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フェラーリF80は「近代のフェラーリの考え方を反映した技術上の頂点」。フェラーリはF430以降大きくそのあり方をシフトし、ロードカーにおいては常にこういった革新を行ってきた

フェラーリF80

Image:Ferrari

| フェラーリは常に変化し続けており、ボクらはその考え方を理解し総合的にラインアップを捉える必要がある |

現時点でF80はフェラーリのロードカーの一つの到達点である

さて、あちこちで議論を巻き起こしているフェラーリF80。

その多くは「V12エンジンではなくV6エンジンを積んだこと」に集約されるかと思いますが、フェラーリはF80について「未来から来たクルマ」だと表現しており、つまりF80は過去を振り返りノスタルジーを表現したクルマではない、ということに(クラシカル路線の担当は”イコーナ”シリーズである)。

そしてF80の根幹にある考え方は「いかに速く走ることができるか」「いかに効率的にそれを実現できるのか」にあるのだと考えてよく、そのためのフェラーリの最新の回答がこのF80だと考えると合点がゆくのかもしれません。

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フェラーリは常に前に進んできた

そしてフェラーリのロードカーにおける考え方を理解するにはいくつかの例を見るとわかりやすく、まずひとつめの例はF430。

F430は最後のマニュアルトランスミッションを搭載したミッドエンジン・フェラーリとして記憶されているかもしれませんが、F430は新しい車両ダイナミクスのアプローチを提示し、F80が持つ一つの考え方を理解するのに役立ちます。

F430は電子式リアデフを搭載した最初のフェラーリであり、これによりハンドリング特性を自由に変えることができたという特徴を持っていて、ステアリングホイールの「マネッティーノ」スイッチで設定を切り替えることによりデフのロック特性、エンジンのスロットルマッピング、ダンパーの剛性、トラクションとスタビリティコントロールの介入、パドルシフト式のF430ではトランスミッションの設定が切り変わります(さらに、ダンパー以外のシステム同士が連携していた)。

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F430以降、フェラーリはこれらのシステムをより洗練させ、それぞれの相互作用を拡大しており、599GTBでは、より迅速に反応するマグネット流体ダンパーが導入され、さらに細かなシャシーコントロールが可能になったほか、458スペチアーレではリアルタイムでヨー角を計算し、エンジントルクとeデフ(電制デフ)のロックを調整するサイドスリップ角コントロール(SSC)が登場していますが、このSSCは後に非常に重要なポジションを獲得し、フェラーリの新型車発表の際のプレスリリースでも必ず上位に記されるようになったほど。

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さらにF12tdfではリアホイールステアリングが追加され(これに伴いフロントタイヤの幅が極端に広くなっている)、488GTBではSSCシステムにアダプティブダンパーが統合されることとなりますが、812スーパーファストでは電動パワーステアリングの採用、そのハードコアモデルである812コンペティツィオーネでは最新ロジックを持つリアホイールステアリングシステムが導入されていて、このシステムでは個別のダンパー調整機構が含まれ、特定のダンパー(のダンピング)を柔らかくすることで特定のタイヤが高いグリップを得られるように設定が変化するほか、ブレーキ時には両方のリアホイールを内側にトーインさせ、これによって車両のリアエンドを安定させるという制御も行われています(ただ単に後輪の角度を変化させるだけのものではない)。

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そして更に大きな変化をもたらしたのがSF900ストラダーレで、これはフェラーリの初のハイブリッドではありませんが”初の電動化全輪駆動車”です。

各フロントホイールには個別のエレクトリックモーターが搭載され、超高速トルクベクタリングの新たな可能性をフェラーリにもたらしていますが、前輪が「カーブの出口で車体を引っ張る」ことにより、これまでの後輪駆動車では高い技術が要求された”限界領域における挙動のコントロール”を「いとも簡単に」行い、かつ高いレベルにまで引き上げているわけですね。

なお、このシステムは後にV6エンジンとの組み合わせにて499Pへと搭載されルマン24時間レースにて大きな成果を挙げていますが、このV6エンジンもまたフェラーリが「全長をコンパクトに抑え、重量配分を改善するために」導入したもので、かつ「ハイブリッドシステムとの組み合わせを前提」としており(296GT3ではこれが取り払われているものの、それでも高い戦闘力を誇る)、新しい技術の採用を前提に設計されたもの。

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そしてこの「V6+ハイブリッド」は、ラフェラーリに搭載されていた「V12+ハイブリッド」に比較して驚くほど小さく、これは「同じ成果を発揮できるのであれば、より軽量でコンパクトな方がいい」という考え方を反映したものであると思われます(そしてこのV6+ハイブリッド+4WDはF80にも引き継がれている)。

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さらにフェラーリはプロサングエにて新しいサスペンションシステムを導入していますが、これは主に重い車体と高い乗り心地を管理するため導入されたもので、アクティブスプールバルブ(TASV)ダンパーを核としたアクティブサスペンションシステムであり、これらのダンパーには48ボルトのモーターが搭載され、ダンパーのピストンに接続されたボールスクリューを駆動させることで路面やドライバーの入力に依存せずにサスペンションに力を加える(タイヤを地面に押し付ける)ことが可能となります。

フェラーリはこのダンパーを使用してすべてのボディモーションを管理し、硬いスプリングやアンチロールバーの必要性を完全に排除することに成功していますが、これもまたフェラーリがもたらしか革新の一つであり、やはりF80にも取り入れられているテクノロジー。

フェラーリはロードカーにおいて常に「革新性」を追求してきた

こうやって見ると、フェラーリは常に「より速くクルマを走らせるため」の方法を模索してきたということがわかりますが(上述の通り、F430以降ではその傾向がより鮮明になっている)、その集大成が最新モデルであるF80。

さらにF80ではアクティブエアロ(これは特に目新しいものではないが、F80はこれまでで最も高いダウンフォースを発生させるフェラーリのロードカーである)、電動ターボの採用といったトピックも追加され、この電動ターボでは、タービンとコンプレッサーの間のシャフトに小さな電動モーターを仕込んでおり、ブースト圧に関係なく過給圧をコントロールできるわけですね(すでにメルセデス・ベンツ、ポルシェも導入済み)。

ここでの明らかな利点はターボラグをほぼゼロにすることですが、これらターボは車のバッテリーにエネルギーを戻すこともでき、さらにフェラーリは、各ギアでブースト圧を変化させ、V6エンジンに自然吸気的なフィーリングを与えることも可能となっています(この”ギア間で過給圧を変える”技術はV8エンジンをツインターボ化した際に導入された)。

よってフェラーリがF80を「未来から来たクルマ」と呼ぶこと、それ以前に「未来」を意識して作り上げたクルマであることに異論を挟む余地はなく、これこそがフェラーリの進む道であるという方向性を明確に示したハイパーカーではないかと考えています。

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ただ、こういった方向性を採用することが可能になったのも「ラインアップの多様化」によってもたらされたものであると考えてよく、実際のところフェラーリは先日12チリンドリの」思い切ったシフトについて「V12フロントエンジンモデルをパフォーマンス面におけるフラッグシップとする必要がなくなったから」とコメント。

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そしてそれと同様に、F80がV12エンジンの呪縛を脱し「未来」へと向かうことができたのもイコーナシリーズのおかげだと考えられ、よってぼくらはフェラーリのラインアップを総合的に捉え、フェラーリの考え方を理解する必要があるのかもしれません。※F80はこれまでフェラーリが培った技術、そこから先の技術を使用していかに速く走れるかを追求し、イコーナシリーズでは感情そしてコレクティブルな側面を重視

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