| 2019年に発表された「45EVコンセプト」がヒョンデのデザイン的方向性を大きく変えた |
近年、ここまで一つの自動車メーカーのデザインに影響を与えたクルマも珍しい
さて、韓国ヒョンデとジウジアーロ(正確にはジョルジェット・ジウジアーロとファブリツィオ・ジウジアーロの父子が経営するデザインハウス、GFG)が1974年のヒョンデ・ポニークーペ・コンセプトをリバイバルすると発表。
そもそもこのヒョンデ・ポニークーペは1974年当時、ジョルジエット・ジウジアーロによってデザインされたものですが、ちょっと話をややこしてくしているのは、この(ポニークーペをデザインした)ときジョルジエット・ジウジアーロは自身のデザインカンパニー「イタルデザイン」を主催しており、しかしその後このイタルデザインはフォルクスワーゲングループに買収され、その後にジョルジエット・ジウジアーロはイタルデザインから一切の手を引き、新しく自身の息子とともにGFGをはじめたわけですね。
ただ、このヒョンデ・ポニークーペは著作権上「イタルデザイン」に属しているようで、つまり現在のGFGならびにジウジアーロがなんらかの権利を有しているわけではなく、よって「そのまんま」に近いデザインでリバイバルしてしまうと、イタルデザインとの間に一悶着がでてきそう(自身がかつて作った会社と、新しく自分が作った会社との間で争うことになる)。
ヒョンデ・ポニークーペのデザインは「デロリアンDMC-12の元ネタ」だった
なお、ジョルジエット・ジウジアーロは公式に「このヒョンデ・ポニークーペ・コンセプトはデロリアンDMC-12をデザインする際のインスピレーション元となった」とコメントしており(デロリアンDMC-12もジウジアーロによるデザインである)、ある意味でこのポニークーペ・コンセプトはジウジアーロにとってかなり重要なクルマということになりますね。
このポニー・クーペ・コンセプトは実際に市販されることはなく、しかし1975年から1990年まで販売されたポニーシリーズの先駆け的存在となっており、ヒョンデにとっても重要な位置を占めるのは間違いなさそう。
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実際のところ、ヒョンデはこのポニークーペ・コンセプトの45周年を記念して2019年に「45EVコンセプト」を発表したことがあり、これはポニークーペコンセプトを現代風に解釈し、かつ「45周年」を表現するために「45度」の傾斜を車体各部に使用したもの。
さらにはレトロ感、当時のカクカク感を出すために「デジタルピクセル」ライトを採用するな随所に実験的なデザインを採用しています。
そしてこの45EVコンセプトは発表されるやいなや熱狂的とも言える反響によって迎えられることになり、よってヒョンデは「計画外ではあるものの」この45EVコンセプトの市販を推し進め、大ヒット作となる「IONIC 5(アイオニック5)」として発売したわけですね。
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さらにデジタルピクセルランプは形を変えてヒョンデのミニバン「スターリア」に採用されるなど、45EVコンセプト以降はヒョンデのデザイン的方向性が大きく変わっており、その意味で今回ヒョンデが「そのすべての源である」ポニークーペ・コンセプトを再構築しようと考えたのは自然な流れなのかもしれません。
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新型コンセプトカーは2023年春に公開予定
そしてこの「ヒョンデ・ポニークーペの新解釈モデル」は2023年春に発表されるといいますが、今回ジウジアーロは「私がヒュンダイポニーをデザインしたのは、まだ駆け出しの若手デザイナーの頃でした。当時、私はまだ若く、デザイナーとしてのキャリアをスタートさせたばかりの頃にヒュンダイポニーをデザインし、これから激しい競争が繰り広げられるグローバルマーケットに挑戦する企業や国のために、自分がクルマを作る責任を負っているということに大きな誇りを感じていました。そして今、ヒュンダイから、後世に残すために、またブランドの伝統を祝うものとして、このクルマを再建するよう依頼されたことを深く光栄に思います」とコメント。
なお、ヒョンデはちょっと前にもこのポニークーペ・コンセプトのオマージュとなる「N Vision 75」を発表しており、やはりポニークーペコンセプトを非常に重用な資産と位置づけているのは間違いなさそう。
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現時点ではこのポニークーペコンセプトのリバイバル版がどういったデザインを持つことになるのかはわかりませんが、ヒョンデの取締役副社長兼グローバルデザインセンター長の李相燁氏によれば、同社のデザイン哲学 "Shaping the future with legacy" に基づいて再構築されると述べており、この文字列からすると「過去の遺産に基づき未来をつくる」ためのデザインを行うということになりそうですね。
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参照:Italdesign, Hyundai