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米新興EVメーカー、リビアンの平均車両価格は8万ドル、しかし「1台売って3万3000ドル(442万円)の赤字」との報道。やはりEVは採算には乗りにくい?

米新興EVメーカー、リビアンの平均車両価格は8万ドル、しかし「1台売って3万3000ドル(442万円)の赤字」との報道。やはりEVは採算には乗りにくい?

| 一般的には30万台の年間販売台数を確保しないと黒字化は見えてこないと言われている |

さらにEVを初めて作ると「過剰設計」となりコストが掛かりすぎる例も

さて、EV事業はなかなか黒字転換が難しく、一般には「年間30万台程度の販売規模がないと利益を出せない」と言われます。

そして今回、米ウォールストリート・ジャーナルが公開したのがEVスタートアップ、リビアン(リヴィアン)に関するレポートで、これによると「リビアンは1台販売するごとに33,000ドル(現在の為替レートにて約442万円)の赤字を出している、とのこと。

ちなみにリビアンは現在R1TとR1Sという2車種を販売していますが、これらの平均価格帯は8万ドルだというので、「1台売って33,000ドルの赤字」というのは相当に大きな比率であることもわかりますね。

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リビアンはいったいどうやって黒字化を図るのか?

なお、このレポートでは、リビアンのコスト削減計画に加え、R1TとR1Sをどのようにコストダウンしてに黒字化するのかについても触れていますが、その前提として「リビアンが順調に赤字を削減してきていること」を挙げています。

ウォールストリート・ジャーナルによれば、2022年第3四半期には車両1台あたりの損失は約140,000ドルであったものの、次の四半期には125,000ドル強に減少し、さらに2023年第1四半期には67,000ドル強にまで減少。

そして直近の赤字が「33,000ドル」ということになりますが、リビアンのCEO、RJ・スカリンジ氏は黒字化について楽観視しているとされ、スカリンジCEOは技術者に対し、車両1台当たり4万ドルを節約するよう指示したとのこと。

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ウォールストリート・ジャーナルは「車両の再設計または生産プロセスの合理化」によって(黒字化が)実現される可能性があるといい、さらにウェルズ・ファーゴのアナリスト、コリン・ランガン氏によると、リビアンはすでに2018年と2019年から、同社に対して過剰な請求をしているサプライヤーと契約の再交渉を行っていることも明かされています。

さらにはコンサルティング会社がR1Tを解体したところ、過剰設計によって重量とコストの増加につながっていることが判明したとも報じられており、たしかにR1Tが発売された直後には(それを分解したエンジニアが)「非常にコストファフォーマンスが高い」という感想を述べており、しかしそれは単に「お金がかかりすぎていただけ」ということになりそうですね。

なお、ぼくら消費者からすると「過剰にお金がかけられている」のは悪いことではありませんが、リビアンからすると「不必要にコストを投じていた」ということになり、これによって手持ち資金を使い果たしてしまいそうになっているわけですね。

まだまだリビアンには問題山積

RJ・スカリンジ氏は、コスト削減を進める一方、生産量を増やして生産目標を達成することが「黒字化を可能とするもっとも手っ取り早い方法」であるとも述べていますが、イリノイ州ノーマル工場では現在のところ工場の稼働率が30%程度に留まっており(つまり受注受注が不足している)、実際に今年6月の時点にて、同社は四半期ごとに10億ドルを使い果たしていることも報告されています。※EVの生産立ち上げはとにかくお金がかかり、テスラですらベルリン工場立ち上げのときには「お金を釜に突っ込んで燃やしているようなスピードで現金が消えてゆく」と(イーロン・マスクCEOが)語っている

参考までに、「EVの過剰設計、それに起因するコストのかかりすぎ」は新興自動車メーカーだけではなく既存自動車メーカーでも同様であり、最近だとGMCハマーEVでも(分解の結果)過剰な設計が指摘されたことも(ただしGMにはお金があるのでそれほど問題ではないのかも)。

さらにはフォルクスワーゲンも「設計を見直すことで」安価なEVの製造が可能になったと述べており、各社とも最初のEVこそお金を賭けすぎてしまうものの、そのEVが第2世代、第3世代と続くにつれ、どんどんその設計が最適化されてゆくのかもしれません。

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リビアンに話を戻すと、「2025年まで存続できるだけの十分な手元資金がある」とコメントしていますが、前出のアナリストによれば「コスト削減に加えて平均価格97,000ドルへの値上げ、そして工場のフル稼働」という条件が揃わねば黒字化は難しいであろうという見解も示しています。

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