| BMWは「i」ブランド展開当初に高い代償を支払ったが、それが現在のEV開発に活かされているようだ |
たしかにBMWのEVは他社製EVに比較してコストパフォーマンスが高いように感じられる
さて、トヨタ同様に「電動化一本ではなく多様な選択肢を提供する」としているBMW。
新世代EVシリーズ「ノイエクラッセ」発表の準備を薦める一方、他社がマルチシリンダーエンジンを捨てる中において大排気量V8エンジンの開発を進めるなど一風変わった戦略を採用することでも知られます。
そしてこういった戦略については「現在、世界中における電動車の需要や環境、そして内燃機関の禁止など自動車業界の将来については不透明かつ流動的」だと捉えているからだと思われ、つまりどう転んでもいいように”(言葉を選ばずに表現すれば)逃げ道”を作っているのかもしれません。
-
BMW「電動化一本に絞るのは危険。自動車メーカーは水素など電動化以外の道も模索するべき」。電動化に社会が追いつかないことが明白になりつつある状況に警鐘を鳴らす
| 最近は面と向かって電動化に懸念を表明するCEOが増えてきた | ただしBMWは他社と同じくらい「電動化」に熱心でもある さて、BMWのCEO、オリバー・ツィプセ氏が「自動車メーカーは、水素を燃料と ...
続きを見る
「電動化路線一本」に絞ることの弊害も
一方、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなど一部の自動車メーカーは「電動化以外に未来はない」としてEV化路線のみという姿勢を見せていますが、これは大きな危険性をはらんでおり、たとえば中国のEVメーカーの競争力が向上したり、もし今の流れから一転して「今後ずっとガソリンエンジンも販売していい」となったり、さらにバッテリーやエレクトリックモーターを製造する材料が高騰したり入手できなくなったりすると、その戦略が根本から崩れ去り、会社の経営が立ち行かなくなる可能性があるわけですね。
つまり、電動化のみに絞ってしまうと、自社でコントロールできない外部要因によって経営に支障を来たす可能性があり、しかしBMWのように、リスクヘッジの手段として様々な選択肢を残しておくことで「自身で(生き残りのための)方向性を選べる」ことになるのだとも考えられます。
参考までに、BMWとトヨタは「内燃機関」「水素」「電動化」をバランスよく進めるなど共通点も多く、しかしトヨタはこれを「カーボンフリー達成のために選択肢を多様化している」と表明しているのに対し、BMWはとくにその理由を(部分的にしか)公表していないのが興味深いところでもありますね。
BMWの電動化車両の販売は「急増」
ただ、トヨタとBMWとでは異なる部分もあって、それは「BMWのEV販売が好調なこと」。
BMWは2023年末までに「生産する車両の15%をEVにする」というけっこう野心的な目標を掲げており、このままの調子だとどうやら達成できる見込みだとされています(EV化一直線のメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンが思惑通りにEVを販売できていないのとは対象的である。参考までにメルセデス・ベンツのEV販売比率は11%でポルシェと同じ)。
そしてBMWはこの勢いに乗じるため、電動化への投資を当初の計画を上回るペース増加させていると発表しており、i5と次期EVクロスオーバー、iX2の導入によって2024年には欧州の工場にて生産する車両の40%を電動化するということにも触れています(この40%はBEVとPHEVとの合計だと思われる)。
その一方でBMWは「いつ内燃機関(ガソリン / ディーゼル)の生産を終了するかということについては決まっていない」と語っており、「結論を急ぐ必要はない」とも(これもまた、ターゲットを設定している多くの欧州の自動車メーカーとは異なる部分である)。
なお、結論を急がない理由としては「アメリカや中国といった、主要自動車市場での内燃機関車の販売が好調なこと」を挙げていて、BMWのCEO、オリバー・ツィプセ氏によれば「よりクリーンな内燃エンジンが世界のCO2排出量削減の一翼を担う可能性があり、世界の国や地域によって発展速度が異なるため、利用可能な動力源をミックスすることが理にかなっている」。※この考え方はトヨタとも共通している
更に同氏は「例えば米国では、カリフォルニア州などで見られるe-モビリティの台頭と並行して、内燃機関が依然として重要な位置を占めています。中国では、政府はe-モビリティを推進しており、内燃機関を禁止することには疑問の余地がありません。日本では、ハイブリッドが求められており、水素への関心も高いといった状況も見られます」とも述べ、市場ごとの相違についても言及することに。
-
BMW「中国ではEVが売れていると思われがちですが、高級車市場ではガソリン車のほうがよく売れます。現地では、EVは安物だと捉えられ、富裕層はこれを嫌います」
| たしかに中国で売れているEVは価格が安く、登録にかかる費用や税金等も安価である | 中国の富裕層は「一般人と同じように見られたくない」のかもしれない さて、現在中国では販売される新車の1/3が電気 ...
続きを見る
ちなみに(EV専業メーカーを除くと)「EV比率15%」というのは業界トップの数字だそうですが、EVのみに絞らずパワートレーンの多様化を軸に展開するBMWが「EV化一直線」のほかのメーカーに比較して電動化比率が高いというのはなんとも皮肉な話かもしれませんね。
あわせて読みたい、BMW関連投稿
-
BMWがSUV向けの新型ガソリンエンジンを開発中と報じられる。なぜBMWは他社が電動化に向かう中でガソリンエンジンにこだわるのか
| BMWはトヨタ同様、EVオンリーの未来に異議を唱える自動車メーカーのひとつであるが | それでも次世代EV「ノイエクラッセ」の開発などエレクトリック化にも進んで対応する姿勢を見せている さて、現在 ...
続きを見る
-
BMWはなぜ内燃機関とEVとでデザインを分けないのか?「デザインを分けることは、顧客の選択肢を狭めます。そもそもガソリンとディーゼルでも同じデザインですよね」
| こればっかりは各社の戦略に依存するものであり、どの手法が良い悪いという問題ではない | ただしBMWの言い分もよく理解はできる さて、BMWとメルセデス・ベンツ、アウディの3社は「ジャーマンスリー ...
続きを見る
-
BMWも急激な電動化に「待った」!「現在主流の内燃機関を捨て、市場の動向や要望を無視した電動化は環境はおろか、誰の得にもならない」
| 現在、いくつかの大手自動車メーカーが「あまりに早すぎる電動化」 に対して警鐘を鳴らしている | 結局のところ、電動化とは政治家の人気取りのためなのか さて、BMWのトップ、オリバー・ツィプセ氏によ ...
続きを見る
参照:Reuters