| あくまでも削減すべきはCO2であって、内燃機関そのものが問題なのではない |
やはりトヨタは「EVのみがカーボンニュートラルへのソリューション」という風潮に異議を唱える
さて、ヤマハが「水素を燃料とするV8エンジン」を発表。
なお、この「水素エンジン」につき、ヤマハがエンジンそのものを開発したわけではなく、2018年にヤマハがトヨタからの依頼を受け、レクサスRC Fに積まれる5リッター自然吸気V8エンジンをベースに改良を加えたものだとされています。
出力そのものは450馬力/540Nmなので、ガソリン版の同じエンジンが発生する479馬力/536Nmに比較すると「馬力で劣り、トルクに勝る」ということがわかりますね。
ちなみに水素を燃料とするクルマというと「燃料電池車」を思い出しますが、これは水素を用いて化学反応を起こすことで電力を発生させ、その電力によってエレクトリックモーターを駆動させるという原理を持ち、しかし今回の水素エンジンは「燃料に”ガソリンの代わりに水素を用いる”のみであり、エレクトリックモーターを用いない」というところで根本的な差があります。
エキゾーストシステムがあまりにアグレッシブすぎ
そして今回公開された画像を見て驚かされるのは「8本から1本に」集約されるエキゾーストシステム(通常、V8だと片バンクづつ4>2>1もしくは4>1へと集約される)。
しかもエンジンのトップに集約されるというアグレッシブさですが、ヤマハによると「非常に特徴的な高周波音を出す」とのこと(ただし、この位置にエキゾーストパイプをもってくると、フロントエンジンの場合では視界を遮ってしまうので現実的に採用が難しい。逆にミドシップだと視覚的にも排他性をアピールできるのでGOOD)。
さらにヤマハによると、「水素エンジンは従来のガソリンエンジンとは異なる性格を持っており、水素エンジンは、電子制御の運転支援に頼らずとも使いやすい、生来の親しみやすさがある」。
加えて「試作車を運転する人は、最初はみんな半信半疑で乗り始めるのですが、最後には満面の笑みでクルマから出てきます。それを見ていると、単にガソリンの代用品として扱うのではなく、水素エンジンならではの特性に、実は大きな可能性があるのではないかと考えています」と続けています。
実際のところ、回転が上がる際のフィーリングやレスポンス、トルク感などが「特殊」なのだろうと思われますが、それがどんな感じなのかはちょっと気になりますね。
現時点では実用性について言及されていない
現在のところ、ヤマハはこの水素エンジンの実用化について言及していないものの、トヨタは(TVCMで主張しているとおり)水素で走るカローラをスーパー耐久レースに出場させ、同じ技術を用いた「水素エンジンを搭載した」GRヤリスのプロトタイプを公開しており、両者揃って水素エンジンを強力に推し進めてゆくことは間違いなさそう。
なお、なぜトヨタが水素エンジンの開発を行うのかということですが、トヨタはかねてより「内燃機関の禁止」について疑問をいだいており、その理由としては「電動化についてこれないサプライヤーが倒産するから」だと報じられています。※豊田章男氏は日本自動車工業会(JAMA)の会長でもあり、業界全体を守るべき立場にある
加えてEVは製造や廃棄の段階においてガソリン車よりも多くのCO2を発生するといい、EVが大量に走ることで電力不足が深刻化したり、環境資源が不足したりといった問題も指摘されていて、「本当にこのままエレクトリック化を進めていっていいのか」という疑問の声が上がっているのもまた事実。
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そして豊田章男社長は「カーボンニュートラルを実現するにあたり、課題(敵)は内燃機関ではなく、カーボン(CO2)である」とも述べており、つまりEVのみがソリューションだとされている現在の状況についても懐疑的であり、「内燃機関を存続させながらカーボンニュートラルを目指す」ことを考えているわけですね。
この「水素エンジン」について、ヤマハ発動機の日高祥博社長によれば「水素エンジンは、内燃機関への情熱を持ち続けながら、カーボンニュートラルを実現できる可能性を秘めている」「企業文化や得意分野が異なる企業と手を組み、パートナーを増やしていくことが、未来を切り開くことにつながる」と説明していますが、実際のところ水素を燃やすのでエンジンの鼓動や「排気音」がちゃんと存在し、しかもCO2を発生させない(実際にはオイル燃焼分のCO2は発生する)というメリットがあり、今後にかかる期待は非常に大きい、と考えられます。
一方で、圧縮した水素を貯蔵するタンクの製造や管理、万一の事故の際の安全性確保、水素ステーションなどインフラの整備、その整備ができたとしても水素ステーションへと水素を輸送する方法など様々な課題が残されており、このあたりは「自動車メーカー単体」で改善できるものではなく、国を含めての取り組みが求められるところでもありますね。
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