| 欧州自動車メーカーは利益を確保できないままに電気自動車の競争に敗れるかもしれない |
いったい誰が中国の自動車メーカーのここまでの成長を予想できただろう
さて、メルセデス・ベンツCEO、オラ・ケレニウス氏によれば「依然として、電気自動車の生産にかかるコストは、同クラスの内燃機関搭載モデルよりも高いまま」なのだそう。
よって現在メルセデス・ベンツはコストと資源配分の最適化を図り、EVの製造コストの高さを相殺することで、電気自動車が内燃機関搭載モデルと同等の収益性を達成できるよう取り組んでいる、ともコメントしています。
今後もしばらくは「電気自動車の製造コストは高いまま」
さらにオラ・ケレニウス氏は「電気自動車のコストは高くなります。それは当分の間変わらないでしょう」とコメントし、その理由はバッテリーに使用される原材料費、ソフトウェア開発費の高騰が主なものだと説明。
そしてこれらのコストを内燃機関搭載車と同じ基準で顧客に転嫁することはできない(つまり、ガソリン / ディーゼル車と同じ利益率を確保しようとすると、電気自動車はとんでもなく高くなり、よって利益率を抑えねばならない)とも。
つい先日発表された新型メルセデスCLAコンセプトは(ハイブリッドモデルもラインアップされるものの)メルセデス・ベンツの将来のEVへの道を開くものでもあり、ベースとなるのは新しいメルセデス・モジュラー・アーキテクチャー(MMA)。※いずれの自動車メーカーも、現在のプラットフォームを捨ててでもコストが安い新プラットフォームを開発せざるを得ない状況に陥っている
これにリチウム鉄リン酸ケミストリーとシリコン酸化物を使用した2つのバッテリーパックを搭載することになりますが、「電費」は非常に優れるといい(そのため同じ走行距離を実現するのであれば、より小さなバッテリーで済む)、そして使用されるエレクトリックモーターはこれまでのユニットよりもレアアースの使用量が少ないとされ、つまりは生産コストが「多少は」安くなるということを意味します。
メルセデス・ベンツとて価格競争と無関係ではない
なお、現在欧州の自動車メーカーにとっては非常に厳しい状況が続いており、その理由の一つは「主戦場であった中国でクルマが売れなくなってきていること」、そしてもうひとつは「地元の欧州に中国車が進出していること」。
特にメルセデス・ベンツは中国市場に大きく依存していたものの、中国では年々「中国車の販売比率」が高くなっており、さらに欧州でも「中国車の販売比率」が高くなっていると報じられます。
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つまり欧州の自動車メーカーはどんどんその生息域を奪われているということになり、最も大きな影響を受けるのは価格的に中国車とバッティングすることが多いフォルクスワーゲン、ルノー、ステランティスだとされ、しかし中国のEVメーカーも一部「プレミアムクラス」に進出しているためにメルセデス・ベンツ、BMW、アウディとて安泰ではないのかもしれません。
そして中国車との競争に勝つには「生産コストを引き下げて価格競争力を高める」しかないものと思われますが、現時点ではとうてい中国の自動車メーカーに(コスト面で)追いつくことができず、よってフォルクスワーゲンとアウディは中国の自動車メーカーに助けを求めるという自体に陥っていて、今後「中国車優勢」の状況は強まりこそすれ、弱まることはないのかもしれません。
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参照:Reuters