Image:Ferrari
| もしかすると、それくらい”振り切った”ほうが499Pゆずりのパワートレーンを搭載するエクスキューズになっていたのかも |
さたにはシングルシーターのほうが後世の価値が高くなっていたかもしれない
さて、現在は「ハイパーカー市場」がかつてないほどの盛り上がりを見せており、その中では各社各様の排他性が見られます。
その排他性の「核」となるのはドライビングエクスペリエンスであり、これを最大化するためにジンガー21Cは「センターシート、タンデム2人乗り」、そしてGMA T.50では「センターシート、3人乗り」という特殊なレイアウトを採用しているわけですね。
そしてフェラーリが発表したばかりのハイパーカー「F80」でも”1+”という例を見ない配置を採用していますが、これは「ドライバー中心のコクピットで、助手席は緊急用」といった雰囲気を持っています。
ただ、どうやらフェラーリは当初この助手席すら設ける予定がなかったと見え、あわや「1人乗り」となるかもしれなかった、という事実が明らかになっています。
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「もしかすると”座席あたり”もっとも高価なクルマ」になっていたのかも
これはトップギアのインタビューに対し、フェラーリのデザイン責任者であるフラビオ・マンゾーニ氏が語ったもので、同氏いわく「F80は最初は厳密にシングルシーターとして考案され、ウルトラナローなキャビンを採用することで”非常に極端なプロポーション”を与える予定であった」。
ただし最終的にフェラーリF80は助手席を備えるに至っているものの、これはフラビオ・マンゾーニ氏が「(実際にF80に採用される)シングルシーターのような感覚をドライバーに与えつつ、助手席を犠牲にしない方法を見つけた」からだといいます。
オフィシャルフォト、カーコンフィギュレーター、イベント(フェラーリ・フィナーリ・モンディアーリ)等での画像や動画を見ると「ちゃんとしたシートを備えるのは運転席のみで、助手席はほぼフロアカーペットの延長」「シートのカラーを変更できるのも運転席のみ」「なるべく助手席を目立たないようにしている」「ドライバーズシート周辺を”囲む”ようにパネル類がデザインされている」ことがわかりますが、助手席は固定式(フロアと一体化)、そして運転席よりも少し後ろにあり、これは、エルゴノミクスや快適性を損なうことなくキャビンを狭くするために行われた手法であると説明されています(おそらく、前面投影面積を最小化するためにキャビンの幅はかなり狭いはずで、よって助手席を後ろに下げることで圧迫感を減らし、同時に助手席に座る人の存在感を希薄化することでシングルシーター的な感覚をドライバーに与えるのだと思われる)。※もちろん大幅な軽量化にも貢献する
フェラーリも「多様化」の時代を迎える
参考までに、フェラーリは現在プレミアムカーセグメントにおいて一つの流行となっている「助手席(パッセンジャー)ディスプレイ」を最初に取り入れたメーカーの一つですが、これは「助手席に座る人にも、ドライバーと同じ体験をしてほしいから」。
そしてこの思想はさらに推し進められ、プロサングエや12チリンドリでは「デュアルコクピット」と呼ばれる左右対称に近いデザインにまで発展していて、しかし今回のF80では「助手席の存在感を消し、そこに座る人の存在感をも希薄にする」という新しい手法を採用することに。
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ちなみにですが、フェラーリはすでに「シングルシーターのロードカー」を発売していて、それはイコーナシリーズの「モンツァSP1」。
ただしこちらは「往年の、公道レースを走ったレーシングカー」をモチーフとしたもので、フェラーリが今回F80にて意識した”シングルシーター”とはまた異なる考え方にあるのだと思われ、つまりフェラーリはロードカーにおいて「通常モデル」「限定モデル」にて異なる考え方を採用し、さらに限定モデルにおいても様々な方向性が示されていて、それはフェラーリがモータースポーツにおいて豊かな歴史を持つからに他ならないのかもしれません。※フェラーリの公式サイトを見る限り、フェラーリが指す「シングルシーター」とはフォーミュラカーに限定されているようだ
参考までに、フェラーリが発売したクルマではないものの、1966年にはピニンファリーナが「センターシート3人乗り」の365Pベルリネッタスペチアーレを発表しており、これはピニンファリーナが最初に製作したショーモデル、そして当時のフィアット会長、ジャンニ・アニエッリ氏のオーダーによって作られた2台目が存在します。
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