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これまで予想を超える成長を続けてきたポルシェが今年は「目標据え置き」。インフレに加え金利高、中国の減速が成長の重しに

2023/10/26

ポルシェ

| 現在、自動車だけではなく多くの高級品が販売不振に苦しんでいる |

このままでは「負のスパイラル」に突入してしまう可能性も

さて、これまでずっと業績を塗り替えることで破竹の成長を遂げてきたポルシェですが、2023年第3四半期の累計決算が「予想の範囲」にとどまり、通年での着地予想を(当初の計画どおりに)据え置く、とコメント。

なお、予想を上回らず「予想通り」となった理由については、「高級車セグメントが、他の高級品市場と同様に、コスト上昇や金利上昇に伴う消費者心理の冷え込みに苦しんでいる」ためだとしています。

ちなみにですが、ポルシェがIPOを行う際、多くのアナリストが「ポルシェはフェラーリほどのブランド力はなく、よって経済情勢が悪化すればその基盤が揺らぐだろう」とコメントしたことがあり、まさに今回そのとおりになった、と考えていいのかもしれません。

ポルシェ「消費者は高級品の購入に消極的である」

ポルシェにて最高財務責任者(CFO)を務めるルッツ・メシュケ最高財務責任者(CFO)によれば、「現在のところ、高級車メーカーのサプライチェーンは改善し、在庫は減少傾向にあるが、高いインフレ率と、2024年に発売する新商品のための投資のピークが重なり、コストは依然として高いままだ」。

加えて「各国政府が金利を大幅に引き上げており、顧客が(高級品を購入する事に対し)かなり消極的な状況を作り出している」とも述べていますが、この”金利”についてはつい先日もテスラCEO、イーロン・マスク氏が言及したばかり。

テスラ
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さらには高級品市場全般が大きな落ち込みに直面し、主に中国市場が減速したことでルイ・ヴィトンを筆頭とするLVMH、グッチ率いるケリングなど高級ブランドの販売も伸び悩み(もしくは減少し)、これを受けてLVMHだと株価が(この半年で)20%近くも下落しています。

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ポルシェ幹部は中国へと飛び、状況を確認

なお、現在のポルシェにとって最大の市場は中国であり、しかしその中国では1−9月までの累計で納車台数が12%も減少しており、これはポルシェにとって看過できる数字ではなく、そのため(ルッツ・メシュケ氏によれば)ポルシェの幹部が中国へと飛び、「ディーラーと今後の戦略について話し合いを持った」。

しかしながら、今後も中国での販売が下がり続けるようであればポルシェもグローバルでの戦略を見直さねばならない時期がやってくるものと思われ、予断を許さない状況にあるのかもしれませんね(実際のところ、中国の状況が一朝一夕に改善するとは思えない)。

一方でポルシェには明るい話題もあり、2024年には新型パナメーラとフェイスリフト版のタイカン、そしてピュアエレクトリック版のマカン、さらに「新世代のスポーツカー(これについては詳細不明。718ケイマン / ボクスターのEVバージョンかも)を発売する予定。

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その反面、これら新型車を開発するためのコストも巨額にのぼり、ポルシェは2023年までに研究開発に20億ユーロを投じており、これはポルシェがこれまでに(9ヶ月間で)投じた中では「最高額」なのだそう。

いまのところポルシェは今年1~9月の売上高利益率だと18.3%増、営業利益では9%増の55億ユーロを計上していますが、これについても「新型車の売れ行きが悪ければ」コストを回収することが難しくなり、状況によっては「苦しい」場面も出てくるかもしれません。

なお、ピュアエレクトリックモデルであるタイカンの納車台数は11%増の27,885台となっているので、新型タイカン、そしてマカンEVについても期待ができ、電動化車両がポルシェの危機を救う瞬間がやってくることも予想され、ポルシェの未来が「どちらに転ぶのか」は現時点ではなんとも想像がつきかねる、といった状況です。

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参照:Reuters

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