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もっとも貴重なブガッティ「タイプ57SCアタランテ」が競売に!当時このクルマのダンパー1本の価格で普通のクルマが買えたという超高性能車、予想差落札価格は16億

もっとも貴重なブガッティ「タイプ57SCアタランテ」が競売に!当時このクルマのダンパー1本の価格で普通のクルマが買えたという超高性能車、予想差落札価格は16億

| かつてのブガッティは現代のブガッティ以上に「とんでもない価格」だったようだ |

ただし設計や製造、デザインについてはそれだけの価格を納得させるだけのものがあり、だからこそ今でもコレクターに愛される

さて、今年のペブルビーチでは様々なレアカーがオークションに登場することが明らかになっていますが、それらの中でも「最も希少な」クルマとして1937年製ブガッティType57SCアタランテが登場することが明らかに。

このブガッティType57SCアタランテはわずか17台のみが製造されたという記録が残りますが、この個体は新車時から現在に至るまでの記録が明確であり、現存する中ではもっとも優れたコンディションを持つと言われる車両です。

そのため予想落札価格は1000万ドル(約13億7000万円)~1200万ドル(約16億4000万円)だと見積もられており、もしかすると「それ以上」の価格で落札されそうな気配もあるもよう。

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ブガッティType57SCアタランテはこんなクルマ

このブガッティType57SCアタランテは3,250CC直列8気筒エンジン(ストロームバーグUUR2シングルツインチョークキャブレター)をルーツ式スーパーチャージャーで加給し200馬力を発生させ、トランスミッションは4速マニュアル、ブレーキは4輪ドラム(まだディスクブレーキが発明されていなかったが、これで走るのはちょっと怖い)、半楕円形リーフスプリング+デラムショックアブソーバー付きフロントソリッドアクスル、リアにはライブアクスル(1/4楕円リーフスプリング、デ・ラムショックアブソーバー付き)というスペックを持っています。

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1937年に新車でパリのオーナーへと納車され、オリジナルのシャシー、コーチワーク、マッチングナンバーの駆動系を持ち(つまり交換されていない)、ブガッティのスペシャリストであるアイヴァン・ダットンによるメカニカルレストアが実施済み。

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初期のブガッティにおける最高傑作は1936年に登場したタイプ57のスポーティバージョン、タイプ57S(S "は "surbaiss̩"を意味する)であることは異論がないと思いますが、タイプ59グランプリからインスピレーションを得たタイプ57Sは、(すでに優れたクルマという評価を得ていた)タイプ57よりも軽く、速く、より高度な技術を持っており、妥協を許さないハイパフォーマンスマシンとして開発されたクルマ。

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Type57Sは、ゴンドラ型のフレームレールを持つ専用シャシーをベースとし、エンジンを地面に近い位置に搭載することで低重心化を図るとともに、標準的なType57のフレームよりも大幅に軽量化したほか、リヤセクションは、各サイドレールに長方形の開口部を設ける工夫がなされ、リヤアクスルの車軸をフレームに通すことで、さらに車高が低くなっています。

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57Sのフロント・サスペンションも非常に画期的な設計を持ち、2ピースの中空アクスルを中央のローレット・カラーで保持した半独立構造を採用していますが、複雑なデ・ラム式ショックアブソーバーと一体になってリニアなダンピングを実現しといい、このデ・ラム式ショックアブソーバー1本が当時のエントリークラスのクルマの価格と同じくらいだったとされるので、このあたりは「今も昔もブガッティ」といったところですね。

このほかにもドライサンプを取り入れたり、ハイコンプピストンを採用したりといった多くの革新技術を車体のみならずエンジン含む全体に取り入れ、その甲斐あってタイプ57Sは「戦前の市販車では最も速い」部類であったとされています。

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ブガッティType57Sは多くのコーチビルダーを魅了する

ブガッティが1936年から1938年にかけて製造したタイプ57Sはわずか42台だと記録され、タイプ57Sは、スタンダードなタイプ57と同様に(そしてこの時代のクルマの通例として)ベアシャシーとして顧客に購入され、ヴァンヴォーレン、ガングロフ、コルシカといった外部のコーチビルダーによって架装されていて、すべてが個別の仕様を持つことに。

ただ、ブガッティ創業者であるエットーレ・ブガッティの息子、ジャン・ブガッティが架装した個体も存在し、それらがかの有名なタイプ57SCアトランティック、そして今回競売に登場するタイプ57SCアタランテ。

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17台のタイプ57SCアタランテのうち2台として同じ仕様を持つものはなく、この個体はシャシーNo.57523、フレームNo.27、エンジンNo.23S、ボディNo.10を装備しており、大型ヘッドライトにフルスカート化されたリアフェンダーや美しいテールを持つことが特徴で、完成したこの「57523」は見事な黒単色で仕上げられ、パリのモンテーニュ通りにあるブガッティ社の正規代理店に納品されることに。

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そこで1937年5月、このタイプ57SCアタランテは最初のオーナーである、ワインと酒の商人として成功したアルフォンス・ガンドンに売却されますが、同氏はそれまでにもブガッティを所有しており、そこでこのタイプ57SCアタランテを”さらなるハイパフォーマンスカー”へと仕立てるべくブガッティの工場へと預け、「ルーツ式スーパーチャージャーを搭載した最初の57SCの1台」として改造を依頼しています。

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その後1946年4月にはアルフォンス・ガンドンの息子であるマルセル名義で再登録されたそうですが、これは戦時中にブガッティを、あるいは自分自身を守るために再登録させた可能性があるとも指摘されていて、しかし今となってはその意図はわからないようですね(戦時中は、兵器製造の材料として多くのクルマが没収され溶かされて兵器に転用された。それを避けるため、自らのコレクションを池に沈めて隠した貴族も多かったようだ)。

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1952年12月になるとこの個体はパリのジャック・ロンゲに売却され、「7815 BP 75」として登録され、この個体の最古の写真はこの時代に撮影されたものだとされています。

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さらにその後1959年頃にはベルギー、ブリュッセルのジャン・ドゥ・ドブレアに、さらにその後はブガッティコレクターのジーン・セザリに、1960年にはメリーランド州アナポリスのジョージ・W・ヒュゲリー・ジュニアに、1964年にはルイジアナ州のドナルド・ヴェスレー博士に、その後はミシガン州トロイのエド・ルーカスに、1990年にはブラックホーク・コレクションに、2005年にはカリフォルニアのレイ・シェールに、2013年には匿名のヨーロッパの個人コレクターに、2019年にはアメリカの現所有者の手に渡ったという感じですべてのオーナーの記録が残るほか、「いつ、どのオーナーのもとで、どんなカスタムや改造、メンテナンスがなされたか」、さらには「いつ壊れたか」という記録までが残っている、とのこと。

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そして専門家による調査では、このブガッティ・タイプ57SCアタランテ、はスーパーチャージャーを最初に装着しただけではなく、スーパーチャージャーを装着したわずか4台のタイプ57SCのうちの1台であることも判明。

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ちなみにこの4台のうち、ブガッティが公式にスーパーチャージャーを取り付けたのはこのタイプ57SCアタランテを含む2台のみであり、のこりの2台はすでに廃車になっているというので、今回の出品物がいかに貴重であるかもわかります。

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タイプ57Sはブガッティの頂点に君臨し、60年以上コレクターに愛されてきたという歴史を持ちますが、未来永劫それが変わることはなく、さらにこのアタランテはブガッティ創業者の息子が架装したという付加価値つき。

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先進のスペックと卓越したパフォーマンスを併せ持ち、まさにブガッティというブランドの精神「Le Pur-Sang des Automobiles」を体現していると考えてよく、「手に入れることができる」クルマとしてはこれ以上の価値を持つものはないかもしれませんね。

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参照:Gooding & Company

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