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フェラーリ「12チリンドリでは、急進的で破壊的なデザイン手法を採りました。なぜならV12フロントエンジンモデルはいまやパフォーマンス面でのフラッグシップではないからです」

フェラーリ「12チリンドリでは、急進的で破壊的なデザイン手法を採りました。なぜならV12フロントエンジンモデルはいまやパフォーマンス面でのフラッグシップではないからです」

Image:Ferrari

| 今やパフォーマンス面だと、V6/V8ミドシップのほうが優れ、パワーにおいてはV8ハイブリッドのほうがV12の上を行く |

よってフェラーリはV12フロントエンジンモデルを「新しいフェラーリの象徴」として再定義

さて、フェラーリは「過去最高」と言われるフロントV12エンジン搭載モデル、12チリンドリを発表したところですが、そこに採用されたのが全く新しいデザイン言語」。

12チリンドリのデザインモチーフは(V12フロントエンジンモデルの象徴でもある)365GTB/4”デイトナ”にあると一般に言われるものの、フェラーリのチーフ・デザイン・オフィサー、フラビオ・マンゾーニ氏は「12チリンドリは、デイトナの再解釈やオマージュではない」と(12チリンドリの発表時に)語っており、たしかに同氏の作品は296GTB/296GTSやデイトナSP3、モンツァSP1/SP2を見てもわかるとおり、一つのモデルに縛られることなく、幅広い角度からフェラーリの歴史を解釈し、そこへさらに「未来へと向かう」要素を付与しているようにも思えます。

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フェラーリのデザインチームはこうやって12チリンドリをデザインした

そして今回フェラーリが公開した最新コンテンツが「12チリンドリのデザインについて」。

12チリンドリをデザインする過程において、フェラーリはまったく新しいデザイン言語を考案したといい、その根底にあるのは「フェラーリの歴史よりも、機能に従う美しさの追求」。

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たしかに象徴的なV12エンジン搭載モデルである250GT SWBや、もちろん365GTB/4 デイトナ、近代の550マラネロや812スーパーファストと比較しても「あまりに大胆」なデザインを持っており、過去よりも未来を見据えたデザインがなされているようも思えます。

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フラビオ・マンゾーニ氏によれば「12チリンドリはこれまでのフェラーリのデザイン言語、とくにV12フロントエンジンモデルのスタイルを根本的に書き換えることを目指しています。そしてそのために用いられた手段は”自動車の世界には存在しないデザイン言語”です」。

フラビオ・マンゾーニ氏は多才な人物であり、これまでにも「フェラーリの宇宙船」を考案したり、通常だとOEM先に任せっきりになることが多いライフスタイル系グッズであっても直接関与することでも知られ、ちょっと前だとウブロとのコラボレーションによる腕時計、その後はポルトローナ・フラウとの共同開発によるチェア、最近だとデイトナSP3をイメージしたモンブランの万年筆についても「自身が直接デザインした」と言われていて、つまりはそれだけデザインに対して強いこだわりを持ち、そして自動車以外の分野にも積極的に関わろうとする人物だということがわかります。

よって、同氏が「自動車業界以外にインスピレーションを求める」というのはごく自然な流れなのかもしれません(航空機業界に強い興味を持っているとされ、実際に12チリンドリの車体後部の黒い”トライアングル”はステルス戦闘機をイメージしていると説明され、デルタウイングと呼ばれている)。

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フェラーリのV12フロントエンジンモデルの位置づけは刻々と変化している

フェラーリにてスポーツカー・エクステリア・デザイン責任者を務めるアンドレア・ミリテッロ氏によれば「12チリンドリのデザインを考案する段階において、その背景の理解は必須であった」。

どういうことかというと、フェラーリにとって常にV12モデルはフラッグシップであり、実際に812スーパーファスト登場時は「もっともパワフルで、もっともパフォーマンスに優れる」クルマであったわけですね。

ただ、その後には1,000馬力を誇るSF90ストラダーレ(V8ツインターボ+ハイブリッド)が登場し、パフォーマンス、そして出力両方の面において812スーパーファストを凌駕してしまい、つまりV12フロントエンジンモデルは「パフォーマンス面でのフラッグシップ」から「イメージ面でのフラッグシップ(あるいはフェラーリの象徴)」へと移行しつつあるというのが現在の状況です。※296GTBであっても12チリンドリと同じ0-100km/h加速タイムを誇り、0-200km/h加速だと12チリンドリよりも0.6秒も速い

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こういった現在の状況の変化を踏まえ、フェラーリの言葉を借りるならば「12チロンドリのデザインにおいては、パフォーマンスを強調するのではなく、より総合的な、かつ洗練されたアプローチを模索すすることになった」とのことですが、これが「先代である812スーパーファストとは全く異なるデザイン言語を採用した理由」だということに。

かくしてフェラーリのデザインチームは「新しいポジションが与えられたV12フロントエンジンモデル」にふさわしい”新しいデザイン”を生み出す機会に恵まれ、そこで採用されたアプローチは「過去を破壊して未来に進むこと」。

たとえば自動車の「顔」となるヘッドライト、そしてグリルから表情を排除し、これによって”宇宙船のような、SF的”なルックスを演出していますが、ここにすべてのライティング機能を盛り込むなど”機能的な”手法も盛り込まれています(このあたり、フェラーリの言う”機能に従う美しさ”ということなのかもしれない)。

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フェラーリ12チリンドリは365GTB/4 デイトナの再来ではない

そして興味深いのが、アンドレア・ミリテッロ氏が改めて「12チリンドリのフロントに採用されるラップアラウンドバンドは、365GTB/4 デイトナの再解釈ではない」と強調していること。

同氏は両者の共通性を認めつつも、「デイトナのスタイルを再現しようとした結果のラップアラウンドバンドではなく、機能に基づいた形状のラップアラウンドバンドである」と述べ、そしてこの考え方は前後フェンダーをつなぐ「ブリッジ」、そしてテールランプと一体化したリアウインドウなど随所に反映されている、ともコメントしています。

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なお、フラビオ・マンゾーニ氏が強調するのは「12チリンドリのデザインにおいて、もっとも重要なのはリヤセクションである」ということ。

すべての機能を集約した”デルタウイング(ランプやウインドウのみではなく、2つのアクティブフラップまでもが内蔵される)を例に挙げ、ここにはクルマとして求められる機能はもちろん、テクノロジー、そして美しさが統合されていると述べていますが、同氏は296GTBにおいても「後ろからの眺め」を一番のお気に入りに掲げており、リヤを非常に重視する傾向があるのかもしれません。

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12チリンドリはその画像や動画を見るだけでも直感的に「カッコいい」と思えるクルマではあるものの、そのデザインの背景には「V12フロントエンジンモデルのあり方の変化」という事情が存在し、そういった変化を踏まえたうえで「フェラーリのV12フロントエンジンモデルはどうあるべきか」という再定義が(フェラーリのデザインチーム内で)なされていたということがわかります。

そしてその実現のため、破壊的なアプローチ、機能を最優先としたデザイン手法が採用されたということが今回明かされたわけですが、そういった事実を知ったうえでもう一度このクルマを見てみると、また違った魅力が感じられるようにも思います。

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参照:Ferrari

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