>スウェーデンの自動車メーカー >ブガッティ

元ブガッティ、ケーニグセグのデザイナー「愛車は日産R35 GT-R。ヴェイロンの90%の性能で価格はわずか3%。これしかない。最高だ」

元ブガッティ、ケーニグセグのデザイナー「愛車は日産R35 GT-R。ヴェイロンの90%の性能で価格はわずか3%。これしかない。最高だ」

| サシャ・セリパノフ氏は昔ながらのデザイン手法によって深くクルマに関わりたいと考えるデザイナーだった |

そしてそのクルマの存在意義、目的を重要視している

さて、かつてクルマのデザインというと著名なデザイナーやデザイン事務所によって行われることが多く、それはジョルジエット・ジウジアーロだったりマルチェロ・ガンディーニであったりバッティスタ・ピニンファリーナという人々やその(設立もしくは所属していた)事務所であったわけですが、その後カーデザインはインハウスへと移ってゆくことになり、デザイナーも「会社員」となってしまいます。

それでもイアン・カラム、フランク・ステファンソン、ルク・ドンカーヴォルケ、ワルター・デ・シルヴァらデザイン事務所出身であったりデザイン畑出身の人々が活躍する余地が残されていたわけですね。

しかしながら現代では、クルマのデザインというのは、デザイナーの意思よりもマーケティング的側面が重要視されることになり、かつ世界中で販売することになるため、自動車会社の持つ世界中のデザイン拠点から案を集め、それを(デザイナー以外の、マーケティング担当も含めて)あれやこれや議論し、その上でいろいろな案を「混ぜて」製品を作り出すことになっていて、要は「このクルマは誰のデザイン」だと言うことができない”工業製品”となっています。

ケーニグセグのデザインは「時代を越えたピュアさ」を重視

そこで今回カーメディアが紹介しているのがかつてブガッティにてシロンやヴィジョン・グランツーリスモ、ランボルギーニではウラカンのデザインに関わり、その後ヒョンデやケーニグセグを渡り歩いたデザイナー、サシャ・セリパノフ氏。

ジェネシス(ヒュンダイ)がエッセンティア・コンセプト発表。ガルウイング採用のスーパーカー

| ヒュンダイはやはり本気だった | 「スーパーカーセグメントへの参入」を表明したヒュンダイがジェネシス・エッセンティア・コンセプト(Essentia concept)を公開。 現時点では具体性はなく ...

続きを見る

ヒョンデでは高級ブランド「ジェネシス」よりエッセンティア・コンセプト、ケーニグセグでは4人乗りハイパーカー「ジェメラ」「CC850」のデザインに携わっています。

ケーニグセグが4人乗り、1700馬力の「ジェメラ」発表!エンジンは2リッター3気筒、モーターは1100馬力

| 元サーブ親会社からのバックアップを得て大きくステップアップ | ブガッティ・シロン・スーパースポーツ300+に対抗するスーパースポーツを発表すると見られていたケーニグセグですが、なんと驚きの「4人 ...

続きを見る

そこで今回同氏はカーデザインについていくつか独自の見解を述べており、まず最新のケーニグセグCC850については”「より多く」が良いとされるハイパーカー界の主流の傾向に対するちょっとした解毒剤になった”とも。

ケーニグセグCC850は、ケーニグセグが最初に発売したハイパーカー「CC8」へのオマージュ的なデザインを持っていますが、同氏はそのデザインを継承しつつ現代化することに最大限の注意を払ったといい、「時代を超えたピュアさ」を目指したとコメント。

2

ちなみにサシャ・セリパノフ氏はずっとケーニグセグのデザインを行うことを夢見ていたといいますが、「ケーニグセグで過ごした年月は、私の職業人生の中で最も貴重なものとなりました」とコメントしつつ、今はケーニグセグを去っているようですね。

ケーニグセグが世界最速・世界最強のマニュアル車「CC850」を発表!20年前に発売したCC8へのオマージュ、出力は1385馬力
ケーニグセグが世界最速・世界最強のマニュアル車「CC850」を発表!20年前に発売したCC8へのオマージュ、出力は1385馬力

| さすがにこの出力のクルマをマニュアル・トランスミッションにて操作するのはちょっと恐ろしい | ケーニグセグ創業者50歳の折に50台のみが限定販売 さて、ケーニグセグは20年前に最初の市販車「CC8 ...

続きを見る

自動車のデザインは今後どう変わる?

そして話題は「この5年間、材料科学、生産方式、エンジニアリングにおける最近の技術革新は、自動車のデザインにどう影響を与えたか」ということに及びますが、ここで同氏は現代と以前とのデザインプロセスの差異についても語っていて、以前のデザイナーはそのクルマの開発プロセスに深く関わり、そのクルマについても深く理解していたとコメント。

反面、現代では「デザイナー」「エンジニア」といった専門職の分業化が進んでおり、それぞれが自らの主張をもって争う立場にある、とも。

つまり「デザイナーがこうしたい」と考えても、技術的な成約にて妥協の必要があり、生産上の問題でまた妥協し、さらには販売現場からの要望も盛り込まねばならないということになってしまい、結局は思うような作品を作ることができず、かつてのように、「そのデザインを実現するために技術的なソリューションを考える」というような、エンジニアリングとデザインとの融合が薄くなってしまったと考えているもよう(皆で考えながら理想の車を作るのではなく、それぞれの立場やコストという観点から、商業的に失敗しないクルマを作ろうという方向に変わってしまっている)。

もちろん同氏は「昔のやり方」にてクルマをデザインしたいと考えていて、「エンジニアリング、パッケージング、性能、応力解析、空力、軽量化、人間工学、ヒューマンファクター、ロジスティクス、生産、マーケティング、販売、顧客との対話」など、クルマに関わる全てに対して正面から取り組み、それをデザインに活かしたいと考えているようですね。

EV時代になると「スーパーカーとハイパーカーは窮地に」

そして次はEVについて。

サシャ・セリパノフ氏はEVに監視「多くの場合、ガソリンエンジン車の問題を解決している」と述べ、乗員や荷物のためのスペース、長いホイールベースと短いオーバーハング、大きなホイール、そしてコンパクトなスケートボードプラットフォームを採用することで可能性が広がると考えており、むしろ歓迎の意を示しています。

Nissan-Ambition-2030 (3)

反面、EV時代になって苦しむのは「パフォーマンスカーやハイパーカー」だとコメントしており、これはEVのパフォーマンスが簡単にガソリン車を越えてしまっている現実を指摘。

【動画】最初の100メートルでもう時速240km/h!あまりの速さに笑ってしまうほどのマクマートリー・スピアリングがF1マシンより速く走って23年ぶりにグッドウッドの記録更新
【動画】最初の100メートルでもう時速240km/h!あまりの速さに笑ってしまうほどのマクマートリー・スピアリングがF1マシンより速く走って23年ぶりにグッドウッドの記録更新

| 記録達成を事前の目標に掲げていたが、まさか本当に達成することになるとは | 文字通りとんでもないクルマが出てきたものだ さて、先日お伝えした「異形の怪物」マクマートリー・スピアリング(McMurt ...

続きを見る

なお、ケーニグセグ創業者、クリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏も同様の見解を示しており、EV時代になるとガソリン時代ほど「ハイパーカーの郵政が発揮されない」とも。

そしてサシャ・セリパノフ氏は「失われてゆく旧来の自動車のドラマ、匂い、音、振動を補う方法を考え出さなければなりません」と語っており、それらに固執するのではなく、新たな価値観を模索していることも示しています。

ケーニグセグCEO「ピュアEV時代になると、テスラやポルシェと、ハイパーカーとの性能差が小さくなる。その状況で、それらの10倍の価格で電動ハイパーカーを売る自信はない」
ケーニグセグCEO「ピュアEV時代になると、テスラやポルシェと、ハイパーカーとの性能差が小さくなる。その状況で、それらの10倍の価格で電動ハイパーカーを売る自信はない」

| おそらくは多くのプレミアムカーメーカーも同じ課題を抱えていると思う | エレクトリック時代では、各自動車メーカーが「自動車本来の性能以外」に存在意義を見つけ、クルマに与えねばならない さて、ケーニ ...

続きを見る

現在の役に立たないトレンドは?

そして次は自動車業界の「役に立たないトレンド」。

これについては「クルマのデザインはどんどん安っぽく使い捨てになっている」述べ、カーデザインのファストファッション化に言及。

反面、建築はそういった影響がなく、スマートフォンなどは機能を形状に反映させるといった方向性を採用しており、しかしカーデザインは製品サイクルの短縮やマーケティング主導といった側面が強く、冷静さを欠いていると表現しています。

Lynk-Co-Next-Day-Concept (9)

そんな中でも、サシャ・セリパノフ氏はカヌー、ルシード、ポールスターのデザインが優れていると感じているそうですが、優れたクルマ、そして優れたデザインは「美意識と機能の調和を実現すること」によって達成されることになり、初代ランドローバー・ディフェンダー、初代ミニ、初代フォルクスワーゲン・ゴルフ、フェラーリ330P4などをその例として挙げています。

加えてそのクルマの作られた目的も重要であり、「その主な機能は何なのか、世界の中での位置づけはどうなのか、堅牢で機能的な道具なのか、世界記録を打ち立てるアスリートなのか、中小企業の問題を解決してくれる存在なのか、それともどんなことにも対応できる家族のような存在なのか」といった使命を重要視しているもよう。

そしてもちろん、明確な使命を持たないクルマは曖昧なデザインしか持ち得ないということになりそうです。

本家ミニが自らクラシックミニをエレクトリック化する「ミニ・リチャージド」プログラムを公開!これで旧ミニも安心して乗ることができそうだ

影響を受けたデザイナーは?

そして次は「影響を受けたデザイナー」。

同氏はロシア出身であり、幼少期にはクルマに関する情報が不足していたものの、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインに進学してはじめてカーデザインについて学び、ケン・オクヤマ氏による授業が記憶に残っているほか、フォルクスワーゲン・デザイン・センター・カリフォルニアでのインターンシップにてデレク・ジェンキンス氏から指導を受けたことに言及しています。

その後はフォルクスワーゲングループにて職を得ることになり、ワルター・デ・シルヴァ、トーマス・インゲンラス、ピーター・シュライヤー、アキーム・アンシャイト、ルク・ドンカーヴォルケといった名を「デザイナーとしての成長に大きな影響を与えた人たち」として挙げています。

ブガッティ

一方、好きなクルマへと視点を移すと、ゴルフ1、アルファロメオGTV(ベルトーネ)、ダットサン510、ラダ・ニーバ、ランチア・デルタ・インテグラーレ、ランドローバー・ディフェンダー、ゴルフMk4、初代ミニ、アウディA2、フォードGT40、フェラーリ330P4など。

ちなみに現在乗っているのはR35 GT-Rだといい、これは自身のデザインしたブガッティを引き合いに出し「ヴェイロンの90%ほどの性能を持ち、しかし価格はわずかその3%」と語っており、基本的にはノーマル、しかし前後に15ミリのスペーサーを入れて毎日乗っているのだそう。

GT-Rに乗るきっかけとしては、2009年頃にタミヤの発売した1/10サイズのラジコンカーを購入してそのスタイリングの虜になったためで、「サウンドも最高」だと語っていて、相当に気に入っているようですね(かなり長いインタビューではあるが、この話が一番衝撃的だった)。

参照:CARSCOOPS

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->スウェーデンの自動車メーカー, >ブガッティ
-, , , , , ,