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EUでの「2035年ガソリン車販売禁止」法案の除外措置詳細が公開。Eフューエル、そしてブガッティやパガーニ、ケーニグセグなど少量生産メーカーは規制対象外に

2023/02/19

ブガッティ

| 水素や合成燃料(Eフューエル)が認められたことで新たなる展開が見られるかもしれない |

ただし水素やEフューエルは流通に課題が残り、早急な普及は難しいだろう

EUでは2035年からCO2を排出するクルマの新車販売を全面禁止する決定を下していますが、この「C02排出車の全面新車販売」については、ガソリンやディーゼルエンジンなど内燃期間を搭載するクルマの販売を一律に禁止するものではなく、動力源となる燃料や、その年から何らかの方法で新車のCO2排出量をゼロにすれば対象外となる等、いくつかの特例が設けられています。

そして「少量生産のエキゾチックカー」も除外されることが欧州議会の公式声明によって明らかになり、報道によれば「年間1,000台未満の新車登録規模となる自動車メーカーは、引き続きこの禁止措置を免除される」とのこと。

EU議会が「2035年にガソリン禁止」という最終合意に至る。年産1万台以下のメーカーでも2036年にはガソリン禁止、1,000台以下だと当面は無罪放免
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当面、ハイパーカーは「ガソリンエンジンのまま」存続できることに

これにより欧州にて「ガソリンエンジンのまま」販売が可能となるのはブガッティ(年産100台以下)、ケーニグセグ(年産35台程度)、パガーニ(やはり年産数十台)等ですが、これらメーカーは事前にこの「除外」を把握していたと見え、ブガッティ・リマックCEOであるメイト・リマック氏は「今後10年、ピュアエレクトリックパワートレーン搭載のブガッティを発売することはない」と述べ、パガーニ創業者オラチオ・パガーニ氏も「ピュアエレクトリックハイパーカーは作らないという決断を下した」とコメントしています。

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一方、フェラーリやランボルギーニ、マクラーレン、アストンマーティンは年産1,000台を大幅に超えているので、これらはピュアエレクトリックカーへと移行せざるを得ないということになり、しかし上述のとおり「燃料次第では免除を受けることが可能」なので、たとえば燃料を「Eフューエルのみ」に制限すれば抜け道を見つけることができるのかも。

ただしEフューエルについてはまだまだ開発段階にあり、生産や輸送、販売、税金をどう設定するかといった課題も多く、最終的な価格はガソリンの2倍になるとされるのでユーザーに強いる負担も小さくなく、ここに可能性をかけるよりはEVへと移行するほうがスマートなのかもしれません。

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もしそうなると「スーパーカー(フェラーリ、マクラーレン、ランボルギーニなど)はピュアエレクトリック」「ハイパーカー(ブガッティ、ケーニグセグ、パガーニなど)はガソリン」といった具合に、搭載されるパワートレーンがぱっくり分かれてしまう可能性がありそうです。

そしてそうなると、ガソリンエンジンを求める顧客がハイパーカーをこぞって注文することになりそうですが、もちろんハイパーカーメーカーも「年産1,000台」を超えないように調整するはずであり(というか、そんなに簡単に増産できない)、ここでまたハイパーカーの価値が高くなる可能性もありそうですね。

EUはガソリン車を全面禁止するわけではない

ここでEUの「CO2排出車両の販売禁止」についてもうちょっと補足しておくと、EUが2023年2月10日に発表した法案は、3月に予定されている正式な法制化ではなく、欧州議会の承認と、ポルシェが開発中の合成燃料eFuelのようなカーボンニュートラルな燃料を動力源とする自動車であれば、内燃機関自動車の生産を継続する大きな自由を与えるという法律案の明確化。

EU文書C(2023)1086は、欧州の再生可能エネルギー指令(RED)において、「非生物起源の再生可能液体・気体輸送燃料および再生炭素燃料」の使用を可能にするための新しい規定に関するもので、広範な用語が含まれるため混乱してしまうものの、ここで言及される「燃料」について、EUは液体および気体の水素(および水素に似たその他の可燃性燃料)、特に大気中から炭素を採取してグリーン水素と合成することによって作られる合成燃料を例に挙げており、つまり水素やEフューエルの使用を前提としたパワートレーンであれば規制の対象外ということに。

基本的に、動力源となる燃料がカーボンニュートラルとみなされる限り、2035年以降も燃焼が認められ、しかし原料の入手を含む合成プロセスの最初から最後までがカーボンニュートラルでなければならないのは注意すべき点でもあります(燃料の輸送にガソリン使用が認められるかどうかは不明)。

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なお、この「除外(特例)措置」には、自動車メーカーにとって生き残る新たな道を示したということのほかにも大きな意味があり、それは「オイルメーカーにとっても未来が開けた」ということ。

つまり燃料供給会社に燃料がカーボンニュートラルであることを求めるものだとも解釈でき、シェル、BP、トタル・エナジーをはじめとする燃料供給会社は代替燃料(Eフューエル)製造という新たなビジネスの可能性を手にすることになり、これらメジャーが「本気を出せば」内燃機関が今後も存続することが可能となるのかもしれませんね。※ただしビジネスとして採算に乗らないと判断すれば手を出さない

ただ、それでも自動車メーカーは、温室効果ガス(CO2)の排出を削減するための役割を果たすことが求められていることは間違いなく、内燃機関がより効率的になるように法規制が強化されたように、自動車メーカーはよりクリーンで環境に優しい機械を継続して製造しなければならず、そのため、メルセデス、フォルクスワーゲン、アウディなどいくつかの自動車メーカーは2035年までに完全に施行される電動化戦略を発表しており、一方ではBMWとトヨタの2社を筆頭に”未対応企業もが存在しています。

トヨタ、BMWのどちらも内燃機関にはまだ果たすべき役割があると主張していますが、責任を放棄したわけではなく電動化計画を進めており、しかし内燃機関自動車が社会的に存在意義を失うまで、両社は内燃機関自動車を作り続けることになるのかもしれません。

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参照:Autocar

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