| いずれのジャンルも「新しい挑戦」ではあるものの、ホンダの「コア技術」を活かせることが共通しているようだ |
「HONDA」ロゴ入りのロケットが打ち上げられる姿を見てみたいものだ
さて、ホンダがなんと「宇宙」事業への参入を表明。
具体的に何をするかというと「ロケットの打ち上げ」「遠隔操作できるロボット」を作ったりということですが、ただでさえお金が無いと言われるホンダだけに「大丈夫か・・・」という印象も。
宇宙産業、ロボット産業ともに莫大な投資が必要となり、しかも収益化できるのはずっと先になりそうな事業だけに、今後しばらくはホンダの収益を圧迫するのは間違いなさそうです。
ただ、ホンダは「ホンダジェット」を長い時間を経たのちに軌道に載せて収益化を実現しているので、その「次」としてこの宇宙産業を捉えているのかもしれません。
コア技術を生かした新領域へのチャレンジ
ホンダによると、”すべての人に「生活の可能性が拡がる喜び」を提供する2030年ビジョンの実現”のためだといい、これらチャレンジについては以下の通りコメントしています。
Hondaは、経営基盤となる「既存事業の盤石化」を図りつつ、「環境負荷ゼロ社会」と「交通事故ゼロ社会」の実現に徹底してこだわり、さらには「新領域へのチャレンジ」にも取り組んでいます。現在、Hondaの研究開発を担う本田技術研究所では、環境と安全の先行技術の研究に加え、モビリティの可能性を“3次元”や、時間や空間の制限に縛られない“4次元”、さらには宇宙へと拡大し人々の時間や空間に新たな価値をもたらす独創的な技術研究を進めています。
こうした取り組みを可能とするのが、燃焼・電動・制御・ロボティクス技術といったHondaが培ってきたコア技術であり、これらの強みを総合的に活用することで、新領域においても人々の生活の可能性を拡げる喜びの実現にチャレンジします。
ホンダはこうやって宇宙に挑戦する
まずは宇宙への挑戦についてですが、ホンダによると「宇宙領域をコア技術を生かした“夢”と“可能性”へのチャレンジの場ととらえ」「燃料電池や高圧水電解技術を生かした、月面での循環型再生エネルギーシステムの構築」「多指ハンドやAIサポート遠隔操縦機能、高応答トルク制御技術などの月面遠隔操作ロボットへの応用」「若手技術者の発案による、燃焼・流体・制御・誘導技術などの応用による”再使用型の小型ロケット”の研究開発」。
こうやって見ると、これまで「なんの役にもたたないんじゃないか」と考えていた燃料電池やアシモの技術もここで生きてくるようで、もしかするとホンダは「投下した資本を無駄にしないため」にも宇宙産業への進出を考えたのかもしれません(もちろん、ホンダの掲げた理由の通り、それだけではないと思いますが)。
なお、メジャー自動車メーカーがロケットを手掛けるのは他に例がないそうで、しかし自動車メーカーと宇宙産業という結びつきだと、GMやポルシェが月面車の製造や設計に関与したり、アウディが小型月面車を提供したり、トヨタが友人与圧ローバー(ルナクルーザー)の開発を発表したりしていますね。
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ちなみにホンダは「ロケットの一部を着陸させて再利用を行う」ことを考えているといいますが、これはテスラCEO、イーロン・マスク氏が(テスラとは別に)運営している「スペースX」と同じ発想のものだと思われます。
ホンダは月面での遠隔操作ロボットも
さらに、上述の通りホンダは「宇宙飛行士や、地球上からでも遠隔操作できる月面ロボット」を開発するといい、これは現在「アバターロボット」と呼ばれています。
これによって宇宙飛行士のリスクを低減することが可能となるわけですが、実用化は2030年以降だといい、これまた利益が出るまでホンダが耐えることができるかどうか心配になってきますね。
ただ、ロケットやアバターロボットともども、これまでホンダが培ってきたロボティクス技術ほか様々な「コア技術」を活かすことができると述べており、ホンダとしては「自社の持つ技術を活かし、どうやって自動車販売に頼らず会社を存続させるのか」と自問自答した際の答えが「宇宙産業」「ロボット産業」だったのかもしれません。
これらについては、ロケットとあわせてJAXAとの共同研究が進められるとのことですが、その実用化が待たれますね。
更にホンダは「空」での存在感を強める
更にホンダは「Honda eVTOL(電動垂直離着陸機)」の開発にも取り組んでいるといい、これに用いられるのは「電動化技術を生かしたガスタービンとのハイブリッド」。
オール電化による「空飛ぶ車」は航続可能距離の問題があり、これを解決するための方法が「ガスタービン」だとしていますが、このeVTOLにもやはり燃焼や空力、制御技術という、ホンダが培ってきた「コア技術」が用いられているといいます。
いずれの新しいチャレンジについても「既存技術を活かし、ホンダの強みが発揮できる」ことが共通点だということになりそうですね。
なお、これから自動車が「電動化」されるようになって趣味性を失ったりすると「今までのように車が売れない」社会になる可能性があり、かつ価格競争力のある中国の自動車メーカーが勢力を増す可能性も。
そういった中でホンダが存在感を維持することは難しく、よってほかのジャンルに活路を見出すのは企業として当然の流れだとも考えられます(そうしないと企業は成り立たない)。
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今回のチャレンジが成功するかどうかはわかりませんが、もしかすると数十年後にはホンダが宇宙開発やロボット産業の要になっている可能性があり、「ホンダはね、昔クルマを作ってたんだよ」と言っても信じることが出来ない世代が主流になっているという時代が来るのかもしれませんね。
参照:HONDA