| 多くの自動車メーカーは消費者に媚びようとするが、ときにはそれがアダになることがある |
そして品質の高さが満足度の高さにつながるようではないようだ
さて、調査会社であるJDパワーが毎年恒例、米国における自動車の満足度(APEAL)調査の結果を発表。
この調査は、新車に対するオーナーの感情的な愛着や興奮度合いを測定するもので、快適性やアクセルを踏むときのスリルなど、10項目の属性についての設問がなされます(それぞれ100点満点で評価され、1,000点が満点となる)。
これらに回答することで機能や性能個別の満足度、そのブランド全般や個別車種の満足度が明らかになってゆくわけですが、今年上昇した属性は「燃費」だけで、残りの9つの要素ではすべて低下が見られたうえ、全体的な満足度が28年の調査機関ではじめて「2年連続で低下した」こともアナウンスされています。
ブランド、車種ごとの満足度はこうなっている
まず総合満足度(平均値)は845点で、これは2022年と比べて2ポイントの低下となり、2021年の平均より3ポイント低い数値なのだそう。
そこでどのブランドの満足度が高かったのかを見てみると、プレミアムブランドではジャガーがトップの887点、次いでランドローバーとポルシェの883点、そしてBMWの878店という順番で、普及価格帯のメーカーだとダッジが最高の887点、ラムが873点、GMCが858点。
ちなみにですが、ジャガーやランドローバー、ダッジ、ラム、GMCといったブランドは「品質」評価ではかなり低い方であり、とくにジャガーやランドローバーは(アルファロメオと並んで)最下位レベル。
しかしその一方で満足度は高いということになり、つまり「品質と満足度は一致しない」ということになりそうです。
たしかにこれはよく理解の出来るところで、「よく壊れる自動車ブランドには意外と多くのファンがついている(とくにイタリア車・フランス車)という事実からも、品質が高ければファンがつくわけではないということがわかります。※実際のところ、今回の調査では、高品質で知られるレクサスの満足度が高くない
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「各セグメントにおいて高得点を獲得した車種」を最も多く抱える自動車ブランド(もしくはグループ)だとヒョンデがトップとなっており、ジェネシスGV60、ヒョンデ・サンタクルーズ、キア・カーニバル/EV6/フォルテ/K5/リオ/スティンガー/テルライドが各セグメントでの最優秀車種となっています。※幅広いラインナップを持つ自動車メーカーが有利であり、専業メーカーはトップを狙いにくい
次いでBMW(5車種)、トヨタ(3車種)、日産(2車種)、ポルシェ(2車種)となっていて、1車種であってもセグメントトップの評価を獲得したのはメルセデス・ベンツ、ダッジ、GM、ジャガー・ランドローバー。
そして全セグメント・全車種通じて最も高い評価を獲得したのはポルシェ911(914点)となっており、これは2年連続での快挙です。
なぜ平均満足度が下がっているのか?
そこでちょっと疑問なのが「なぜ平均満足度が下がっているのか」。
「燃費」については昨年から15ポイントアップの777点となっており、しかしその他は軒並みポイントが下がっていて、「現代のクルマはどんどん便利になっている」ことを考えると、これはちょっとナゾな現象です。
ただ、調査対象となった10項目の中身を見てみると、その答えが自ずと見えてくるようで(それぞれの項目には3つ~4つの細分化された分類がある)、たとえばインフォテイメントシステム経由で音楽再生を行うユーザーは昨年の70%から56%に減少していて、これはつまり「使いづらい」という不満を持っているのかもしれません。
たしかにぼくも(今まで乗ったどのクルマであっても)接続に対しては100%信頼できるものではなく、予期せぬ事態が生じたりするため、はっきり言えば「スマートフォンをインフォテイメントシステムに接続して音楽を再生する」ことに対しては消極的です(乗るクルマによってプレイリストを使い分けているものの、クルマのインフォテイメントシステム側ではプレイリストを”固定できない”などの問題もあり、乗り換える都度プレイリストを選び直す必要がある。よって車両側に楽曲をインストールしておくのが一番確実である)。
J.D.パワーの自動車ベンチマーク担当シニア・ディレクターであるフランク・ハンリー氏によれば「2年連続の落ち込みは小さく見えるかもしれないが、水面下にはもっと大きな問題が潜んでいる可能性を示す指標も見られる。たとえばメーカーは多数の新技術やデザインの革新を新車に与えているが、必ずしも所有者はそれらに満足していない。ワイヤレス充電や車両アプリのような機能は所有体験を向上させるはずだが、これらの機能が問題であると判明した場合、逆に満足度が下がってしまう」。
つまり、何もなければ問題と感じないのに、その機能を追加したがために不満を発生させてしまうという「ヤブヘビ」状態を同氏は指摘しているわけですが、加えて「このような満足度の下降傾向は、メーカーにとって、オーナーが新車に何を本当に求めているのかをもっと理解する必要があるという警告のサインになるはずだ」とも。
これは供給側(自動車メーカー)と消費者との乖離をも示しており、自動車メーカーが「この機能があれば便利だろう」と思って付与するものであっても、消費者が思惑通りに受け取ってくれるかどうかわからないということであり、ともすれば自動車メーカーの独りよがりになりつつあることを示唆しているのかもしれません。※自動運転機能はその最たる例であり、ハンパな機能を付与されて車両価格が高額になることを許容できない人も多いはずだ
そしてポルシェの評価が高いのは、「不要なものは採用しない」「ブランドの進む方向が明確であり、それに合致する機能や装備だけをとことん磨き抜いて採用する」からなのではないか、と考えています(ポルシェの機能や装備は顧客に”媚びる”ためのものではなく、ポルシェが必要だと思うからこそ採用されている)。
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参照:J.D.Power