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トヨタが月面探査車「ルナクルーザー」に水素燃料電池技術を導入することを検討中。氷を水に、水を水素に分解することで活動範囲を飛躍的に拡張

2023/07/24

トヨタが月面探査車「ルナクルーザー」に水素燃料電池技術を導入することを検討中。氷を水に、水を水素に分解することで活動範囲を飛躍的に拡張

| 月はともかく、「氷の惑星」だと燃料を無限に獲得できそうだ |

燃料を持ってゆくのではなく、「そこにあるものを使う」という考え方は非常に効率的である

さて、トヨタは2019年から月面走行車「ルナクルーザー」の開発を行っていますが、これはJAXAとの共同プロジェクトとなる「オールジャパン」での月面有人飛行、そしてNASAの進めるアルテミス計画とともに月面へと送り込むことを念頭に入れたもの。

さらに日本政府は「ゲートウェイ」と呼ばれる独自の月宇宙ステーションを稼働させたいと考えているとも報じられていますが、この計画に合わせてのことなのか、日産そしてホンダも「宇宙への進出」を表明したのは記憶に新しいところです。

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トヨタは自身の強みを宇宙でも活かす

そして今回新しく報じられたのが、「トヨタはルナクルーザーに水素技術を利用し、これが実現できれば、月面でより自由に、場合によっては無期限に走行できるようになる」ということ。

御存知の通りトヨタは水素燃料電池技術に投資を行う数少ない自動車メーカーであり、これは自動車メーカー間で考え方が分かれるところで、フォルクスワーゲングループは(燃焼用ではなく燃料電池用としての水素には)全く興味を示さず、トヨタ同様に水素燃料電池技術に関心を示しているのはヒョンデとBMWが挙げられます。

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そこで気になるのが「トヨタはどうやって水素を宇宙で生かすのか」。

これについては至極簡単な回答が用意されていて、その方法とは「月面にある氷を使用する」。

日中はソーラーパネルを使って氷を水へと変換し、その水を電気分解する過程で生じる水素を使用し、14日間にわたって、ルナクルーザーのエレクトリックモーターに電力を供給するという計画を示しており、このプロジェクトは、トヨタの水素モビリティの経験に基づき、月用の再生可能水素燃料電池車を開発するものだとしています。

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フォルクスワーゲン
VW「水素は全く無意味。VWでは乗用車に水素パワートレーンを導入することは一切ない」。一方トヨタ、BMW、ヒョンデは水素に未来を見出しているこの矛盾

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なお、この電気分解においては酸素も取り出せるものと思われ、生命維持用にこれを転用すれば「一石二鳥」。

つまりトヨタはその技術を宇宙探査において有利に働せることを目指しており、水素の供給源として水を使用することで、ルナクルーザーはすでにそこにある資源を利用し、より長いミッションに乗り出すことができるわけですね。

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なお、現在のルナローバーは充電可能なバッテリーを動力源としていますが、行動範囲がこのバッテリーの蓄電能力によって制限され、「行って帰る」ことを考え、さらに安全マージンを考慮すると「かなり狭い半径でしか移動ができない」と言われます。

ただ、今回報じられているトヨタの方法だと飛躍的に活動範囲を広げることができ、宇宙探査に関して大きな進展をもたらすことは間違いありません。

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ただし現時点では問題も

ただ、現時点ではいくつか問題があり、最大の問題はこの方法が「机上の空論」であること。

つまり現時点では「氷の確保」がどの程度現実的なのか(あるいは非現実的なのかもしれない)、そして氷を水に変えるだけの電力を確保できるのかどうかといったことがわかっておらず、しかしトヨタは他企業の協力を得て、いつかその技術を開発するという意思を持っているようですね。

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トヨタの月探査プロジェクト責任者である山下氏によると、「月面で長期的かつ安定的な研究を行うために、長期にわたって現地で様々なものを調達することを目指している」と述べ、しかし「短期的には、ミッションのたびに水を送る必要があるかもしれない」とも。

NASAは、アルテミス計画への貢献の一環として、2029年までに日本の宇宙機関(JAXA)が独自の月探査機を提供することを期待しているそうですが、トヨタによれば、来年秋までにはルナクルーザーの受注が確定し、就航後は年間42日間、2人の宇宙飛行士を乗せることができ、少なくとも10年間は使用できると見込んでいるのだそう。

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参照:Reuters

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