren

ちょっと興味深いのは、(フロントに多くの3Dプリンタプリンティングパーツを使用する)マクラーレンW1であってもリヤサスペンション周りには従来の手法によるパーツが使用されているように見受けられることで、その理由はちょっとナゾ。

もしかするとフロントサスペンションほどはハンドリングに影響を与えず、そして変更できる範囲が少なく(理論的にも完成されている)、ここにあえて変更を加える必要がないのかもしれません。

あるいは、現段階では非常にコストが高く、「費用対効果」を考慮した場合、リヤサスペンションにまでこれを導入することができなかったのかもしれません。

実際のところ、この技術が採用されるのはマクラーレンW1、フェラーリF80、ブガッティ・トゥールビヨンという「価格4億円~7億円レベル」のハイパーカーにとどまっており、これがフェラーリやマクラーレンの「レギュラーモデル」にまで降りてくるのは非常に難しいということも理解できます。

ただ、マクラーレンP1やラ・フェラーリにて導入されたハイブリッドシステムが(構成要件は異なれど)のちのアルトゥーラ、296GTBにまで降りてきたことを考えると、長い時間がかかるかもしれませんが、いずれはこの3Dプリンティング技術が”量産スーパーカー”にまで普及することも考えられます。

現実問題として、マクラーレンCEO、マイケル・ライターズ氏は「この最先端技術により、マクラーレンW1のより複雑なサスペンション構造を開発でき、お客様のドライビング体験を向上させ、マクラーレンの性能の限界を常に押し広げるという使命をサポートしています」ともコメントしているので、この技術をW1のみのものとしておくつもりはないのかもしれませんね。

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