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まだまだ安定しない世界各国のEV販売状況。中国と英国では直近でEV市場が拡大し、米国では新興メーカーを中心に販売が減速

NIO

| ひょっとすると、長い目で見れば結局EVは普及しないんじゃないかと思えることも |

航続距離、そして車両価格に関する懸念が改善されない限り、EVがガソリン車の代わりになることはないのかも

さて、中国市場にて現地自動車メーカーのEV販売が大きく伸びているもよう。

この理由としては消費者の”様子見”が終了したことが大きいとされ、(昨年末のテスラの値下げ後に)多くの現地EVメーカーが一斉に値下げを行い、消費者としては「まだまだ値下げがあるかもしれない」として様子を見ていたものの、結局追加での値下げがなく、「ここらで買っておくか」と考えて購入に踏み切る人々が増えたであろうことが指摘されています。

2023年7月の中国におけるEV販売はこうなっている

そこで2023年7月の(中国国内における)EV販売を見てみると、まずトップのBYDは262,161台のEVを販売しています(前月比+3.6%)。※中国国内でのEV販売第二位はテスラ

ただ、この数字には「BEVとPHEV」が含まれており、純粋な電気自動車(EV)のみの販売については非公開。

そしてLi Autoも販売台数が急増したEVメーカーであり、6月の32,575台から7月は34,134台へ(こちらはBEVのみ)、NIOの販売台数も20,462台へと増加したといい、揃って好調ということになりそうです。

なお、この増加にも関わらず、これらのメーカーは現在増産への対応を進めているとも報じられ、よって「もっと在庫があれば、まだまだ各社とも販売台数は伸びていた」のかもしれません。

ちなみにですが、中国では「2023年末に打ち切られるはずだった、EV優遇政策(購入代金の10%が還元される)について2024-2025年も継続されることが決定しているといい、しばらくはEV販売の伸長を望めると考えて良さそうですね(逆に考えると、この優遇政策がないとEVの販売は大きく伸びない)。

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一方のアメリカではEVメーカーが利益を出せず

なお、この中国での好調とは裏腹にアメリカではEVの販売が今ひとつ伸び悩んでいるとされ、ルシードは「在庫過多」となって(在庫に限ってですが)ひとまず価格を下げて現金を確保するという戦略に出ています。

具体的には5,000~10,650ドルほどの値下げを行っており、赤字が拡大すると言う報道も。

そしてルシード同様の新興EVメーカーであるニコラも15%の減収が見込まれているといい(ただしこちらはトラックがメイン)、フィスカーもようやく納車を開始したもののパーツ不足のために生産が思うように進まず「目標未達」。

一方でリビアンは4-6月期の売上高が3倍に急増して9億8310万ドルになるという予想が出ており、粗利益率はマイナス58.6%からマイナス51.3%に”改善”すると報じられています。

ルシード

こういった新興メーカーだけではなく既存自動車メーカーについてもEVビジネスの状況が芳しく無く、フォードは「現時点では売れば売るほど赤字が拡大する」とコメントしたばかり(ただ、GMはEVの生産を倍増させると述べており、GMのEVは採算がとれるレベルなのかもしれない)で、報道を見る限りでは「売れていない」理由は各社各様ではあるものの、それぞれに苦しい時期を過ごしているのは間違いなさそうですね。

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参考までに、イギリスにおける7月のBEV販売は前年同期比で88%増となり、現在のところBEVが占める市場シェアは22.6%にも達していて、あくまでも平均値ではあるものの「2024年から自動車メーカー各社とも、新車販売の22%をBEVにすべし」という数値に近づいているということに(ただ、このBEVの市場シェアはテスラがその多くを稼ぎ出している可能性が高く、よって既存自動車メーカーのEV構成比率はここまで高くはないものと思われる)。

現時点ではまだまだEVに対する各国や地域の姿勢、そしてメーカー側の供給状況など安定しないままではありますが、世界的に見たインフレ圧力が弱まるとは考えにくく、予断を許さない状況にあると考えています(いつEVにかかわる状況が急変するかわからない)。

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参照:Reuters, etc.

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