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EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及

EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及

| 早ければ2020年に実現するとしていたメーカーも存在したが、現時点では実用化の目処は立っていない |

もしかすると、このまま永遠に実現できない「幻の技術」となる可能性も

Image:CATL

さて、現在幅広く「次世代バッテリー」「EV関連技術における革命」だと信じられているソリッドステートバッテリー(全固体電池)。

現在トヨタが最も実用化に近く、そして日産やBMWがその後を追っていると言われていますが、今回EV用バッテリーのサプライヤーとしてトップのシェアを誇るCATLが「ソリッドバッテリーは安全ではない」というコメントを発し業界が震撼することに。

なお、CATL (Contemporary Amperex Technology Company Limited) は、BMW、テスラ、ヒョンデ、ポルシェ、フォードなどにEV用バッテリーを供給している中国拠点の企業であり、シェア2位のBYD(15.8%)の倍以上となる36%のシェアを占めています。

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バッテリーキング「ソリッドステートバッテリーは安全ではない」

今回この発言を行ったのは"バッテリーキング"として知られる同社の創設者兼最高経営責任者(CEO)、ロビン・ゼン博士で、「ソリッドステートバッテリー(全固体電池)は広く信じられているほど実現可能ではない」。

全固体電池技術は、電気自動車 (EV) の次の主要なステップとして広く宣伝されており、重量の軽減、エネルギー密度の増加、生産コストの削減、充電速度の向上、航続距離の延長、そして何よりも「燃えない」EVを作ることが可能になるとされ、現在多くの自動車メーカーが我先にと実用化を急ぐ技術です。

ただし今回、ロビン・ゼン博士はフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューにて以下のように語り、ナトリウムイオン電池がより良い代替品であると主張しているわけですね。

CATLは10年間(全固体電池)に投資してきたが、それにもかかわらず、まだ商業的に実現可能だとは考えていません。私はいつも、開発担当者がソリッドステートバッテリーの開発に取り組んでいるのを見ているので、すべての進捗状況を把握しています。そしてどういうわけか、依然として全固体電池は現在の形では実用的でなく、安全ではないのです。

同氏の指摘する(ソリッドステートバッテリーの)大きな問題とは、アノード電極に純粋なリチウム金属を使用するため、全く新しいタイプの解決策が必要となり、しかし現在の技術では、「極度の圧力下に置かれると充電中にバッテリーが膨張して危険が生じる」といい、さらには「これらのバッテリー内のリチウムは、事故でバッテリーのハウジングに穴が開いた場合に酸素と反応し、有毒な水酸化リチウムを放出する可能性があり、車両の乗員、救急隊、その他の道路利用者に危害を及ぼす可能性がある」とも。

さらに加圧の問題があるため、何回も(充電)サイクルに耐えることはできないのです。では、どうすれば商業的に実現できるのか?私はアンチ・ソリッドステートバッテリー派ではなく、むしろ我々はソリッドステートを全面的に支持しています。しかし研究すればするほど、それが商業的に実現可能な特効薬ではないことがわかってきたのです。

参考までに、同様の意見を示す例も少なくはなく、フィスカーそしてマセラティは「ソリッドステートバッテリーの可能性を排除」という意思を表明し、バッテリーメーカーのストアドットによれば「もうソリッドステートバッテリーが(数年内に)実現できるという幻想は捨てるべきである」。

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直近の解決策としてナトリウムイオン電池に焦点を当てるべきである

ロビン・ゼン博士は、固体電池技術を次の大きな前進として見るのではなく、まずは「半固体」電池として知られるナトリウムイオン電池に焦点を当てるべきだと考えており、これはCATLが2021年から取り組んでいるテクノロジー。

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よってCATLはこの分野での既得権益を持っており、実用化されれば先行者利益が生じることになりますが、 この技術によって(現在主流である)リチウムイオンバッテリーの航続距離を2倍にし、固体電池と同等の性能を提供できるうえ、ソリドステートバッテリーにて懸念される「高い初期コストや不安定性の問題を引き起こすことがない」と主張しています。

なお、ナトリウムイオン技術について耳にするのはこれが初めてではなく、ステランティスは少し前に(エンジニアリング技術責任者のビック・キュリック氏が)「現在のバッテリーは重すぎるため、重量を半分にする必要がある」と言及し、その試みの一つとしてこの技術に言及済み。

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一方、ポルシェそしてメルセデス・ベンツはストアドットの生産するシリコンバッテリーの搭載を進めるとされ、バッテリーに対する考え方が多様化しており、そしてその選択によって大きな「差」が開く可能性があるというのが現在の状況なのかもしれません。

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